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ありがとう−たった1分で読める1分小説−

 ヒロシは、友人のケンタとカフェにいた。
「お待たせしました」
 声をかけられ、ヒロシはびっくりした。
 ロボットがコーヒーを運んできたからだ。

 ケンタが、笑いながらコーヒーを受けとる。
「びっくりしすぎだろ。この店はロボットが店員なんだよ」
「そうなんだ。凄い時代だね」
 ヒロシが感心すると、ロボットが立ち去ろうとした。

「ありがとう」
 ヒロシが笑顔で礼を述べると、ケンタがうすく笑う。
「おい、ロボットに礼なんていうなよ」
「だって店員さんにはありがとうっていいなさいって、お母さんに教えられたから」
「意味不明だな。なんで金払って礼をいう必要があるんだよ。ギリ人間にならわかるけど、ロボットに礼をいうバカがいるかよ」
「そうかなあ……」
 ヒロシは納得がいかなかった。

 そんなある日、巨大隕石が衝突し、地球が壊滅するというニュースが流れた。優秀な人類のみが、宇宙ステーションに避難できる。

 ヒロシはしゅんとして、ケンタにいった。
「……お別れだね」
「おまえのことは忘れないからな」
 ケンタは高学歴で一流企業のエリートだが、ヒロシはそうじゃない。

 ロボットがやってきた。
「ヒロシさん、あなたは宇宙ステーションのメンバーに選ばれました」
 ケンタがぎょっとする。
「俺は?」
「落選です」
「なんでだよ!」
「新世界にあなたのような人間はいりません。

ロボットの我々にもありがとうをいってくれる、心優しい人間だけが必要なのです」


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浜口倫太郎 作家
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