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wefnote
硬さ比べーたった1分で読める1分小説ー
「バカな、俺の方が硬いに決まっているだろ」
「ふざけるな、俺だ。俺の頭はダイヤモンドだ!」
どちらの頭が硬いのか、エビとカニがもめていた。甲殻類にとって頭の硬さは、何より重要なことだった。
その二匹の間で板挟みになったように、カモメがおろおろとしている。
自分が一番硬いとカニが豪語していた。そうエビに口を滑らせてしまい、この騒ぎになってしまったからだ。
そこでカモメが閃いた。
「そうだ。いいことを思いつきました。エビさんがジャンプして、カニさんの頭に頭突きをする。そうすればどちらが硬いかわかるんじゃないでしょうか?」
それは名案だ、とエビとカニがうなずいた。
早速二匹は対峙すると、エビが海老反りになってジャンプをした。凄まじい跳躍力だ。カニはグッと眉間に力を込めて、その衝撃に備える。
ガツンとお互いの頭がぶつかると同時に、パカっと頭の殻が割れた。二匹とも即死だった。
カモメは生唾を飲み込んでから、「いただきます」と二人の脳みそと身をうまそうに食べた。どちらも最高の味だった。
「エビもカニも俺の何倍も強いが、こうして頭を使えば食べることができる。頭は硬さではなく、中身が大事なんだよ」
カモメは満足そうにゲップすると、上機嫌で飛んでいった。
↓7月11日発売です。冴えない文学青年・晴渡時生が、惚れた女性のためにタイムリープをするお話です。各話ごとに文豪の名作をモチーフにしています。惚れてふられる、令和の寅さんシリーズを目指しています。ぜひ読んでみてください。
コイモドリ 時をかける文学恋愛譚
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