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否定−たった1分で読める1分小説−

「あのアニメ、すっごいおもしろかったよ。おすすめだよ」
 ヤマトが笑顔でそう教えると、ユウジが不快そうに吐き捨てた。

「何が面白いんだよ。作画が崩壊してるし、あんなのを面白いと思うなんて感性どうかしてるな」
「……近所に新しくできたラーメン屋さん、おいしかったよ」
「どこがだよ。あそこ、うま味調味料の味しかしねえだろ。おまえ感性も舌もバカだな」
 ユウジは何をいっても否定するので、ヤマトはいつもむかついていた。

 帰宅して母親に相談すると、母親がにこにこと答えた。
「苦手な人や嫌いな人は、人生を教えてくれる師匠だと思えばいいんじゃないかな」
 母親は仏教に詳しいので、ためになる話をいつも教えてくれる。
「そうだね」
 ヤマトは気が楽になった。

 翌日、ヤマトがユウジに仏様の話をすると、ユウジは顔をしかめた。
「おまえ、宗教信じてんのかよ。ほんとまぬけだな」
 ヤマトがむっとする。
「別にまぬけだとは思わないけど」
「俺を勧誘すんなよ」
 そう舌うちすると、ユウジが去っていった。

 財布を忘れている。ヤマトが追いかけると、ユウジはあるビルに入っていった。
 勝手に入っていいのか迷っていると、女性がビルから出てきた。
「あの、このビルはなんですか?」

 女性が嫌な顔をする。
「急になんですか、ナンパですか」
「いや、友達がここに入って」
「ああ、同胞ですか。ここは施設です」
「なんの施設ですか」

「宗教法人『否定教』の施設です」


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浜口倫太郎 作家
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