親の葬式
どういう葬式にしたいのか、先日、母に聞いてみた。母、81歳。いつあってもおかしくないから、意思を確認しておこうと思った。というよりも、私の考えに同意してもらいたかったというべきか。
私の考えは、身内だけの家族葬だ。子である私夫婦と弟の家族のみ。「それでいい?」と聞いたら、「それでいい」という。母の弟である叔父は?と聞くと、「あとで教えるだけでいい。呼ぶのも呼ばれるのも大変だから」という返事だった。気持ちがあれば、お焼香を上げに来てくれるでしょう、と。みんなそれでいい、と。
話はそうまとまったはずだったが、反対者が思わぬところにいた。母が自分の葬式について弟に伝えたら、「それはできないよ。みんな呼ぶよ」とあっさり否定されたらしい。弟は、母の意向を尊重するとばかり思っていたが、弟には弟の葬式に対する考えがあった。それはそれで悪いことではなく、弟の考えを知ることができてよかったと思う。
いま、葬式の形が変わり、親族や親しい関係者による火葬のみで、通夜や告別式を行わない"セレモニー"なしの直葬が増えているという。ある人が「人づきあいが面倒だと考えている。"恩のやりとり"というこれまで大切にしてきた価値観がなくなりつつある」というような憂慮の言葉を口にしていたが、私がまさに当てはまっていた。親は、親を送るときにしっかりと葬儀をしてきているのに、私は、葬儀にお金をかけるのは無駄に思えてならないのだ。花輪もいらない。戒名もいらない。父のときは、上司が参列に来てくれたが、嬉しい以上に申し訳ないという気持ち、心の負担の方が強かった。
こんな話しを知ったら、「(葬儀をして見送ることが)"人の道"ってもんだよ」と、天国の祖母に叱られそうだけど。
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