伯爵級悪魔の実力
「チタタ!蠱弾!」
「ウホホホ!戦闘熊!」
結構知能がある。
だって、詠唱できているんだから。
【鑑定LV1】で調べたら、コイツらは伯爵級悪魔だった。
結構上位の方だ。
悪魔には、低い順に男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵、王、皇帝という風に爵位があり男爵ですらAランク相当の実力を保有している。
その中の伯爵は、SランクとSSランクの真ん中ぐらいの実力というわけだ。
本来はこっちが有利なのだが、あっちが巨大すぎて、少し動かれただけでも潰される。
現に、回復魔法を連発している。
魔力がどんどんと削れていくが、魔力より命だ。
その時、頭の中に声が響いた。
(強敵との戦闘を確認しました。職業:道化師が解放されました。職業:スライムが職業:道化師に交換されました。スキル【風船術】が追加されました。)
「こんなときに!?しかも職業って……試してみるか!風船術!」
直後、様々な色をした風船が現れた。
勝手に指が動く。
「わっ!犬の形!?こんなのいらないって!お前にやるよ!」
狸辣熊に風船を投げた。
「ホホホ、なんじゃ。ただの子供騙しか。フンッ!ほれ、叩き潰してやったぞ!」
ねー、このスキル無能じゃん。
ガチで。
風船出すしかできないって。
その時だった。
「痛あああぁ!ぐあっ!頼むから、頼むからぁ!放してくれ!この犬を!」
「え?」
見ると、あの狸辣熊が、犬の風船に嚙みつかれている。
さっき潰されたんじゃないの?
しかも、風船の破裂音が。
耳栓持ってたら、すぐ使いたい。
鼓膜が、鼓膜が、破れそう!
アイツを殺したら、戻れ!
(りょ。じゃあ、こいつ殺して戻る。)
ふぇ?
なんか、頭の中に声が聞こえたんだけど。
多分、あの風船で創った犬だ。
犬の風船の右手(右前足)の筋肉がムキムキと膨れ上がり、心臓のある辺りを殴った。
心臓に、穴が開く。
そして、約束通り、帰った。
すごい。これで一体は終わりだな。
「蠱弾 夢幻時雨」
おっ?
もう一体が本気を出してきたな。
「戻ってこい、犬。」
(りょ。戻るね。)
まだ筋肉がムキムキのままのバルーンアートが、噛みついた。
だが、それを硬い外骨格で防御し百足の牙で噛みつく。
「危ない!」
牙が当たった。
普通は、当たっただけで破裂してしまうのに、数秒耐えていただけ、いい方だろう。
パァン!
破裂音がした。
だが、その凄まじい音にビックリして、動きが止まる。
その隙を狙い、口内を斬る。
地獄のような痛みに悶えているところに、もう一発。
「蒼雷」
「二重斬撃!」
「おりゃ!壊獣の斧!」
一号、二号、三号も、やってくれた。
「硬魔装甲!」
防御するが、無駄だ。
壊獣の斧は、相手にダメージが必ず通り、相手に与えるダメージを三倍にす るのだから。
そして、上級魔法なら、通る。
だが、突然ボスゲージが出始めた。
コイツは、ボスではなく、あくまでモンスターだ。
ということは………
「ゲリュゲリュ!」
このダンジョンのボス、〈バックンフラワー〉のお出ましだ。