箱買い−たった1分で読める1分小説−
「えっ、また箱買いしたの?」
香里奈が、あきれて洋太郎に言った。洋太郎の手には、ぎっしり詰まったチョコレート菓子の箱があった。
「いいだろ。俺、シール集めてんだからさ」
このお菓子のおまけのシールが、今小学生の間で流行していた。
「まあ私はタダでチョコレートを食べれるからいいけど」
二人は幼なじみで、いつもこうして一緒に遊んでいた。
その関係は成長しても変わらなかった。子供時分と同様、二人でよく遊んでいた。
そして二人は就職した。洋太郎は、大手の商社に勤めることになった。
そんなある日、上司が洋太郎の肩を叩いた。
「おめでとう。今度の人事で、カナダ支社に栄転だ」
「カナダですか……」
「どうした? おまえ未婚者で彼女もいないだろ」
「いえ、ありがとうございます」
数日後、洋太郎は香里奈を呼び出した。
「俺、今度カナダに転勤することになったんだ」
「……遠いし、寒いね」
「これ、プレゼント」
洋太郎が、香里奈に箱を渡した。中は携帯用のカイロだった。
「何これ?」
「香里奈もカナダに行かないか。カイロも買ったから寒くないって」
海外転勤と聞いて、洋太郎の頭にまず思い浮かんだのが、香里奈と会えないことだった。そこで洋太郎は、香里奈への想いに気づいた。
香里奈がクスクスと笑った。
「ほんと洋太郎って、箱買い好きだよね」
「いいだろ。で、付いてきてくれる?」
「カナダで一軒屋を箱買いしてくれたらね」
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします。コーヒー代に使わせていただき、コーヒーを呑みながら記事を書かせてもらいます。