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対策委員会編3章 ネット上の不満点と個人的回答

ちょっと長めの前置きと注意書き

タイトルにて「不満点」と書いたが、これには誤解がある。
正しくは、ネット上で「物語の瑕疵」とされている点における個人的な回答となる。
本記事における物語の瑕疵の定義とは、論理的な矛盾ご都合主義のことを指す。
物語の瑕疵として、ネット上でそこそこ見るような指摘に対して、
それは矛盾じゃないですよ、ご都合主義と断じるほどの展開じゃないですよと説明していくのが本記事である。

そういうわけで、例えば緊張感が続きすぎる、とか物語のテンポが悪いとか、そういった指摘は取り上げない。それは個人の主観に大きく依るからだ。
なかなか言葉で説明しにくいが、いわば3章中の描写で説明不足故にマイナスな感情を抱かれているようなシーンを取り上げる。
詳しくは本文を見てもらった方が速いだろう。

対策委員会編3章にモヤモヤを感じる方が対象ではあるが、3章に好意的な感想を持つ方でも多少は楽しめる……かもしれない。
なんにせよ、「全く分からない」に対して、1つこういう解釈があるよ、と提示をすることで、「全く分からない」よりは「まあ、理解はできる」であったり、「ちょっとは分かった気がする」にすることが本記事の目的である。

実際は、物語を注意深く読めば得心できることが大半ではある。
逆に言えば、注意深く読まなければ分かりにくい描写がそこそこあったということである。

説明不足的な描写に対する解説を通じて、読者の3章に対する理解度が上がれば、これより嬉しいことはない。


不満点と回答一覧

・プレジデントが契約書をびりびりに破いたシーン

ユメ先輩がネフティスと交わした契約書を、プレジデントがびりびりに破くシーン。
プレジデントが追い詰められて非論理的な行動に走ったと捉えている人もいるようだが、非論理的とまでは言えない

プレジデントは債権者団体のリーダーとなったのだから、総会をどのように開催するかもリーダーの一存といえる。
つまり、誰に発言させて、誰に発言させないかを決めるのも、リーダーであるプレジデントの権利なのである。

アヤネたちは新生対策委員会を作ることで、ホシノのアビドス生徒会副生徒会長としての権限を停止し、ホシノが例の契約について弄る権利を無くしたことは妙案であった。
しかし、プレジデントはアヤネたちの発言権を与えていないと発言する事で、ホシノが契約を弄れない人物であるという認識していないことになった。実際に聞こえてるじゃん!は反論にならない
発言権を与えられてない者が何を話しても、公的な記録には一切残らないのである。

そういう意味で、既にホシノがアビドス生徒会を非認可の組織と認めた言質は取れているので、プレジデントの契約書びりびりは論理的には通っている。
強引なやり口なことは事実なので、アヤネの言う通りやりようは十分にあるだろう。しかし、大人の世界では「形式」が重要視されることも事実なので、その道のプロであるプレジデントと法で争うことは、先生にとっても厳しい戦いになることは言うまでもない。

・契約書びりびり後のホシノ暴走

ノノミを助け出すことはでき、アビドス生徒会の名前を無くす必要もなくなった。
おおよその問題は解決したはずなのに、なぜホシノが未だ1人で行動しようとするのか分からない人が一定数いる。

その理由の1つは、列車砲の権利はカイザーに移ってしまったことだ。

契約は破棄され、列車砲の所有権はカイザーに移った。その結果、作中でも描写されているが、
列車砲を傷つければカイザーは損害賠償を正当に請求できる立場になってしまった

契約書の破棄に関して、先ほど強引なやり方ではあるからやりようはあると述べた。
しかしながら、権利問題の解決や裁判などをしている間にカイザーに列車砲を手に入れられ利用されれば、取り返しがつかない

そういう理由で、アビドス生徒会であるホシノが1人で、独断に列車砲を破壊すれば、ホシノ全てに責任が集中することになる。
(尤も、本当にホシノのみの責任とできるかは疑わしい)

とはいえ結局、ホシノの後輩を守るという観点からもホシノの暴走は筋が通っているのである

・プレジデントの総力戦、猿空間送り問題

猿空間送りにはされていない

事実、ハイランダーの力を借りてホシノを追いかけるなかで、
先生たちはカイザーの襲撃にあっている

また、スオウがシェマタに乗って去った後、
アヤネは分岐駅にカイザーが待ち構えている可能性は高いと予測している。実際、ホシノもそれは予測していたようで、
分岐駅に戻ったときにはPMCがいない、静かすぎるといった旨を話している。
直後、ヒナがいることから、
待ち構えていたPMCはヒナによって一掃された可能性が極めて高い
それについて示唆する描写がなかったのは、わざわざ文字を割いてまで語る必要がないと判断されたと考えられる。

尤も、PMC総力戦によるド派手な戦いを期待していた読者からすれば、
肩透かしであったことは容易に想像できる。

・スオウは結局何だったの問題

分からない。
強いて言えば、これからの物語における伏線、取っ掛かりである。
分からないことの不快感は察せられるが、
その章で出た伏線をその章で回収するルールはない。
これから先の物語展開を考えれば、スオウの秘密が明かされる可能性は高いだろう。
続報を待て、というやつである。

ちなみに今回のスオウがただのマクガフィンであることは、
事故ではなく作中の意図である可能性は高いだろう

スオウは、ライターと地下生活者によって、アビドス3章においては、ホシノを利用するための舞台装置として引っ張り出されたのである。

※ホシノは、手帳の在処が分からず、ユメ先輩があの時何を考えていたのか分からなかった故に、ストレスがたまり続けた。
この「分からない」というホシノの苦しみを少しでも読者に理解してもらうため、スオウを舞台装置にし「分からないって不快でしょ?」をライター側が示したのだ……という仮説は、考えすぎだろうか?

・ホシノの再暴走

「一緒に帰ろう」と手を取り合えそうだった先生たちとホシノであったが、シェマタの起動と共に、学校を吹き飛ばす!とスオウに挑発されたことで、ホシノは再度暴走してしまった

これは地下生活者の能力によるものが大きいと考えている。
スオウを立ち上がらせたことに加え、ホシノの使命感や罪悪感を再燃させたのである。
しかし、それは表面上の話ではある

1人の問題も皆の問題にすれば良いという論で、もう少しでホシノを丸めこめたが、その後暴走した。
2章の焼き直しという意見もあるが、それもそのはず

2章の答えである「みんなで一緒に」を一度否定しなければ、ホシノは最後の結論と救いに至れなかったのである

作中にも散々言われたことだが、
本当の意味では、人は苦しみを共有することが出来ない。
それは現実においても普遍の事実といえる。

だからこそ、ホシノの再暴走は必然であった。
むしろあそこで先生たちに否を突き付けなければ、
地下生活者がホシノの無意識領域を弄らなければ、
ホシノは2章でも消えなかった心のモヤモヤを抱えたまま、救われなかっただろう。

・今更ヒナを頼った理由/ヒナが既に行動を起こしていた理由

列車砲シェマタの問題は、ゲヘナと無関係ではないからである
このような大量破壊兵器の作成にゲヘナが関わっていたとなれば、どんな状況であれ、先生はゲヘナのトップであるヒナに連絡するのは想像に難くない。

また、人によっては都合が良いと感じた、ヒナの分岐駅スタンバイであるが、物語全体を見ればさしてご都合主義ではないことが分かる。
後の展開から分かることだが、ヒナはそもそも雷帝の遺産を追っていた
またこれまでの情報でヒナはゲヘナの元情報部であることが判明している。
ゲヘナの元情報部かつ生徒会長なのだから、アビドス砂漠にあるシェマタの情報を掴んでいたことは間違いないと推測。
アビドス3章一連の顛末もリアルタイムで掴んでいたために、先回りできていたのだろう。(情報部の情報収集能力のハードルが高まっている)
故に、仮に先生が電話をかけなくともヒナはあの場所でホシノを止めていたはずである

初見ではご都合主義と感じることも無理はないが、その実、展開には整合性が認められるのである。

※アビドスに雷帝の遺産があると判明したころには、ゲヘナがすぐに兵器を破壊できる立ち位置になかったことは容易に想像できる。
アビドス自治区にあるものを勝手に壊すことすら大問題なのに、投資ファンドやネフティス、さらにはカイザーも絡んでいるものに手を出すことはかなり難しいだろう。
さらには1章で、ゲヘナはアビドスに負い目がある。
「知ってたなら最初からゲヘナが解決しとけば良かったじゃん」はかなり困難な要求であると言える。

メタ的な不満点に対する慰めのような回答

ここからは作中の描写というよりは、少しだけメタ的なネット上の不満点に回答していく。
感じているモヤモヤや嫌悪感は晴れないかもしれないが、他の解釈を認識することで、感じたくない負の感情が少しでも軽減されることを祈って個人的回答を記す。

ホシノのヘイト管理

アビドス3章は、特に小鳥遊ホシノを中心として制作された物語であることは言うまでもない。
しかし本章はただホシノを描いているのではなく、
ホシノが抱いている苦悩に焦点を当てて描かれている作品である。

そのため、真実かは分からないが、ホシノ推しでさえホシノが嫌いになりかけたという人もネット上で散見された。
とにかくホシノに対する不快度が高いと。

それはなぜか?

私は、本章はホシノの苦しみを忠実に描きすぎたからだと考えている。

ホシノの苦しみ。
それを極めて簡潔に述べれば、ホシノの苦しみは大きく2つある

1つは分からないという苦しみ
もう1つは後悔という苦しみである。

この苦しみについてそれぞれ深掘りすることは本記事の趣旨ではないため省く。
私の言いたいことは、
この苦しみにあえぐ姿を忠実に描写したことが、
一定数の人間がホシノに対する不快度を高めてしまった原因
であると考える。
人によっては不要と感じる物語中盤の展開も、
暴走して可愛い後輩すら何度も傷つけてしまうことも、
全てホシノのユメ先輩を起因とした、
2年間途切れることなく続いていた苦しみの発露
なのである。

ここからはもう、人が物語に何を好むかという話でしかない。
人の苦しみを忠実に描けば、ヘイト管理を完璧に行うことは出来ない。
ただし忠実に描く分だけ、特定の人の心に深く刺さったり、その人のたどり着く救いに強い納得感が生まれるのである。

そして、これだけは本記事の読者に伝えたい。
ホシノは意味もなく暴走し続けて、意味もなく仲間を傷つけていたわけではないだろうということだ。

アビドス3章が賛否両論なのは理解できる。
こういう展開が嫌いな人について、それは悪だと断じるつもりは毛頭ない。
しかし、こういう解釈もできるよと、
ホシノの苦しみを外側から忠実に描いた作品なんだよ
という解釈を叫ばずにはいられなかった。
ホシノの暴走には、それ相応の意味と経緯が存在する。
それが、本記事を作成した理由であり、本記事が存在する意義である。

なぜセリカを必死に助けなかった?

1章の話である。
セリカが拉致された時に、なぜホシノは3章ほどの必死さが無かったのかという指摘。
メタ的にはアビ三章の構想がその時点で固まっていなかったからだろう。
一応、3章内でもフォローはされており
内心一番焦っていたのはホシノだと言われている。(追跡の章から)



以上である。もし他のシーンに関してモヤモヤや疑問がある方がいれば、コメントにて教えていただければ、個人的回答をさせていただく(必要と判断すればは記事内に追記する)。
拙文ながら最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
感想やいいね頂けると嬉しいです。


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