鎧の騎士−たった1分で読める1分小説−
「姫様、新しい近衛兵、名はドレスデンですじゃ」
大魔道士ローザが、全身を鎧で包んだ兵士を連れてきた。
「いらないわ」
王妃ティナが、煙たそうに手で払う。
「ドレスデンは口も利きませぬ。置物だとお思いなされ」
「嫌なものは嫌だわ」
「この王宮は、姫様がお嫌いな虫も出ますぞ。ドレスデンは虫退治も得意ですぞ」
「……仕方ないわね」
こうしてティナの護衛をドレスデンが勤めることになった。
ドレスデンは任務に忠実で、ティナの元から離れなかった。そのまじめで誠実な仕事ぶりに、ティナは少しずつ心を許し始めた。
そんなおり、メイド達の間でこんな噂が囁かれた。
それはドレスデンが、とびきりの美男子だという話だ。
素顔を見せないので、そんな噂が広がったのだ。くだらないと思いつつも、ティナはなぜかドキドキした。
その胸のときめきは一向におさまらない。とうとうティナは我慢できなくなった。
「ねえ、ドレスデン、鎧を脱ぎなさい」
「……」
ドレスデンは答えない。
「じゃあ私が脱がせてあげる」
ティナは頬を赤く染めながら、兜に手をかけた。
大魔道士ローザの家で、ローザと孫が話していた。
「ねえ、おばあちゃん、ドレスデンって美男子なの」
「バカバカしい。あれは魔法で動かしてるんだ。護衛される者がもっとも嫌いなものを媒介にする守護魔法だ。姫様でいえば、ムカデやゲジゲジなどの気持ち悪い虫だね。
それが見えないように、鎧で隠してるのさ」
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