苗字で遊ぼう④三文字苗字を読みの文字数で分類してみる
こんにちは。あざばて。( https://x.com/bateaza )です。最近はクイズ以外の創作活動を全くしていないので、「ぶくれしゅち」とばかり名乗っている気がします。
先日の記事では漢字二文字の苗字に使われている漢字について調べてみました。今回は佐々木さんたちを呼び出してみたいと思います。残念ながら長谷川さんは今回もおやすみです。
「佐々木」型が多い気がする
漢字三文字の苗字をいくらか思い浮かべてみると、「1-1-1」のものが多いような気がします。「佐々木」「久保田」「宇佐美」など、メジャーなものだけでも枚挙にいとまがありません。
対して、たとえば「2-2-2」型の苗字を思い浮かべるのは意外と難しそうです。
さらに言えば、「3-2-3」や「1-2-4」はもっと思いつきません。
ちなみに「3-3-3」はありません。(現時点で、日本名の苗字の読みは最長で8文字であることが知られています)
というわけで、それぞれに種類を分けて観察してみたいと思います。
ざっくり、件数の多い方から2000種類くらいの苗字を調べてみました。
なお、これ以降の読み方のデータは基本的に「苗字の百貨店」様を参照しています。また、複数の読み方がある苗字も少なくありませんが、だいたいは最多の読み方に準拠しているはずです。なお裏取りは雑です。
※「五十嵐」「長谷川」のように、どの部分がどの漢字に対応しているのかわかりにくいものは今回は除外しています。
まずはコモン~アンコモンクラスの読み数配列の苗字たちから。
①1-1-1 「佐々木」型
その他の代表:「久保田」「佐久間」「宇佐美」など
ざっくり600/2000、漢字三文字の苗字のうち、約3割を占める最大勢力です。全体順位1000位以内のありふれ苗字にも多数見られますね。
②1-1-2 「小野寺」型
その他の代表:「宇田川」「小山内(おさない)」「小田島」など
佐々木型に次いで多くみられ、割合は500/2000(25%)くらい。
「小田〇」「小野〇」をはじめとする「小〇〇」が目立ちます。
③2-1-1 「大久保」型
その他の代表:「大和田」「日下部(くさかべ)」「仲宗根」など
割合は350/2000(17.5%)くらい。「大〇〇」のほか「〇久保」系や「〇須賀」系もこの仲間ですね。
④1-2-1 「小山田」型
その他の代表:「早乙女」「小此木(おこのぎ)」「小森谷」など
読み方がブレるのでちょっと微妙ですが「上遠野」は「かとうの」が最多の読みなのでここの仲間です。よく考えたら「乙女」も熟字訓だから微妙だな割合は85/2000(4.8%)くらいと、小野寺型・大久保型に比べるとかなりレア。
形は多岐にわたりますが、特に件数の多いところでは「小〇井」の形が目立ちます。小岩井・小坂井・小金井など。
小野寺型の「小〇〇」には「小〇+〇」に見える苗字が多い(「小野+寺」のように)のに対し、こちらは「小+〇〇」に見える苗字が多い(「小+山田」のように)のも特徴ですね。
⑤2-2-1 「高草木」型
その他の代表:「大内田」「下山田」「六本木」など
割合は100/2000(約5%)くらいと、小山田型よりも種類はわずかに多いですが、馴染み深い苗字の数は多くはありません。最も多い「高草木」ですら約4000位です。
「よくある苗字」の頭に、もう一文字冠したものが目立つ印象です。「大+内田」「下+山田」や、「細+山田」「池+宮城」など。
あと、件数が下っていくと「〇〇寺」系がちらほら見えます。「安養寺」など。「〇別府」系もありますね。
⑥2-1-2 「竹之内」型
その他の代表:「堀之内」「山之内」「高見沢」など
割合は約230/2000(約11.5%)、五文字読みのもののうち半分以上を占める最大勢力です。
代表選手を見てもらえればわかる通り、「〇之内」を始めとする「〇之〇」「〇ノ〇」系が多くランクインしています。「〇ケ崎」系もいます。
また、「〇屋敷」系もここに名を連ねるものが多いですね。
⑦1-2-2 「小笠原」型
その他の代表:「二階堂」「小松崎」「小松原」など
全体順位250位ほどに位置する「小笠原」を始めとして、そこそこ見覚えのある苗字も少なくないように見えますが、種類の数で数えると、割合は約65/2000(約3.3%)ほどとかなりレア。
小山田型のときに「小+〇〇」の形が多いと説明しましたが、こちらはその傾向がさらに顕著です。「小松崎」「小松原」「小早川」「小板橋」「小金沢」……
よくある苗字の頭に「小」を付けた形が非常に目立ちます。
さて、ここまではまあ、知り合いを手繰っていけば思いつけなくもない読み数配置でしたが、ここからはレアリティが上がっていきます。
⑧2-2-2 「石郷岡(いしごうおか)」型
その他の代表:「三本松」「入内島(いりうちじま)」「上運天(かみうんてん)」など
割合は約50/2000(約2.5%)。六文字読みの苗字の半分以上を占める最大勢力です。六文字ともなると全体的にちょっと威圧感が出てきますね。
六文字読みの苗字は、2-2-2の形を避けようとするとどこかに必ず三文字読みの漢字を含む必要があるので、これに偏るのも無理はないでしょう。
また、たとえば「赤石沢(あかいしざわ)」みたいな、訓読みを並べた苗字が多そうな印象を受けますが、訓音訓の「石郷岡」、音音訓の「三本松」、訓音音の「上運天」をはじめとして、音訓は入り混じったものが多いです。
「中川西(なかがわさい)」とか「大粒来(おおつぶらい)」とか信じがたいけどな。
また、「上〇〇」「下〇〇」「中〇〇」の形も目立ちます。
余談ですが、「仲村渠」はたぶん「なか/んだ/かり」だと思います(渠の訓読みに「か-れる」がある、「村」がなまって「んだ」になっているっぽい)。
⑧1-1-3 「野田頭(のだがしら)」型
その他の代表:「田之頭(たのかしら)」「加賀城(かがじょう)」「土佐林」など。割合は8/2000(約0.4%)。
⑨1-3-1 「羽生田(はにゅうだ)」型
その他の代表:「羽入田(はにゅうだ)」「古小路(こしょうじ)」「久住呂(くじゅうろ)」など。割合は6/2000(約0.3%)。
⑩3-1-1 「東久保」型
その他の代表:「上土井(じょうどい)」「勝賀瀬(しょうがせ)」「向谷地(むかいやち)」など。割合は8/2000(約0.4%)。
読めないやつばっかり連れてきやがって。「上土井(じょうどい)」、初見で読めるわけないだろ。かみどいだろ。
三文字読みの漢字を含むものたちはどれもレアリティが高いです。ここに挙げた苗字も、羽生田(約5000位)と東久保(約9000位)以外は全体順位で上位1万位圏外となるレア苗字。
特に1-3-1型は「羽〇田」の形を除くと、思いつきもしなかった新鮮な苗字が多く面白いです。「間明田(まみょうだ)」とか。
ちなみにここまでで、五文字読み以内の形はとりうる形すべてを紹介しました。
六文字以上になると、とりうる形のパターン数が非常に多くなっていきます。理論上は1-1-4とかもあるので。
⑪3-2-1 「十文字」型
その他の代表:「東恩納(ひがしおんな)」「向中野(むかいなかの)」「俵積田(たわらつみだ)」など。割合は10/2000(0.5%)。
⑫2-3-1 「円城寺」型
その他の代表:「押領司(おうりょうじ)」「真行寺(しんぎょうじ)」「越中谷(えっちゅうや)など。割合は10/2000(0.5%)。
石郷岡型に次いで、六文字読みの中でちらほら見られるのはこの配置。「最勝寺(さいしょうじ)」や「浄法寺(じょうほうじ)」などもこれに分類され、音読みのものが多いです。
また、最後の文字を「寺/司/字(じ)」「谷(や)」「田(た)」で結ぶものがほとんどですね。「重黒木(じゅうくろき)」や「下柳田(しもやなぎた)」、「万城目(まんじょうめ)」などが例外です。
さて、ここからはさらにレアリティが上がります。漢字三文字の苗字を上から2000種類、全体順位で2万位ほどの水準まで洗っても、数例しか見つからない読み数配置たちです。
⑬2-1-3 「中野渡(なかのわたり)」型
他の例:「一ノ渡(いちのわたり)」「釈迦郡(しゃかごおり)」など
⑭3-1-2 「城之内」型
他の例:「城ケ崎(じょうがさき)」「小路口(しょうじぐち)」など
⑮1-2-3 「二本柳(にほんやなぎ)」型
他の例:「左近充(さこんじゅう)」「小松平(こまつだいら)」など
⑯1-3-2 「伊集院」型
他の例:「斉明寺(さいみょうじ)」「法領田(ほうりょうだ)」など
六文字読みのレア配列。特に「伊集院」型は、漢字三文字の苗字の上位2000位圏内にこれしか該当する苗字がありません。30件くらいしかヒットしないようなところまで探して、斉明寺と法領田をなんとか見つけました。
強いて言えば「御厩敷(おんまやしき)」がギリギリ1-3-2と言えなくも……いや、「おん/まや/しき」の方が自然だな……
⑰2-2-3 「上国料(かみこくりょう)」型
他の例:「新宮領(しんぐうりょう)」「上敷領(かみしきりょう)」など
⑱3-2-2 「東中川(ひがしなかがわ)」型
他の例:「東垂水(ひがしたるみず)」など
「りょう」で結ぶものには2-2-3の形、「東」で始めるものには3-2-2型を見つけることができます。読みが七文字になる苗字の中では最も多い部類になりますが、それでもすべて全体順位1万位圏外のレア苗字です。
これより珍しい苗字を調べていくと、その中にも比較的容易に見つけることが可能です。そもそも七文字読みの苗字がほとんどありませんが。
有名どころでは、「東国原」さんもこの配列ですね。非常にレアな苗字です。
⑲2-3-2 「上林山(かみばやしやま)」型
他の例:「弾正原(だんじょうばら)」「内鏡原(うちかがみはら)」
探しさえすればいくつか見つかるのですが、どれも非常にレアな苗字です。
さて。
ここからは、おそらく苗字全体を見てもほとんど存在しない配列たちです。そしてそのどれもが非常に希少な苗字に限られるものたち。スーパーレアな配列といえるでしょう。
極まれな例のご紹介
3-1-3
「蝶名林(ちょうなばやし)」
スーパーレアにくくるべき配列の中で、現環境トップがこれ。100件以上と、最低限のまとまった件数がありながら、その一目見ただけで目を引く読み数配置は他に類を見ません。3-1-3?
かなりレアなところまで広げると、「十二町(じゅうにちょう)」「十二林(じゅうにばやし)」「蝶間林(ちょうまばやし)」なども存在します。
3-3-1
「後小路(うしろしょうじ)」「順教寺(じゅんきょうじ)」「猖々谷(しょうじょうや)」など
3-3-2
「十良沢(じゅうりょうざわ)」「南京極(みなみきょうごく)」「南正覚(みなみしょうがく)」「明上山(みょうじょうやま)」など
3-2-3
「東上門(あがりうえじょう)」「東坊城(ひがしぼうじょう)」「南大林(みなみおおばやし)」など
そもそも漢字三文字・読み八文字ってどれだけあるんだろう。まとめてリストアップ可能なくらいしか数がないかもしれません。
1-3-3
「無量林(むりょうばやし)」
2-3-3
「一十林(いちじゅうばやし)」
1-3-3と2-3-3は、探した限り一例ずつしか見当たりませんでした。やはり「林」に頼ることになるのか。
4-1-2
「轟之上(とどろきのうえ)」
4-2-2
「燕昇司(つばくろしょうじ)」
一般的には「えんしょうじ」と読みますが、「つばくろしょうじ」も存在するそう。
四文字読みを含む漢字三文字の苗字って、この二種以外にあるのかな。4-1-1とか1-1-4とか、あってもおかしくないとは思うんですけど。今回は見つけられませんでした。
というわけで、三文字苗字を区別してみました。みなさんも身の回りの三文字苗字の人間を思い返してみてくださいね~!