恋する惑星−たった1分で読める1分小説−
「巨大惑星ペトナスが軌道を外れ、地球に向かっている原因がわかりました」
世界中の首脳が集まる会議で、科学者が言った。
「この惑星は、地球に恋をしているのです」
大統領が妙な顔をした。
「……どういうことだ?」
「言葉の通りです。恋する人に会いたい。その気持ちは惑星も同じです。だから地球に向かっている。つまりこれは、『恋する惑星』です」
「原因は判明したとして、対処法はあるのか」
「簡単です。地球が惑星をふって、失恋させればいい」
「……君は何を言っとるんだ」
あきれる大統領の前に、黒いローブをまとった老婆があらわれた。
科学者が紹介する。
「彼女は霊媒師。地球と会話することができます。彼女から地球に話してもらい、惑星をふってもらいました」
しわがれた声で老婆が言う。
「『生物達を救うためだ。仕方がない』と地球が申しておりました」
しばらくして惑星が急に方向を変え、彼方へと去っていった。
おまえのことなんか嫌いだ。
地球が惑星にそう告げた。老婆がそう教えてくれた。
できるだけ惑星を遠ざけたいので、ひどい振り方をして欲しい。その要望も地球は受け入れてくれた。
すると、雨が降り始めた。
その雨は、世界中でいっせいに降り、しばらく止まなかった。まるで地球が泣いているかのようだ。
科学者は雨空を見上げ、すまなさそうにつぶやいた。
「ごめんな。地球もあの惑星が好きだったんだな……」
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