Aランク冒険者「ダンク」
あの試合から、3日が経った。今では、ギルドで大人気だ。だが、一つ面倒なことがある。それが。
「俺らのパーティーの、焔天に入らないか⁉︎」
「いや、お前らなんかのパーティーより、俺らの空飛ぶワームに入れ!」
などと、パーティーを組んでくれとうるさいのだ。俺がパーティーを組んでいると説明しても、そいつごと組めば良いじゃないか!とか名案を思いついたかのようなことを言う。もう、色んな意味で疲れる。ほんとにウザい。バリアグに防音結界を耳に張ってもらった。ほんとになんでもアリだな。防音結界のおかげで、体調がだいぶ良くなった気がする。バリアグに礼を言い、「世界樹のエリクサー」を3本渡した。こんなにエクストラアイテムをホイホイと渡せるのは、やはり限界突破イベントをクリアしたからか。しかも、払われた黒金貨500枚となれば、世界に1枚しかない神金貨の半分だ。大儲け間違いなし。この金を何に使おうか。まず、普通の回復薬、魔力回復薬、スキルオーブを爆買いだぁ!思っただけでヨダレが垂れる。そんな狂った俺の顔を見て、バリアグがやれやれという感じでいった。
「完全に狂ってるな。もう少し、独占欲というものが湧かないか?大儲けなんて、商人の考えることだぞ。お前は冒険者だろう?」
「うぐっ。」
言葉の刃が胸にグサグサと突き刺さる。ぐぬぬ、バリアグ、俺の心理を完全に理解しているな。言葉って、物理防御も貫くのか。辛い。まあ、確かに大儲けなんて、商人の考えることだ。けど、こんな大金、どうやって扱えば良いんだろう。超高級な料理でも、白金貨5枚だけしかかからない。そうだ。バリアグに、プレゼントを買ってあげよう。いつもお世話になってるしね。ちゃんと恩を返さなくっちゃ。何にしようかな。剣とか、防具とか。いや、バリアグは魔法系が得意だから、魔法詠唱速度が速くなったり、魔法の威力が上がったりする魔道具とかがいいかも?思い立ったが吉日。明日、すぐに買いにいくぞ。場所は、王都で1番質の良いものを売っている老舗『ニガ・グッズ』だ。
ついに、バリアグに魔道具を買ってやる日が来た。目の前には『ニガ・グッズ』のおしゃれな馬車が走っていた。そういえば、噂で聞いたことがある。『ニガ・グッズ』の店長は、とても胸先三寸で、気に入った者でないと、店から追い出してしまう狂った人らしい。他の人も、反抗しようとしたらしいが、一応店長はAランクであるため、なかなか反抗できない。なので、『ニガ・グッズ』は、強者だけが立ち入れる場所だ。そんな店長も、流石に「龍」は倒したことがないらしい。だから、普通に入れると思う。
『ニガ・グッズ』に入ると、右目目に眼帯をした、屈強な男が奥から現れた。なにが「龍」も倒したことがないだよ。このオッサン、「龍」より強いぞ。オーラから分かる。Aランクどころか、Sランクにも近いぞ。店長さんは、開口一番に、こう野太い声で喋った。
「ビナガから聞いた、「世界樹のポーション」を買い取ってくれた虹人ってのはお前か。ありがたくこちらでも使わせてもらっている。」
……いや。なんで知ってんだよ。聞きたいことが、山ほどできた。なんか知ってる気がする。
「ビナガって誰だよ。」
「知らねえのか?ビナガってのは、ギルマスだぜ。それと、俺の幼馴染だ。」
あー、分かった。絶対アイツだ。てか、ギルド長って、『ニガ・グッズ』の店長と幼馴染だったなんて。また一つ、疑問ができた。
「俺を、店から追い出さないのか?」
「はん。ビナガから聞いたぜ。ドラゴンがうじゃうじゃいるダンジョンを未知の魔法で一発だって?そんなヤツ、追い出したらこっちがこの世から追い出されるぜ。しかも、お前さんを「鑑定」した結果、ステータスがカンストしてたぜ。俺のステータスでさえ、全部10000をちょっと越してるくらいなのに。」
それでも化け物だよ。しかも「鑑定」って、100000人に1人しか発現しないレアスキルだぞ。「鑑定」は、人のステータスなどを鑑定できる能力だった。それは「観察」でもできることだが、「鑑定」は「観察妨害」も効かず、犯罪歴、出身地、家族名などが分かる。警察でこれ持ってたら、事件の捜査に便利じゃない?「鑑定」は、天の声レベル6の時からあったが、本来はそんな簡単にゲットできたりしない。加えて、店長はもう一つレアスキルを持っている。素材さえあれば、ものが作れるという能力を持つ「錬金術」。「錬金術」にはいくつかのメリットと、デメリットがある。まず、メリットから説明しよう。
①効果が2.5倍になる
②物を作る際、時間が大幅短縮される。
③武器同士の融合をさせられる。
次はデメリットだ。一つしかないが。
①使用者の魔力量が0.5割になる。
このメリットで、このデメリットって、ちょっとチートじゃないか。やっぱりAランクで止まってたのは、このデメリットのせいか。こいつの作った魔道具、ますます見たくなった。店長に聞かれた。
「で?用は?」
「俺のパーティーメンバーに、プレゼントをしたいんだ。魔法系だから、魔道具で頼む。」
そのことを話したら俺は、特別そうな工房に案内された。その中にいたのはーーー
「ダンク?」
そう。工房の中に入っていたのは、地獄界で助けた、Aランク冒険者、ダンクだった。ダンクもこちらに気付いたようで、「この前は、助けてもらって、ありがとう!」と言ってくれた。ダンクは、Aランク冒険者だが、「回復者」だ。Aランク冒険者は、とても強い。だが、ダンクは、回復魔法しか使えない。だから、回復魔法で強くなろうとしていた。にしても、どうしてダンクがここに?その疑問の答えを、店長が返してくれた。
「ダンクに、ポーションを作って欲しいと頼まれてな。それで作ろうとしてたときに、お前が来たってわけだ。一緒に作るとこを見るか?」
と、見るのも許可してくれた。ありがたい。せっかくなので、一緒に見ることにした。調合釜に、魔法陣が生成された。
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