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サプライズパーティー−たった1分で読める1分小説−

「6月29日、サプライズパーティーね」
 えっ、と美奈子は急いで身を隠した。廊下で小百合達が話しているのを、偶然聞いてしまった。

 6月29日は美奈子の誕生日だ。小百合が企画したのだろう。
「もうっ、だったらバレないように気をつけてよ」
 美香子は知らない演技を続ける必要がある。面倒だなと思いつつも、顔がにやけた。

 ただその日が迫ってきても、誰も誘ってこない。フェイクのイベントで、美奈子を誘い出す必要があるのに……。
結局、美奈子は誕生日に家にいた。

 なんだ、私の勘違いか……。
 涙で目がにじんだ時、玄関先に小百合とみんながいた。小百合の手には誕生日ケーキがあった。

「サプラーイズ!」
 一同が喜びの声を上げた。

 美奈子にサプライズパーティーの話をあえて聞かせる。そういう計画だった。
 グズッと美奈子が鼻を啜った。
「もうっ、私の誕生日誰も覚えてないのって、泣いちゃったじゃない」

 盛大に祝ってもらった後、美奈子がなにげなく訊いた。
「小百合って誕生日いつだっけ?」
 小百合がにこにこと答える。
「今日だよ」

 えっと全員が硬直し、部屋がしんとした。
「私も6月29日が誕生日。美奈子のサプライズパーティーの企画を話してたら、誰か一人ぐらい気づいてくれるかなって思ったけど」

 小百合は笑顔を崩さないが、逆にそれがおそろしい……。
 美奈子と他の面々が顔を見合わせ、声をそろえた。

「サプラーイズ……」

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浜口倫太郎 作家
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