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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」

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こんな力は望んでいなかったのに ─── 人間からヒトになった僕の回想録 銀行員の“僕“は毎年訪れるクリスマスを楽しみにしていた。小さなお店で身の丈にあったクリスマスツリーを買う…
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2024年8月の記事一覧

長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第一話

第一章 第五話↓ 第二章 第一話  百三十五年。世の中がどれほど変わろうとも、どれほど大き…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第二話

第二章 第一話↓ 第二章 第二話  突然声をかけてきたその者は、背は低いもののすらりとした…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第三話

第二章 第二話↓ 第二章 第三話  一人アパートへ戻ると、僕はこの忌々しい能力に再び激しく…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」 第二章 第四話

第二章 第三話↓ 第二章 第四話  僕は努めて普通を振る舞おうとした。いつも通り、何事もな…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第二章 第五話

第二章 第四話↓ 第二章 第五話  何かが崩れるような音が、どこか遠くで、そして近くで聞こ…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第一話

第二章 第五話↓ 第三章 第一話  こんな形でここへ戻ることになるとは。僕は再び収容所へ、…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第二話

第三章 第一話↓ 第三章 第二話  夜明けとともに目の前が開け、一面に広がる草原が目に入った。草原は夏の朝日を浴びて青々しく、朝露があちらこちらで光っていた。草原の中心を割って据えられた道を進んでいくと、そこには目にしたこともない、立派な館が建っていた。  僕は息を呑んだ。心ここに在らずの僕でさえ、流石に目を見張るものがあった。館はそれほどの存在感を放っていた。 「ここだ」  男はそう一言、ぶっきらぼうに告げた。僕は男に続いて車を降り、館へと足を進めた。我々の身長より

長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第三話

第三章 第二話↓ 第三章 第三話  ここでの暮らしは規則正しく進んでいった。村は男の暮らす…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第四話

第三章 第三話↓ 第三章 第四話  この町での生活にも慣れ、一ヶ月ほど経った頃だろうか、僕…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第五話

第三章 第四話↓ 第三章 第五話  一九九〇年十一月三十日。それは僕にとって忘れたくても忘…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第六話

第三章 第五話↓ 第三章 第六話   一九七二年七月四日———  私としたことが、もっと丁…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第三章 第七話

第三章 第六話↓ 第三章 第七話  轟音が響き渡った。  突如として書斎は氷柱に包まれた。 …

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第四章 第一話

第三章 第七話↓ 第四章 第一話  僕は濃紺のオーバーコートに深緑のマフラーを身に纏ってい…

米田梨乃
6か月前
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長編小説「ブルー・ブライニクルの回想録」第四章 第二話(最終話)

第四章 第一話↓ 第四章 第二話  人間になった僕はあの収容所ではなく、人間の病院へと搬送された。そこで数日余の深い眠りについていた僕は、夢の中で再び海の中に還り、これまでのヒトとしての時を反芻していた。  初めてあの天井を見た日から絶望に暮れた日々を過ごし、愛する町を、我が家を離れ、あの街へ向かった日のことを。君に出会い、甘く苦い日々を過ごし、君を、我が家を、町を失った日のことを。そして男と向かった村での新たな日々を。  そして自分の一生がどれほど愚かであったかを改めて