雨上がり

「無事に今日の実習が終わってよかったじゃない。ほら、雨もあがってきたし」港での校外実習を終え、麻莉香と帝人は学園へ向かって歩いていた。
昨日の旧体育館での特訓で、なんとか異能力の発動方法と制御の仕方を覚え、校外実習に参加したが、帝人はとても不満げであった。
「ふん。どーだか。昨日散々特訓したのにただ走り回るだけだったじゃねぇか。特訓の意味がねぇ」
「異能の使い方を覚えたから使ってみたいって気持ちはわかるよ。けど異能を使わないことにこしたことはないと思うな。」麻莉香はその場で立ち止まり、傘をたたむ。それに合わせて帝人もその場に立ち止まった。
「別にただ異能を使いたかっただけじゃねぇよ。そうじゃなくて、もう少し俺たちを使ってくれても良かっただろって思っただけだ。あれじゃ俺たちは居ても居なくても変わらねぇよ」
「それもそうだね。でも、まだ一回目だからだと思うよ。それに前期は始まったばかりだよ。これから異能力を使う機会がどんどん増えるって」麻莉香は心配ないよと言いたげな顔をすると再び歩き出した。歩いていく麻莉香の姿を見ながらまぁ、それもそうかと帝人は少し思った。
「あ。そう言えば」と、少し先を歩いていた麻莉香が振り向く。
「さっきの犯人引き渡しの時、誰かに見られてた気がしたんだけど誰かいたのかな?」
「先生たちじゃないのか?」
「かな?」
「学園に着いたらわかるだろ。ほら、早く帰ろうぜ」
「そうだね。帰りが遅いと先生から電話来そうだしね」と、麻莉香が言ってる間に帝人のポケットからピリリリリと甲高い音が鳴る。噂をすればなんとやらだ。スマートフォンを取り出し電話に出ると早く帰ってこいと催促された。雨あがりの夜空には欠けた月が綺麗に見えた。

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