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影踏み鬼をやりましょう
「何なんだよ。せっかくギルドで働けるっていうときになって。」
「ようやく金貨をもらえたのに盗賊に奪われて殺された。」
「アイツさえいなければ。」
「そうだそうだ!」
「アイツさえ、バリュートさえいなければ。」
何なんだ、この空間は。罵詈雑言と殺意で満ちている。
「おい、リヴァイアサン、出てこい。」
あれ?いないのか?
「いたぞ!バリュートだ!」
「やっつけちまえ!」
本当にここはおかしいぞ。
「五十嵐三千世界。チッ、やっぱり魔法も使えないか。」
肉弾戦をしなければいけないということか。
「流水。よし、使えるぞ。初級魔法なら使えるということか。水量は5兆テラリットルで。水中呼吸。」
初級魔法が使えるようになったので、さっそく使う。
(水量が空間よりも多くなったため、外の世界へ強制移動します。魔に染まらぬように。ご武運を。)
なーんか不穏な言葉が聞こえた気がするんだが。
「ふっふっふ。これでやっト悪魔に戻れル。久しぶリに人間の魂を喰いたいなァ。」
予感的中。悪魔にあってしまった。
「発見発見。契約内容は何がいいかな?」
見つかった!
などと逃走中風に言っている暇はない。
契約などしたら、魂を喰らわれるに違いない。
ここはさっさとずらかろう。
「落ち着け、自分。こんな時は素数を数えるんだ。1,3、5,7,11、13、17。」
「おーい、あっちの世界に行くな。契約内容は?」
「死にたくなーい!」
「OKOK。死にたくないね。うまいこと考えたね。代償は魂だから。確かに君の持ってる不老不死じゃ、こっちだったらみんな持ってるもんね。不朽不滅をあげるよ。追加で万物流転も。あっ、究極破滅刃もいる?今なら10パーセント割だよ!戯餓・朽儡牟もだよ。」
スーパーの割引セールみたいに言うな!
まぁ使えるものは使う主義なので有難く受け取らせてもらいます。
ていうか最後の戯餓・朽儡牟ってさぁ、絶対当て字だよね。ギガ・クライム(すごい犯罪)っていう意味の。
次々と体に魔法陣が生成されていく。
自分に新たなチカラが宿り、代わりに命が奪われていくのを感じた。
意識が、だんだんと薄くなっていく。
「魔に染まるなよ。僕は聖悪魔だから聖の方になってほしい。」
最後に、そんな声が聞こえた気がした。
そこで、意識がプツリときれた。
「ジジ…追加でもう一発。必中機能付与。」
目の前には、あの巨大ロボットがいた。
「悪魔……いや、聖悪魔にもらったのを試してみよう。万物流転。」
「キュガ、キカ。」
(メタルゴーレムキングは、下級ゴーレムに流転しました。種類はクレイゴーレムです。)
あー。そういうスキルだったんだね。
怖っ。もし人間がこれかけられたらどうなるの?
ごめんよぉ、なんとかゴーレムキング君。
「キュキ、キキ。」
「えっ!もう一回これをかけたら元に戻れるの?」
なぜか俺にはそう聞こえた。
「万物流転。あれ?さらに小さくなったような。」
(クレイゴーレムは最下級ゴーレムに流転しました。種類はジャストゴーレムです。)
間違いでした。土下座します。
(戻らせるためには、ダンジョンコアに魔力を注ぎ、ダンジョンボスにする
必要があります。)
オーマイガー。無駄な手間が増えたよ。
「逆召喚。ダンジョンコアのあるとこまで。」
(エラー。ダンジョンボスがもう一体いるため、移動距離が短縮されます。)
えっ!ダンジョンボスがもう一体?
歩いていくしかないのか。
「なら、神速。一気に行こう。」
10分後。バリュートはダンジョンコアのところにたどり着いていた。
たどり着いていたのだが。
「影踏み鬼をやりましょう。ルールは知ってるよね。勝ったら通っていいよ。」
もう一体のダンジョンボスに足止めをされていたのだ。
影鬼という名前のモンスターだ。
その名の通り影を操る鬼だ。
簡単だと思い、魔王を呼び出したのだが、影鬼に足首を掴まれてしまい、動けなくなった。
「影を掴まれたら動けなくなる。こんなの常識だろ。ズルはするなよ。」
お前の存在自体がチートだっつーの。
「次は君の番か。スタート。雷神の瞬き。」
「神速。影移動。」
影踏み鬼が始まった。