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橋渡しーたった1分で読める1分小説ー

橋は、この三年間やきもきしていた。

毎朝登校時間になると、ある男子高生と女子高生が橋の上ですれ違う。

「ああ、どうしよ。名前聞いたら、気味わるがられるだろうな……」
「毎朝橋の上で一緒ですね。そう気楽に声をかければいいのよ……ダメ、恥ずかしくってそんなのできない!」

橋は、橋の上を通る者の心の声が聞こえる。二人はいつもこんなことを考えているが、どちらも極度の奥手だ。

結局勇気が出せず、すれ違い続けた。そしてとうとう卒業式を迎えてしまった。

もう、人間ってのはイライラするな。好きです。付き合ってください。なんでこんな簡単なことが口にできないんだ。

橋は毎回呆れ半分、イライラ半分で二人に踏まれていた。

そして卒業式当日、二人はいつものように、同じタイミングで橋にやってきた。さすがに今日が最後だと二人とも理解している。

ちらちらとお互いの表情を見ているが、どちらも声をかけられそうにない。

もう我慢できない!

橋は、思わずガタガタと体を揺らした。「あっ」と女が姿勢をくずし、男がその体を支える。

「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとうございます。いつも橋の上で一緒になりますね」
「そうですね」
二人がその場で嬉しそうに話しはじめ、橋はふふんと満足そうに鼻を鳴らした。

これが、『橋渡し』の語源となった。


↓7月11日発売です。冴えない文学青年・晴渡時生が、惚れた女性のためにタイムリープをするお話です。各話ごとに文豪の名作をモチーフにしています。惚れてふられる、令和の寅さんシリーズを目指しています。ぜひ読んでみてください。
コイモドリ 時をかける文学恋愛譚

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