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組織文化とは?具体例や与える影響、浸透させるポイントなどを解説

組織文化とは、組織が大切にしている価値観や仕事のやり方です。組織文化は、単なる抽象的な概念ではなく、毎日の行動や意思決定のなかで築かれる組織の「らしさ」です。「らしさ」は日々の行動に現れるため、コントロール可能で、意図的に変革できるものです。

この記事では、組織文化について、定義や具体例、重要性、メリット・デメリット、与える影響、そして浸透させるためのポイントをわかりやすく解説します。組織文化がなぜ重要なのかを一緒に考えてみましょう。

そもそも文化とは?

「文化」という言葉は、私たちの生活のあらゆる場面で使われますが、実は様々な種類やレベルが存在します。例えば、次のような文化があります。
文化の種類

  • 宗教文化: キリスト教、イスラム教、仏教など、宗教に基づいた文化。

  • 国や地域の文化: フランス、日本、沖縄など、国や地域特有の文化。

  • 職業文化: 教師、官僚など、特定の職業やグループに特有の文化。

これらの文化は、それぞれ独自の言語、象徴、ルール、そして「自分たちの文化こそが正しい」という考え方を持っています。

組織文化とは?

組織文化とは、一言で表すと「組織が大切にしている価値観や仕事のやり方」です。
組織文化は、先に挙げた文化の種類より、さらに狭い範囲での文化です。会社や団体など、特定の組織を他の組織と区別する特徴です。

組織文化の具体例

組織文化がどのような要素で成り立っているのか、具体例を紹介します。
例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 組織が大切にしている価値観:何を重要視しているのか?

  • リーダーのスタイル:リーダーはどのように部下を導くのか?

  • 組織の象徴:社名、ロゴ、スローガンなど、組織を代表するものは何か?

  • 仕事の進め方:どのように仕事を進めるのか?

  • 成功の定義:組織にとって成功とは何か?

これらの要素が組み合わさることで、その組織ならではの文化が生まれます。文化の本質は、集団で学び共有された価値観や信念であり、それが組織内で広く認められ、重要視されることで、組織文化として根付いていきます。さらに、組織が成功し続けることで、これらの価値観や信念は強化され、広がっていくのです。

組織文化の定義

アメリカの組織心理学者エドガー H. シャインは、組織文化を「組織が外部の変化に適応し、内部でうまく連携をとるために学び共有してきた基本的な考え方や信念」と定義しています。

また、ミシガン大学のロス・スクール・オブ・ビジネスのキム・S・キャメロン教授は、組織文化を「ある組織を他と区別する価値観、リーダーシップのスタイル、シンボル、仕事の進め方、日々の業務や成功の基準」だと説明しています。

簡単にいえば、「組織文化」とは、その組織が大切にしている価値観や仕事のやり方を示すものです。組織の価値観には、その組織が信じる基本的な信念や原則、そしてそこで働く人に求められる行動が含まれます。これらの価値観が、組織のすべての活動や対応に影響を与え、何が重要であるかを示す基準になります。

なお、価値観とは、「物事にどんな価値を見出すか」という感じ方や考え方を表します。善悪や物事の判断基準にも関わり、何を大切にし、あらゆる場面で何を優先するかを決める重要な要素です。

組織文化の3段階

エドガー H. シャインは、組織文化が3つの段階によって形成される「3段階の文化レベル」を提唱しています。

1つ目は、会社名やロゴなど、外から見てわかる部分です。
2つ目は、会社の理念やビジョンなど、言葉で説明できる部分です。
そして3つ目が、一番深い部分で、社員一人ひとりが無意識に持っている考え方や価値観です。

この3つ目のレベルこそが、特に重要な組織文化と言えます。例えば、ある会社が「お客様を大切にする」という理念を掲げていても、社員全員が本当にそう思っているとは限りません。しかし、組織に根付いた文化があれば、自然と顧客を大切にする行動が生まれてきます。これは、その会社の文化が社員の行動に影響を与えているからこそです。

つまり、組織文化は言葉で説明できる部分だけでなく、社員の行動や考え方にも深く根付いているのです。

組織文化の重要性

現代のビジネス環境において、企業の成功は優れた製品やサービスの提供だけではなく、組織文化によっても大きく左右されます。社員が共通の価値観を持たない場合、組織全体が迷走し、効率の低下や意思決定の遅延といった問題が発生する可能性があります。

以下で、組織文化の重要性について、あらためて考えてみましょう。

組織文化が「ない」とどうなる?

もし、会社で働く人たちがそれぞれ異なる価値観や考え方を持っていたらどうなるでしょうか?例えば、会社が危機に直面したとき、意見がまとまらず、何も決められないまま時間だけが過ぎてしまうかもしれません。また、会社が成長するにつれて、部署ごとに異なる考え方が生まれ、お互いの足を引っ張り合うような事態にもなりかねません。

組織文化が「ある」とどうなる?

一方で、組織文化がしっかりと根付いていれば、会社で働くすべての人が共通の価値観や考え方を持つことができます。これにより、次の項目で示すようなメリットを得られます。

組織文化のメリット

組織文化があることで得られるメリットを、3つ紹介します。

1. 社員が自主的に動きやすくなる

組織文化が根付くと、社員は「自分は組織の一員として何をすべきか」を自然に理解できるようになります。その結果、上司の指示を待たずに自ら動けるようになります。明確な価値観があれば、それに基づいて行動しやすくなり、社員は自由に仕事を進めやすくなるのです。

なお、ゴールにたどり着く道筋は複数ありますが、「私たちは、このようなやり方でゴールにたどり着こう」という、いわば「フェアウェイ」を示すものが、「バリュー(価値観)」です。対して、「このようなことをしてはいけない」と遵守すべきルールを提示するのが、「コンプライアンス・コード」です。

2. 意思決定がスムーズになる

みんなが同じ価値観を共有していれば、意思決定の際に意見の食い違いが少なくなります。例えば、「品質を最優先する」という価値観が組織全体に浸透していれば、製品開発の際には常に品質向上を意識した意思決定が行われます。共通の価値観があることで、予期せぬ出来事や前例のない状況でも、迷わず迅速に判断できるようになります。

3. ブランドイメージの向上につながる
顧客や社会が感じる会社のイメージ(ブランド)は、その会社の社員一人ひとりの考え方や行動、つまり組織文化によっても形作られます。
良い組織文化は、会社全体の評判を向上させます。例えば、「社員が楽しそうに働いている会社」や「品質を大切にしている会社」といった印象は、企業のブランドイメージを高めます。これにより、顧客からの信頼を得やすくなり、優秀な人材も集まりやすくなります。

ただし、単にスローガンを掲げたり、社名のロゴやウェブサイトのデザインを改善するだけでは不十分です。組織文化をしっかりと社内に浸透させ、それを日々の行動に反映させることが大切です。もし、組織文化と矛盾するブランドイメージを打ち出しても、その矛盾が顧客に伝わってしまい、期待とのギャップからかえって悪い印象を与えかねません。

組織文化のデメリット|注意すべきリスク

組織文化は社員のモチベーションを高め、一体感を生み出すなど、たくさんのメリットがあります。しかし、その一方でデメリットやリスクも考える必要があります。どのような点に注意すればよいのでしょうか?

1. 排他的になりすぎて、多様性を失う可能性

組織文化が強固になると、組織の価値観ややり方に合わない人が居心地の悪さを感じることがあります。その結果、優秀な人材が組織を離れてしまうようなケースも起こり得ます。この状況を「新陳代謝」と捉えることもできますが、多様な考え方を取り入れるチャンスを逃すことになりかねません。
例えば、世の中へのインパクトを重視する価値観が強い場合、競争や勝敗にこだわらない人が評価されにくくなることがあります。また、互いに助け合うことを重視する文化が強まると、個々が自立する意識が希薄になる傾向が生まれることもあります。

2. 一度根付いた文化は変革しにくい

一度形成された組織文化は、なかなか変えることが難しいものです。しかし、市場の変化や新しい技術に対応するためには、組織文化自体を変革する必要があることもあります。特に、過去に業界をリードしてきた企業ほど強力な組織文化が形成されており、その変革には大きな挑戦が伴います。

組織文化はどこから生まれるのか

組織文化は、一朝一夕でできるものではなく、長い年月をかけて形成されます。現在の文化がどのようにして生まれたのか、一度振り返ってみましょう。具体的には、以下のような要素が複雑に絡み合って文化が形成されています。

会社のルールや仕組み

昇進の仕方、評価の基準、仕事の進め方など、会社が定めたルールや仕組みは、社員の行動に大きな影響を与えます。

リーダーの行動

社長や上司の言動は、社員にとって最も身近な存在であり、その人の行動を参考にしながら、皆も自然と似たような行動をとるようになります。

社員の考え方

入社したばかりの社員は、会社の先輩や上司の働き方を見て、この会社ではこうするのが当たり前だと学びます。

組織文化が社員の行動に与える具体的な影響|3タイプを例に紹介

組織文化は、社員一人ひとりの行動や考え方にどのように影響しているか考えてみましょう。

組織文化は、どの行動が好ましいのか、またどの行動を避けるべきか、そして仕事にどう取り組むべきかを、自然と社員に教えてくれるものです。言い換えれば、組織文化は私たちが物事を判断するための「フィルター」のような役割を果たしています。

具体的には、組織文化は共通の価値観や考え方の集まりであり、社員が組織の状況や出来事をどのように解釈し、どのように行動するかを形作ります。以下では、組織文化が社員に与える影響について、3つのタイプを例に挙げて解説します。

なお、これらの考え方は「組織文化インデックス」に基づいており、組織文化を「官僚的文化」「革新的文化」「支持的文化」の3つに分類しています。組織文化は社員の行動や仕事への取り組みに大きな影響を与え、それぞれの文化にはメリットとデメリットがあります。どの文化が適しているかは、会社の状況や戦略によって異なります。

1. 官僚的文化

官僚的文化の特徴と、社員に与える影響は以下の通りです。

  • 特徴: 上司の指示を忠実に守り、個人の意見よりも組織全体の利益を優先する傾向があります。

  • 社員への影響:

    • メリット: 仕事がスムーズに進みやすい、責任の所在が明確

    • デメリット: 自発的な行動が抑制される、新しいアイデアが出にくい

2. 革新的文化

革新的文化の特徴と、社員に与える影響は以下の通りです。

  • 特徴: 新しいことに挑戦することを奨励し、変化を恐れずに新しいアイデアを生み出すことを重視します。

  • 社員への影響:

    • メリット: 革新的な製品やサービスを生み出しやすい、活気のある職場

    • デメリット: 失敗を恐れる風土が薄れ、リスクが高まる可能性も

3. 支持的文化

支持的文化の特徴と、社員に与える影響は以下の通りです。

  • 特徴: 社員同士が互いを尊重し、助け合い、温かい人間関係を築いています。

  • 社員への影響:

    • メリット: 仕事に対するモチベーションが高まる、離職率が低い

    • デメリット: 競争心が薄れる、生産性が低下する可能性も


組織文化診断のための質問項目|自社の現状をチェック

自社における組織の現状を理解するために、次の問いかけに答えてみましょう。

それぞれの問いには、組織の価値観や働き方をより深く理解するためのヒントが含まれています。どちらか一方が良い、悪いということはなく、会社の状況や戦略に応じて選択肢が変わってきます。これらの問いを通して、組織がどのような価値観を持ち、どのような働き方を求めているのかより深く理解することができます。

1.組織の目標: 組織は、手段を重視していますか?それとも、目標達成を重視していますか?

2.顧客との関係: 組織は、内部のルールを重視していますか?それとも、顧客との繋がりを重視していますか?

3.仕事の進め方: 組織は、仕事に厳格なルールを設けていますか?それとも、自由な働き方を推奨していますか?

4.社員の意識: 社員は、上司の指示を重視していますか?それとも、自分の専門性を活かしたいと考えていますか?

5.外部との関係: 組織は、外部との交流を積極的に行っていますか?それとも、閉鎖的な体制を取っていますか?

6.マネジメントの考え方: 組織は、社員を大切にすることを重視していますか?それとも、仕事そのものを重視していますか?

組織文化を浸透させるためのポイント4つ

ここまで、組織文化の定義や、重要性、現状把握の仕方など解説しましたが、最後に組織文化を浸透させるためのポイントを4つ紹介します。

1. 価値観を共有する

組織文化は、みんなが大切にする価値観に基づいて作られます。例えば、「お客様第一」や「チームワーク重視」といった価値観です。これらの価値観を明確に言葉にし、全員が理解して実践できるようにしましょう。

価値観を具体的にどう行動に移すかを示すことで、より望ましい文化を作ることができます。なお一般的には、「ミッション、ビジョン、バリュー」のうちバリューを定め、その体現事例を共有するといった方法が多くみられます。

2.リーダーが模範を示す

リーダーの行動は、組織文化に大きな影響を与えます。リーダーが価値観を実践することで、周囲もそれに続きます。リーダー自身が率先して価値観を体現し、その背中を見せることで、自然と組織全体に文化が広がっていくのです。

その際には、言葉と行動を一致させることが、組織文化の本質を伝える鍵となります。いくらバリューに理想の価値観を掲げていても、言動不一致だと形骸化してしまいます。

3. 文化に合った人材を採用する

新しいメンバーを迎える際は、会社の文化に合う人を選ぶことがとても大切です。単純に仕事ができる人だけでなく、「会社の考え方に共感して、一緒に働きたい!」と思える人を採用することで、組織文化がより強化されます。

反対に、会社の文化に合わない人を採用してしまうと、せっかく築き上げた文化が壊れてしまう可能性もあります。採用する際は、仕事ができるかどうかだけでなく、会社の文化に合うかをしっかりと見極める必要があります。仕事はできても、会社の文化になじめずにすぐに辞めてしまうケースも散見されます。

そのため、採用の際には、組織文化と職務適性の両方の観点から診断するようなアセスメントツールを使うことを推奨します。

4. 評価制度で文化を育む

評価制度は、組織が大切にする価値観を従業員に伝えるための重要なツールです。例えば、ヤフー株式会社では、「課題解決」「爆速」「フォーカス」「ワイルド」の4つの「ヤフーバリュー」を掲げ、それに基づいて従業員を評価しています。従業員がどの程度ヤフーバリューを実践できたかによって評価が決まります。

具体的には、合計10個の評価項目を使用します。4つのヤフーバリューに関する項目がそれぞれ2個、役職ごとに設定した項目が2個です。あわせて、4つのヤフーバリューを記載したカードを全社員に配布し、バリューの浸透を図っています。
参考:https://jinjibu.jp/article/detl/tonari/932/1/

評価制度を通じて、組織が望む行動を引き出し、求める文化を育てていきましょう。評価制度を上手く活用すれば、組織の価値観に合った人材を定着させるとともに、合わない人材を自然に離脱させることも可能です。バリュー評価を導入して、組織の文化をしっかりと支えていきましょう。


まとめ

組織文化とは、「組織が大切にしている価値観や仕事のやり方」のことであり、組織の成長や成功には欠かせません。

そのため、単なる表面的なスローガンや理念に留まらず、日々の行動や意思決定に深く根付かせることが重要です。組織全体が共通の価値観を持ち、それを実践し続けることで、強い組織文化が築かれます。

組織文化を育て、維持していく努力は、長期的な成功への投資であり、会社が目指す姿を実現するための大きな力となります。努力を重ね、未来に向けた望ましい組織文化を築いていきましょう。


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