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サービス−たった1分で読める1分小説−

「またそのからあげ弁当食べてんの?」
 美優があきれて、兄の秀夫に言った。

「いいだろ。ここ本当においしいし、いつも一個サービスしてくれるんだよ」
 あまりにうまそうに秀夫が弁当を食べるので、美優も欲しくなった。
「ねえ、そのお店教えてよ」

 秀夫に連れて行ってもらい、美優もそこの弁当が気に入った。
 ところが秀夫は不満げな様子だ。
「……おまえ、あの店で何かしたんじゃねえのか?」

「なんでよ」
「おまえ連れてってから、からあげの一個サービスがなくなったぞ」
 そこで美優はピンときた。

 翌日店に行くと、いつもの女性店員がいた。あきらかに、美優を敬遠している。
 美優が陽気に声をかける。
「兄がここのお弁当大好きなんですよ」
「そうなんですか。いつもありがとうございます」
 パッと、彼女の顔が輝いた。

 次の日、秀夫がほくほくと言った。
「からあげ一個サービス復活したぞ」
 ククッと美優は忍び笑いをした。外見も性格も、なんて可愛い人なんだろう。

 そう、あの女性店員は、秀夫のことが好きなのだ。
 サービスがなくなったのは、美優を秀夫の彼女と勘違いしたからだ。
「お兄ちゃん、これあげる」
 美優が秀夫に、映画のチケットを手渡した。

「なんで、二枚あるんだよ」
「あのお弁当屋の店員さんを誘ったら。映画好きって言ってたよ」
「店員さん? なんでだ?」
「いいから、いいから。

 私からのサービス」


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浜口倫太郎 作家
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