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孟宗竹−たった1分で読める1分小説−

 才能開花研究所の研究員が、客である男に尋ねた。
「孟宗竹をご存じですか?」
「竹の一種ですか?」

「ええ。この孟宗竹は種をまいて水をやっても中々芽が出ません。ところが五年ほどすると、突如として芽を出し、グングンと成長するのです。一日に八十センチ、最終的には高さ三十メートルになります」

「それは凄い」
「芽が出るまでに時間がかかる。これは人の才能と同じだ。そこで孟宗竹を品種改良し、才能を最大限に開花できる孟宗竹を発明したのです」
 種に自身の爪を混ぜてそれを育て、竹になって煎じて食せば、隠れた才能が発揮できる。

「ぜひやってみたいです」
「わかりました。五年間お待ちくだされば、必ずあなたの才能が開花されます」
「五年ですか? そんなに待てないです。もっと早くならないんですか」
「……実は一時間に短縮できる品種を開発したのですが」

「五年が一時間になるんでしょ。最高じゃないですか。それください」
「ですがまだ開発段階でして……」
 研究員は渋ったが、男は強引にその種を手に入れた。

 種を寝床の床下に埋めて、その上で寝る。それが条件だ。
 俺の隠れた才能が開花するぞ……。

 男はいつの間にか寝入った。そしてそれは、永遠の眠りとなった。

 五年を一時間に短縮したので、竹の成長スピードも約四万倍となった。一日八十センチ伸びる竹が、一秒で約三十メートルになるわけで……。


 その一瞬で伸びた竹が、男の腹を貫いたのだ。


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浜口倫太郎 作家
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