暗殺王〈リアジュア〉
(リアジュア視点)
「ク、クソッ!魔法が消された!我が【黒血魔法】が!」
暗殺ギルドで、人殺しの依頼を受けたが……
魔力の色と匂いは同じなのに、スライムだと!?
これでは、スライム殺しではないか。
スライムみたいな雑魚は、狩っても意味がない。
だがなあ!
「マシシーはウサーギを狩るにも全力を尽くすというだろう!死ね!【黒血魔法】!終焉ノ血!」
だが、また防がれた。
今度は、あのスライムにではない。
どこからか現れた、ニガ・グッズの店長だ。
「ふむ。君は、どこかで見たことがあるような気がする。」
わざとらしくニガ・グッズの店長は言った。
「ああ、そうだそうだ。王国で指名手配されてたあのリアジュアか。君の懸賞首は、黒金貨4296枚だ。私は金を稼ぐことにしか興味がないのでね。斬らせてもらっていいかな?」
な、何故私のことを知っている!
【偽装】で顔を変え、服装も目立たないよう、平民の服にした。
このことすら見抜くとは、殺り甲斐がありそうだ。
だが、ヤツは、最高火力の魔法を防いだほどの相手だ。
殺れるかどうか。
一応殺せる方法はあるが、奥の手を使うことになる。
どうしても、ターゲットを殺さねば。
「ほう、我のことを知っている者は、お前で4人目だ。そしてちょうど……お前が4番目に殺される!【輝きの黒】!お前程度の相手ならば、ちょうどいい魔法だ!」
黒い輝きが、奴に迫った。
だが、アイツの手がブレる。
その動作だけで、魔法は、飛ばされた。
だが、ヤツは知らない。
この魔法が必中魔法だということを。
輝きが、迫る。
「………………ッ!?」
遅れて反応したが、もう間に合わない。
さあ、死ね!
「全ての魔法を喰らえ、黒孔球……哀しみの魔法。【精神的苦痛】。」
何かの詠唱を唱えた。
その時、私の頭に心的苦痛が流れ始めた。
殺した相手が死耐性を持っていて、生首のままこちらを向いたこと。
殺した奴が暗黒魔法でゾンビにされて、目が飛び出ていたこと。
王国の兵に捕まったこと。
色々な記憶が流れ始める。
その中に違和感を覚えるものがあった。
魔導木車のような、トロッコという不思議な魔道具に轢き殺されたこと。
「冥土剣。」
アイツが妙な形をした剣を構える。
コイツとやりあっている場合ではない。
あのスライムを殺す。
「邪魔をするなぁ!|呪え、恐怖の藁人形!」
空中に怪しげな道具が浮かび上がる。
これぞ、我が最終兵器にして最強兵器。
【恐怖の藁人形】は、発動自体は容易だ。
だが、発動すると、魔力が吸い取られていく。
吸い取れば吸い取るほど、その力は増し、やがて相手の魔力も吸うようになる。
そのころには、あの竜の力も軽く超えるほどになっている。
『藁飛バシ』
鋭い藁が1本、亜高速で飛ばされた。
さすがにこれは受け止められないだろう。
『五寸釘ダ。』
空気中の魔素を釘の形にして、放つ。
我は、魔力を失い、冷たい床にバタリと崩れ落ちた。
結局、暗殺は失敗か。
その時、我の魔力が、ほんの少しだが、戻った気がした。
目の前にいるのは、あのスライム。
もしやこやつが?
(バリュート視点)
(魔力回復。ついでに大回復もかけておくか。)
突然現れたレイブさんが、この人と話していたところを聞くと、この人は暗殺者らしい。
こんなやつを回復してやるのもまあいい。
問題は…………
「お前は、バリュートか?話せ。」
え?
なんでレイブさんこっちに話しかけてきてんの?
こっちはバリュートじゃないよ?
パクァだよ。
その名前は前世でしょう。
「ああ、すまない。スライムは喋れなかったな。これをやる。」
紫と水色が混じった器械をくれた。
「これは、空気中の魔素を、声に変換する魔道具だ。」
なるほど。
意味が不明です。
兎に角、これでしゃべればいいんだね?
『ボク、バリュートダヨ。マリョクコカツジョウタイニナッタ、ッテアタマンナカニナガレテサ、キガツイタラコンナスガタニナッチャッテテ。』
おし、これで真実のこと言ったから大丈夫だよな。
「ダメだ。もうちょっと詳しく話せ。」
なぜなぁぜ!?