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ブランド−1分で読める1分小説−

「ほんと、ヨウジっておしゃれだよね」
 ユウタがうらやましそうに、ヨウジにいった。

「おまえはダサいもんな」
「ボクにだってファッションセンスがあるかもしれないだろ」
「ないない」
「じゃあ勝負だ」

「オレよりおしゃれになる気かよ」
「ボクがブランドを作って、その服をヨウジに着させるよ」
「できるわけねえだろ」
 ヨウジが吐き捨てた。

 その後二人とも、アパレル関係の職に就いた。
 ヨウジはファッション評論家として有名になり、ユウタは起業してアパレルメーカーを立ち上げた。

 ユウタにはファッションセンスはなかったが、経営者としての才能はあった。ユウタの会社は世界的なアパレルブランドになった。
 その画一的なデザインは、ヨウジの好みとは真逆だった。

「そろそろボクのブランドの服を着てくれよ」
 ユウタが頼むが、ヨウジがはねつける。
「誰が着るか」
 ユウタが声に力をこめた。
「ヨウジ、絶対おまえに着させるからな」
 世界的な経営者の威圧感で、ヨウジはぞくりとした。

 後日、ヨウジは刑務所の中にいた。
 何者かの手によって犯罪者に仕立てあげられた。

 そこにユウタが面会にきた。
 アクリル板越しに、ヨウジが叫んだ。
「ユウタ、おまえの仕業だろ」
「よくわかったね」
「なぜだ。なぜこんなことをした」

「ヨウジにボクのブランドの服を着させる……その夢を叶えるためだ。そして夢は叶った」
「何、どういうことだ?」

「その囚人服は、ボクのブランドだ」


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浜口倫太郎 作家
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