【ショートショート】アナログバイリンガル

「ほら席につけー。今日は転校生を紹介するぞ」
　先生が黒板に名前を書く。
「Hi, everyone！　秋谷真奈です、よろしくお願いしまーす」
「秋谷は帰国子女だ。皆、色々教えてやれよ」
　一限が終わった後、皆が一斉に真奈を取り囲む。
「マナね、5歳から外国に住んでたから普通に英語話せるよ。ママが日本人だから日本語も話せるバイリンガルなんだ」
　英語混じりの真奈の言葉を聞きながら健はため息をついた。くだらない。
「あなた、どうして一人でいるの？」
　健が顔を上げると真奈がこちらを見ていた。
「……くだらないなと思って。僕は外国語だけじゃなくて、3歳の時から機械語も学んでる。あらゆる言語に加えて、機械語もわかるデジタルバイリンガルなんだ」
「意味わかんない」
「君がいうバイリンガルはもうアナログで、時代じゃないってこと。そいつらみんな、デジタルバイリンガルになりたくて人間の言葉を勉強してる、ロボットだよ」