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脱獄−たった1分で読める1分小説−

「フフフ、いいのか。俺をこんなセキュリティーの低い刑務所に入れて。すぐにまた脱獄するぞ」
 ジョセフがぶきみに笑うと、「いいから入ってろ」と看守がなげやりに牢屋に入れた。

 ジョセフは、脱獄のエキスパートだった。刑務所を脱獄しては捕まることをくり返していた。

 中にいた男を見て、ジョセフは驚いた。
「あんたは、軟体のマルチネス」
 異常な柔軟性を誇り、自在に関節を外すことができる男だ。彼も脱獄のプロだった。

 横に、メガネをかけた色白の男がいた。
「IQ200の天才、ポルナレフ」
 凄腕のハッカーで、どんなセキュリティーシステムも彼の手にかかれば意味をなさない。

 さらには驚異の腕力で、檻を曲げて脱獄する『豪腕のマイケル』。一本のヘアピンで、どんな鍵でも簡単に開ける、『鍵屋のメイソン』がいた。

 そしてその奥にいる男を見て、ジョセフは震え上がった。
「脱獄王、リアム……」
 この世界では伝説と呼ばれる、脱獄の王様だ。

 リアムがにやりと笑った。
「ここは一見簡単に脱獄できそうだが、それはフェイクだ。俺達が集められたのが何よりの証拠だ。つまりここは、難攻不落の刑務所だ。長い年月をかけて、脱獄の計画を練らなきゃならねえ」

 所長室で、所長が首をひねった。
「どこに入れても脱獄するからとみんな嫌がって、うちみたいなオンボロ刑務所がしぶしぶ引き取ることになったが、

なんであいつら脱獄しないんだろ?」


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浜口倫太郎 作家
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