能力の進化
ペットショップみたいなところに連れてこられた。
ここで売られるのかな。
魔法は使えるけど、窮屈で窮屈で仕方がない。
そうだ。
ダンジョンの魔物の巨人の能力、【剛力】を使ってみよう。
(【剛力】!)
部屋を腕(スライムに腕があるかは知らないが)で、自由な形に整えていく。
(あ、そうだ。一応レーザーもつけとこっと。【邪悪な魔眼】!座標を部屋の端から部屋の端に設定。これで誰かが入ってきてもOKだね。)
そもそも、この部屋は、バリュート専用の部屋なのだから、誰も入ってこないのだが。
食事が、投げ込まれてくる。
(乱暴だな。でも……久しぶりのご飯は美味いな。)
このご飯は、多分、スライム用のペットフードみたいなものだ。
だけど、しばらくご飯を食べていなかったものだから、とても美味しく感じられる。
(スライム⦅幼体⦆の状態で初めてスライムフードを食べました。報酬として、能力の進化を行います。)
こんなことでも能力が進化できるのかよ!?
それはそうとして、能力って、何が進化するんだ?
倒したモンスターの能力を使える能力か?
【邪悪な魔眼】か?
【擬態】か?
それとも、【剛力】か?
何だろう。
俺としては、倒したモンスターの能力を使える能力がいいが。
(能力【擬態】が、能力【変身】に進化しました。)
やっぱり、幼体スライムの状態でスライムフードを食べただけじゃな。
そりゃあ強いのには進化しねえわ。
でも、何だか強そうな能力だな。
これの使い方はなんなんだろうか。
ふーん。
これなら、空気に変身して、【隠密】と似たようなこともできるかもな。
それに、倒した相手の能力が使える、と書いてある。
これは、ドラゴンを倒せば、しばらくはずっと強いままなのでは。
といっても、今の俺にドラゴンを倒せ、と言われても、多分無理だ。
でも、倒したら、バリュートの時みたいに、おいしい報酬がゲットできるかもしれない。
さらに強くなるために、俺はダンジョンへと向かった。
もちろん、ドアにカギがかかっているので、壁を壊していく。
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Aランクダンジョン《世界の鍵》に向かった。
世界の鍵という、何か正義感のある名前通り、中はピッカピッカだった。
逆にそれが狙いなのかもしれない。
ピカピカ過ぎて、周りが見えない。
普段視界に頼り切りな俺には、攻略が難しい。
(【邪悪な魔眼】!)
【邪悪な魔眼】で、周りの光を腐らせる。
これで、やっと周りが見えるようになった。
だけど……これは同時に2つは出来ないから、攻撃には使えない。
攻撃するには、これをいったんやめて、攻撃に使うしかない。
「キシャッ!」
蜘蛛系の魔物が現れた。
この蜘蛛、脚が16本ある。
機動力特化の魔物というわけか。
これは相性が悪いそうだ。
あちらにとって。
邪悪な魔眼の発動を一旦中止し、【剛力】で脚を引き千切る。
後は、魔物たちにとって心臓となる【核】を破壊するだけだ。
(ある程度近づいて………剣に【変身】!)
頭上の部分を剣に変え、攻撃をする。
正確さに気を配ったその攻撃は、蜘蛛みたいな魔物の【核】を正確に貫いた。
(ブラッディスパイダーを討伐したため、ブラッディスパイダーのスキル【縮地】を獲得しました。)
【縮地】…………俺TUEEE系でいうスピードを速めるスキルだな。
加速とは、速さが違う。
そもそも加速をせず最高速度に至るのだから。
(【縮地】!)
これで攻略速度がぐんぐんと上がるな。
にしても、疲れたな。
そこの樹で一休みしよう。
ふう、気持ちいいな。
樹の幹で休んでいたその時。
ポタリ。
上から水滴が落ちてきた。
雨粒ではなく、1メートルくらいの大きさだった。
上を見ると、巨大な竜の顔が。
この樹は、樹ではなく竜だった。
この竜、ただの奴じゃねえな。
虹色に光り輝いている。
こいつを倒せば、なかなか強くなりそうだ。
俺は、戦闘準備に入った。