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風と木の詩

私の好きな漫画です。大家・竹宮恵子先生作。
※この漫画は男子同士の同性愛要素があります、嫌いな方はこの先を読まないで下さい

この漫画は主人公がふたりいます。

ひとりは子爵家の跡継ぎセルジュ。
もうひとりは有名な詩人を叔父に持つ美貌の少年ジルベール。

舞台はフランスの寄宿学校です。セルジュがラコンブラート学院へ入学してくるところから始まります。
セルジュの部屋をどこにしようかというところで、舎監のワッツ先生と級長のカールが考えあぐね、ジルベールの部屋が空いているのでそこへということになります。

ところがジルベールは、学院きっての問題児。不良学生、校長先生(ジルベールの親戚)等といけない遊びをして、セルジュはとばっちりを受け、酷い目にあうこともしばしばあります。

セルジュは、父は子爵家の生まれですが、娼婦パイヴァと駆け落ちした末に生まれた子です。パイヴァは肌の色がとび色です。セルジュも同じくとび色の肌です。

両親ともに他界しているので、子爵家の跡取りはセルジュだけです。後見人は実の叔母ですが、セルジュのピアノの腕に目をつけ、見世物にします。

そんな叔母には娘がおり、従姉妹でアンジェリンといいます。素敵な淑女で、セルジュに激しい恋心を持ちます。

ボート遊びの最中「私にキスして」とセルジュに懇願しますがセルジュは聞かず、アンジェリンは冷たい湖に投げ出され、叔母の折檻をかばおうとしたアンジェリンが顔にひどい火傷を負ってしまいます。アンジェリンはセルジュに出ていけと言いましたが、本当はセルジュにそばにいて欲しかったのです。

一方のジルベールも生い立ちがかなり複雑です。物語はジルベールの父(表向きは叔父と名乗っています)であるオーギュストが、友人たちを連れて帰宅するところから始まります。

実は、ジルベールはオーギュストの実の子です。オーギュストの兄嫁アンヌがオーギュストを誘惑してできた子供で、アンヌは一度もジルベールを愛することなく見捨てました。

ジルベールはその後、衣食住だけを与えられ、必要な教育、常識などをいっさい教わっておらず、命令されれば素直に従うので、オーギュストはそれを面白がったのです。

ジルベールはその美貌から、社交界でも人気者になり、彫刻家で男色家であるボナールに乱暴される事件が起こります。その後、オーギュストが近親相姦を起こすことになります。

その後、オーギュストは兄が運営しているラコンブラート学院へジルベールを放り込むことにします(オーギュストは兄と実の兄弟ではなく、兄の異常な性癖をなんとかしようと父が孤児院から連れてきた子です)

オーギュストは大人になると、詩の才能に恵まれ、また美貌で、社交界では人気者であり有名人です。オーギュストは、自分の生い立ちや世の中に対する復讐として、ジルベールを操ることにします。

セルジュとジルベールは愛し合うようになります。それからジルベールは、セルジュが色々と教え、頭ももともと悪くなかったので、ジルベールも好成績を持つようになります。

オーギュストはアンジェリンと婚約しており、オーギュストは叔母にセルジュとジルベールの関係を話しており、叔母から帰ってきて説明しろという手紙が届きます。

ジルベールのもとにも、セルジュとの関係を切らせるため退学させる旨の手紙が届きます。

このラコンブラート学院は総監制度があり、総監になると色々と権限も与えられるので、野心家のロスマリネがなりたがり、学院の先輩後輩であり、またオーギュストの遠縁の親戚ということもあって、オーギュストに近づきます。

セルジュはジルベールを連れて二人で逃げる計画を立てます。何故か友人パスカルはセルジュの計画に力を貸してくれます。

そして脱出計画当日、その晩の見張りはロスマリネ…相手が悪すぎると思うと、ロスマリネはセルジュに金を握らせ、二人を逃がしてくれました。

セルジュは当初、自分の両親が駆け落ちしたチロルへ向かう予定でしたが、ジルベールはパリへ行きたがったので、パリ方面のサン・ジルへ馬車で向かいます。

パリへ着くと、下町で仕事も住むところも見つけ、アパートで知り合ったカミイユがビストロでの仕事を紹介してくれました。

ジルベールも同じくビストロで働き、瞬く間に人気者になり、チップをはずむ客も多くなります。

セルジュとジルベールをずっと探していたパスカルの妹パットが、とび色のピアニストと金髪のウエイターと聞き、セルジュとジルベールだと勘づき、二人の住むアパートへ訪れます。

ジルベールはビストロで、ダルニーニというたちの悪いごろつきに目をつけられ、二人ともビストロを辞めざるをえなくてはならず、口論となっていたところにパットが現れたので、帰ってきてからも夜明けまでずっと喧嘩でした。

ダルニーニはしばらく、セルジュに仕事を与えるなと言っていましたが、作戦を変えてきました。セルジュは何でもして働きました。

パットはセルジュが心配で、兄パスカルに助けてくれと手紙を書きます。
パスカルと再会、セルジュの様子を見にきてくれました。

パスカルはジルベールと別れろと言いました。俺にとってはセルジュの方が大切だと。パットも、預かり先の夫婦が子爵家と交流があるということで、セルジュの家のうわさを聞いたとのことです。

アンジェリンはオーギュストとの婚約が破棄され、叔母は打撃で倒れました。

一方、ダルニーニの思惑どおり、つまらない毎日を過ごしていたジルベールは阿片漬けにされ、中毒になっていました。

ジルベールの様子がおかしいと思ったパスカルが家探しをすると、阿片が大量に見つかり、早く養護院へといい、行方不明のジルベールを探します。

ジルベールは売られそうになっていて、馬車に乗せられていましたが、ジルベールは馬車から飛び降り、命を落としてしまいました……

セルジュは愛していたジルベールを失い、大打撃を受けました。

パットは子爵家に手紙を書き、子爵家へもどり、ピアノを弾けるようにまで正気にもどり、物語は一応の終わりです。

感想として、セルジュだけ生き残って、その後はピアニストとして活躍してずるいなと思いました。ジルベールの悩みなんかなにもわかっていない、そう感じました。

女の子は可愛い子ばかり、アンジェリン、パット、カミイユ、みな可愛いです。背景、服飾、ものすごく凝っていて、心理描写もそれぞれ手抜きがないし、ここが竹宮先生のすごいところです。

ボナールは最初、ジルベールを乱暴したものの、セルジュとジルベールを、絵になっていると称していました(一応、芸術家なので)とても気のいいおじさんでした。オーギュストよりましな人と思います、男色家ですが(笑)

長編漫画ですが、竹宮先生の見せ(魅せ)方、描写、画力、ストーリー構成、どれをとっても素晴らしく、読み始めれば時間を忘れてさくさく読めます。同性愛に抵抗のない方、そして竹宮先生作品を読みたい方は是非!



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りんな
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