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組織能力を向上させるには?定義と具体例を紹介

目次 


組織能力の議論を行うことで、戦略の実行体制をより具体的にイメージできます。

「新たな中期経営計画や事業戦略が発表されたが、どう現場に落とし込めばいいのかわからない」「より実務に直結した学びを現場へ提供したい」 といったお悩みはないでしょうか。

環境変化が激しい中、企業は今まで経験したことのないレベルで戦略の見直しを迫られています。戦略を落とし込むためには、組織能力の議論が重要です。

そこで本記事では、「組織能力」について、定義、重要性、組織能力開発のポイントを解説します。

組織能力とは何か?

組織能力とは、組織を構成する各メンバーの能力が、どのくらい同じ方向に向いて発揮されているかで表される能力のことです。下図のように「個人力(ベクトルを長くする)×方向性を揃える(ベクトルを揃える)」で表わされます。

組織能力とは

そもそも組織とは個人の集まりからなるため、組織能力を向上させるための重要な要素の一つは個人力の強化(ベクトルを長くする)といえます。

個人力の強化は、やれる幅を増やすこと(リスキリング)と、やれることの効果・効率を高めること(アップスキリング)で実現可能です。

ただし、個人力が上がれば、組織能力が高まるかというと必ずしもイコールではありません。組織としての能力を高めるためには、個々人が発揮する力の方向性を揃える必要があるのです。例えば、下図で表現した様に、個々人の能力が同じ集団であっても、各自が別々の場所を掘っている集団と、同じ場所を掘っている集団では、掘れる穴の深さは異なってきます。

組織能力の重要性

なお、ブランドや組織が保有する設備なども組織能力といえますが、ブランドや設備を創るのも結局のところは人です。そのため、個人力の強化を検討する際、ブランドや設備といった要素もカバーできます。例えば、○○という設備を創るために、組織としてどの様な活動が必要で、どの様な人材が求められるのか検討するといったイメージです。

組織能力の重要性|起こりがちな失敗事例から学ぶ 

必要な組織能力を描き、向上させなければ、戦略は絵に描いた餅になってしまいます。ここでは、組織能力の重要性について、起こりがちな失敗事例を基に解説します。

  • 事例1:組織の箱作り

組織の箱を作るだけでは、戦略は推進されません。なぜなら、箱を作ったところで、具体的に何をすればその戦略が推進されるのかイメージが持てないからです。
例えば、「これから我が社はDX戦略を推進していく。それにあたって、DX推進室を新たに設立します」という会社をお見受けすることがあります。
しかし、いざDX推進室の方々にお会いすると「これからどの様なDX戦略を推進するか決まっていないんですよね。これから考えます」と仰ることも少なくありません。そして、これから考えると言いながらもなかなか良い戦略を描けず、苦労されているケースも散見されます。
戦略を実行させるためには箱作りではなく、必要な組織能力を定義する必要があります。組織能力を言語化できれば、必要なリソースや何を行うべきかが自然と導き出されるでしょう。

  • 事例2:戦略から人材への落とし込み

組織能力という概念を持たなければ、戦略の実行体制を検討しづらくなります。なぜなら、戦略という大きな概念のままでは粒度が粗く、人材という具体の話について議論することが難しいためです。
ありがちな例としては、「戦略を実現するためには、どの様な人材が必要か?」のように、戦略から人材へいきなり落とし込もうとするケースが挙げられます。
その結果、本当に実在するのか怪しいスーパーマンのような人材像が出来上がってしまいます。極端な話、野球の大谷選手のように投手、バッターの両方をトップレベルでできる人材、といった定義にしがちです。
そのため、一人が全部やる必要があるのか、それとも複数人でカバーできればいいのかを議論する必要があります。当社の支援実績上、多くの場合、人材モデルは複数モデル(3-6モデル)になることが多いです。

  • 事例3:バックキャスティングでの戦略立案

事例2でお伝えした通り、戦略という大きな概念のまま、個人が何をするのか検討することは困難です。そのため、新たな中期経営計画が発表されたとしても、それをどのように自組織へ落とし込めばいいのかイメージが持てず、従来行ってきた業務を改善するレベルでの実行計画に留まっているケースも散見されます。
必要な組織能力を検討することで、戦略実現に向けた、役割・成果の見直し、自組織の既存の業務プロセスの抜本的な見直しや、戦略上重要な活動を明らかにすることができます。

組織能力の導き方3ステップ

では、どのようなステップで組織能力を導くと良いのかを3つのステップに分けてお伝えします。

ステップ1:戦略を明らかにする|誰に、どのような価値を提供するのかを言語化

前提として、そもそも企業はどの様に成り立つのかをシンプルに整理しておきます。企業がお客様へ何かしらの価値を提供し、その見返りとしてお金をもらえてこそ、企業として存続し続けられます。そのため、ここでは「戦略を明らかにすること=誰に、どの様な価値を提供するのかを考えること」と定義します。
例えば、女性専用フィットネスクラブのカーブスの提供価値は、「リーズナブルかつ、他人の目を気にせず、気軽に利用できるフィットネスクラブ」です。そして、この価値を届けるメインの顧客は「中高年女性」です。
これだけではまだ戦略を立案したとはいえませんが、この基本的な部分を語れない組織長が多いと感じています。「何をしているのか」(=過去の戦略)を語れる方は多いのですが、「これから何をすべきか」を語れない人がほとんどです。また、語れたとしても、その考えが正確に他者へ共有できている組織は更に少ないです。
なお、ステップ1では戦略を明らかにすると記載しましたが、場合によっては、戦略ではなく、パーパスやビジョンとなることもあります。 →パーパス、ビジョンにいては、こちらの記事で解説しています。

ステップ2:戦略を実現するために保有すべき組織能力を明確にする

ステップ1で明らかにした「提供価値」を実現するためには、どの様な組織能力を保有すべきなのかを明らかにします。
例えば、家具のIKEAを事例に解説します。IKEAの提供価値は「センスの良い良質な家具を他社よりも安く提供し続ける」です。この提供価値を実現させるために、3つの組織能力を保有する必要があります。1つ目は「センスのよい家具をどこよりも安い原価で作ることができる」、2つ目は「販管費を最小限にすることができる」、3つ目は「長く安定的に供給できる」です。
このように、組織能力を定義するときは「○○できる」という状態を表現することがポイントです。

ステップ3:組織能力を発揮するために必要な活動を明らかにする

ステップ2で明らかにした「組織能力」を実現するために、どの様な活動を行う必要があるのか整理します。
例えば、「センスのよい家具をどこよりも安い原価で作ることができる」という組織能力を発揮するためには、「原価を抑え、なお且つセンスのよい家具を自社で設計する」「原価を抑えるために、組み立て式のキット・パッケージを採用する」などの活動が導き出されます。

組織能力から活動を導くプロセスでよくある質問

組織能力から活動を導き出すプロセスにおいて以下の様な質問をいただくことがあります。回答とあわせて紹介します。

組織能力から活動を導くためのコツは?

バリューチェーンをイメージしながら作成することをお薦めします。組織能力を実現するためには、どの様なステップ(活動)が必要か整理すると、必要な活動をイメージしやすくなります。

活動と行動の違いは?

活動と行動には以下の様な違いがあります。

活動と行動の違い

上記整理を踏まえると、組織能力開発とは活動開発であり、人材開発とは行動開発と表現することができます。

活動まで導き出す必要性はあるのか?

いままでと異なる結果を期待するのであれば、これからはどの様な活動が求められるのかをイメージする必要があります。
「同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という」(アインシュタイン)

組織開発と組織能力開発の違いは?

まず、組織開発の定義について確認します。組織開発の定義を説明する際によく引き合いに出されるのは、人材開発です。人材開発の対象は「人」であり、組織開発の対象は「人」そのものではなく組織やチーム内の「関係性や相互作用」と定義されるのが一般的です。
そのため、組織開発では「関係性や相互作用」を活性化させることに重きが置かれます。そのため、組織開発で用いられる手法としては、対話、心理的安全性、傾聴などをテーマとした施策が検討されることが多いです。
一方、今回紹介している組織能力開発は、戦略を実行するために必要な組織能力の特定から始まり、業務プロセス、必要な役割、文化など、組織全体を対象とした取り組みを扱うことになります。

組織能力の高め方

冒頭、組織能力とは、個人力(ベクトルを長くする)×方向性を揃える(ベクトルを揃える)とお伝えしました。この定義を踏まえ、いかにして組織能力を高めるのかをお伝えします。

方向性を揃える

企業において方向性を揃えるためには、企業理念(ミッション、ビジョン、バリュー、パーパス)と、戦略を打ち出すことが重要です。それぞれをどのように打ち出していくのかは別の記事で紹介します。
企業理念についてはこちらの記事を参照ください
戦略についてはこちらの記事を参照ください

個人力を強化する

個人力を鍛えるにあたって重要になるのが、個人ごとにどのような成果・役割を果す必要があるのかを明確にしたうえで(職務の明確化)、個人が開発すべき行動を整理することです。成果は行動によってしか生まれません。行動には、成果につながる行動とつながらない行動があり、個人力の強化(=人材開発)とは、結局のところ“成果につながる行動”の特定と開発であるといえます。

まとめ|組織能力を検討することで得られる示唆

ここまで組織能力についての定義と具体的な導き方などを紹介してきました。組織能力開発のご支援はコンサルティング、ワークショップ、研修と様々な手法で既に多数の会社様へ提供してきましたが、参加者から共通して以下の様なコメントをいただきます。

  • 組織能力を支える活動を言語化、可視化したことで、目標の実現に向けて何に取り組まなければならないか明確になった

  • 「今実行している施策が、本当に経営の方向性と整合が取れているのか」を自問自答するきっかけとなった

  • 組織能力を発揮していくためには、各自の役割や職務内容を明示化する必要性を感じた

  • 組織能力を発揮しようとすると、今の社員の育成だけでは間に合わない。外部からの採用が必要だと改めて感じた

  • これをメンバーと一緒に作ることで、目的や各自の役割も明確になり、明日からの活動がしやすくなると思った

環境変化が激しい中、企業は今まで経験したことのないレベルでの戦略の見直しを迫られています。戦略を落とし込むためには、組織能力の議論が重要です。
組織能力の議論を行うことで、戦略推進に向けて何をすべきか具体的な活動が特定でき、現場レベルでの行動イメージが湧いてきて、戦略の実効性が高まることが期待できます。


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