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トイレ掃除−たった1分で読める1分小説−

「うわあ、ピカピカですね」
 ライターの環奈が、感嘆の声を上げた。彼女の目の前には、ピカピカのトイレがあった。顔が写りこむほど磨き上げられている。

「毎日トイレ掃除だけは欠かしたことがありません。トイレには神様が、それも福の神がいるんです」
 奥園が頬をゆるめた。

 奥園は世界でも有数の大富豪だ。ただその財をどのように築いたのかは謎に包まれている。その秘密を解き明かすため、環奈は奥園の家を訪れた。

 豪勢な応接室で、取材を再開する。
「私は小さな商店を営んでいましたが、まるで客は来ず、明日の米に困るほど困窮した生活を送ってました。そんなある日、知り合いにトイレを掃除すると運気がアップすると教えられ、半信半疑ながら試してみたのです」

 環奈もその話は知っていたが、眉唾ものだと思っていた。
「トイレ掃除をされて運が訪れて、お客さんが来たんですね」
「いえ、客は来ませんが、金運がやってきたのです」
「えっ、どういうことですか?」

 そこで奥園が腹をおさえた。
「ちょうどいい。失礼」
 奥園が退室した。その妙な言動に環奈は首をかしげたが、奥園はすぐに戻ってきた。

「申し訳ない、中座してしまって。話の続きです。トイレ掃除を続けていると、体からこれが出るようになったのです」
「なんですか?」
 奥園が手のひらを見せた。その上にあるものを見て、環奈は目を点にした。 

 そこには金色に輝く、黄金の大便があった。


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浜口倫太郎 作家
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