酒吞童子=チート
〈虚飾〉のヘシベムは、〈虚飾〉を司っている。
なら、〈虚飾〉と対極の者を呼べば、優位に戦えるはず。
というわけで、レイブさんに、召喚石創ってもらいました!
しょ、う、かーん!
召喚石が薄い黄色に輝き、割れた。
中から出てきたのは……鬼だった。
鋭い牙、一本だけ生えた長い角、炎のような紅い眼。
酒呑童子。
コイツの名前は、酒呑童子。
〈謙虚〉の酒呑童子。
鬼を束ねる者。
「ヤァ、久しぶりだ。初めて会ったのは確か、5000年位前だっけな。アハハ、あの時は楽しかったよ。勇者の時代だったから、勇者と戦って、勝ったし、酒が美味かったよ。おめえも勝っただろ。」
「ふん、そうですか。貴方には、【刻の神 刻止】をかけてやる必要があるようです。」
空中に蒼い波紋が広がった。
時を止められたのだろう。
だが、酒呑童子は何も苦にせずに、平然と歩き続けている。
「お前、もしかして弱くなっちった?俺から行って良い?【真似 刻止】」
真似?
刻止を使えてる。
「ちっ、やはりですか。これだから手の内は見せない方がよいのに。はあ、奥の手を見せますか。【偽りの仮面】」
刹那、ヘシベムから怪しいオーラが放たれる。
麻薬を吸ったかのように興奮した顔が見られる。
酒呑童子は、この異変に気付き、顔を顰めた。
「いいです!非常にいいです!」
ヘシベムの体がモリモリと盛り上がった。
爪が伸び、牙が生え、コウモリのような翼が生える。
頭にヤギの角が生える。
パックリと裂けた口を開き、こう言った。
「アハハ!これで私は最強だ!良いな!ああ、唆る!我が名はバフォメット!」
声が傲慢なのと助けを求める声で重なり、助けたい気持ちと殺したい気持ちで分かれる。
だが、悪魔化した奴はもう二度と戻らない。
殺すしかない。
『【炎魔法 古代の炎】』
レイブに斬ってもらい、そこを焼き付ける。
並みの炎では焼くことすらできないので、上級炎魔法を使った。
それでも、火傷程度にしかなっていない。
「【真似 死神の回転盤】。」
一つ以外すべて死神の絵が描いてあるマスがある回転盤が現れ、それを回す。
結果…………針は何も書いて有らないところを指した。
運がエグい。
ちなみに、聞いてみたら死神のところを指したら、即死だそうだ。
それって、めっちゃむずいんじゃ……?
そしたら、「簡単だろ、あんなん。」って言われた。
手首を2.35°曲げクイっと回すだけなのだそう。
しかし、分からん。
「2.35°」が。
「クイっと」が。
何その大雑把なの。
「バフォメットを殺せ。」
バフォメットが、死んだ。
そう唱えただけで。
面白い能力だな。
でも、【真似】で使ったってことは、前所有者がいたってこと?
怖すぎる。
悪用されたら、絶対やべえじゃん。
それだけに、デメリットもやばいんだけど。
いやあ、にしても、酒呑童子には世話になったなぁ。
パーティーメンバーにしたい。
「ああ、そうだ。さようならの前にお前には〈童の仮面〉をやる。これをつけると、相手の攻撃が無効になるぞ。」
なんかさらっとすごいこと言わなかった?
良いもんもらったんは嬉しいんだけど……
相手の攻撃が無効なら、もう無敵じゃん。
チートすぎる性能をした仮面をもらって、さようならをしたのだった。
「じゃあな!」
「ああ、じゃあなー!」
そして、酒呑童子との出会いの一日目は終わったのだった。