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憧れの人物−たった1分で読める1分小説−

 ロジャーにとって、ベンジャミンは憧れの人物だった。

 ベンジャミンは実業家で、時価総額世界一の企業を経営していた。ロジャーは幼少の頃から、ベンジャミンを目指していた。

 ロジャーは起業すると、すぐに結果を出した。
 なぜならばロジャーは、どんな手段も使ったからだ。

 脅迫、裏切り、暴力はお手のもの。非合法なビジネスにも手を染めた。表向きは新進気鋭の起業家だが、裏の顔はまっ黒だった。
 ベンジャミンも影ではそうしている。成功者とはそういうものだ。それがロジャーの哲学だった。

 そんなある日、ベンジャミンがロジャーを訪ねてきた。
「やあ、ロジャー。君の活躍ぶりは聞いてるよ」
「ありがとう。ベンジャミン」
 憧れの人との対面に、ロジャーは胸を膨らませた。

「君に我が社の新商品を見て欲しいんだ」
 それは、洗練されたデザインの箱だった。

「なんですか、これは?」
「世界一のゴミ箱だ。ゴミ箱は世界中どこの場所にもある。その覇権を握るんだ」
「さすがですね」
 目の付け所が尋常ではない。

「だがこれはまだ完成品ではない。世界一になるには、ロジャー、君が必要なんだ。入ってくれないか」
「私が御社にですか?」
 ロジャーは驚いた。まさかそこまで俺を認めてくれているなんて……。

「違うよ、このゴミ箱の中に入って欲しいんだ」
「……どういうことですか?」
 ベンジャミンはにこりと笑った。

「世界一のゴミ箱には、世界一のゴミを入れないとね」


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浜口倫太郎 作家
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