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自信のない友達−たった1分で読める1分小説−

「えっ、おまえパーティーに誘われたのか」
 海斗が訊き返すと、「うん……」と良平がうなずいた。最近二人は友達になった。

「でも断ろうと思うんだ……」
「なんでだよ。おまえの好きな由香里ちゃんも来るんだろ」
「パーティーなんて無理だよ……」

 良平はいつもうつむいて、前髪で目を隠している。学校以外は外に出ず、夜も一切出歩かない。

 そこで海斗は閃いた。良平と訪れたのは、催眠術師の家だ。催眠術で、良平に自信をつけさせる。
「えっ、催眠術なんか嫌だよ……」
 怖がる良平を説得し、なんとか承諾させた。

 催眠術師が声をかける。
「あなたは自信があふれています。うつむかず、胸を張り、空を見上げるほど視線が高くなります……」

 催眠術が終わると、良平がはきはきと言った。
「僕、やっぱりパーティーに行くよ。由香里ちゃんに告白する」
「よしっ、頑張れ」 
 良平は髪も切り、おしゃれな服を買って万全の準備を整えた。

 数日後、別の友達が海斗に教えてくれた。
「パーティーで良平が大暴れして、怪我人が続出したんだ」
「嘘だろ……」
 海斗はぎょっとした。
「お月見パーティーがだいなしだって」

 パーティーとはお月見のことなのか……でも今はそんなことはどうでもいい。
「良平がそんなことするはずないだろ。だいたいあいつ、ひ弱じゃないか。暴れてもどうってことない」
「おまえ、知らないのか?」
「何が?」

「良平は狼男で、月を見たら変身するんだよ」


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浜口倫太郎 作家
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