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予知能力−たった1分で読める1分小説−

「予知の能力を授けよう。これでおまえは大成功できるぞ」
 神様がトシキにいい、ボンと姿を消した。

 疑いながらもトシキは外に出た。今日は大事な面接だ。昔から行きたかった企業で、最終面接までこぎつけていた。
 すると頭に映像が浮かんだ。その会社の業績が悪化して倒産寸前のピンチとなり、トシキが頭を抱えている。

「なるほど。これが予知の力か」
 トシキは面接を辞退して、別の会社に就職を決めた。
 さらに結婚をしようと彼女にプロポーズする寸前で、彼女の実家が借金を抱えている映像が頭に浮かんだ。
 そこで彼女と別れて、別の女性と結婚した。

 こんな調子でトシキは安全な人生を送り続け、命を終えた。
 天国で神様と再会した。
「神様、予知は役立ちましたが、大成功はいいすぎですよ」
「おまえの使い方が悪い」

「でも危機をかわしましたよ」
「だからだめなのだ。おまえが希望した会社は一時は倒産寸前だったが、今では世界有数の大企業だろう」
「たしかに……」

「おまえの好きだった女性は、おまえとの相性は最高だった。結婚すれば何もかもがうまくいった。就職も結婚もその他もろもろ、おまえは安定を求めて妥協したのだ。

 危機と成功は隣り合わせだ。危機が見えても覚悟を決めて行動していれば、おまえは大成功を収めていた」
「そんな……」
「次におまえは小動物になってサバンナで生きてもらう。

 大好きな安定がどこにもない、弱肉強食の世界だ」

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浜口倫太郎 作家
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