〆誰かの1番になりたかった
「彼氏と予定出来ちゃったから、今日遊ぶ約束無しでもいい?」
大体5回はそう言われて友人から、遊ぶ予定をキャンセルされたことがある。
大丈夫だよ、楽しんできなね。と言いつつ、
私と先に約束したでしょうが、と思った。
友人の中での優先順位は、彼氏が先だった。
彼氏が最近返信遅い、構ってくれない
浮気してるかも、他に好きな人がいる、sexがどう、とか。
私は彼氏がいたことがないのに
よくそう言う相談を受ける。
相談する相手間違えてるんじゃないか、と思うけど、
私は、真剣に客観的にアドバイスをして
「まあ、彼氏いたことないんだけどね」
って必ず最後に言う。
恋人の悩みを抱えている本人たちには悪いけど、
その悩みたちが、凄く羨ましく感じた。
全部、経験があるから悩めることで
うまくいけば、幸せになれる。
その経験さえも、私には無いから。
*
私は4歳の頃に両親が離婚して、
父親に引き取られた。
祖母が一生懸命私の世話をしてくれたが、
母親が居ないというのは本当に大変だった。
幼稚園に持っていく祖母が作るお弁当は
いつも焼き魚とか、ゆで卵ばかりで
お弁当箱に敷くカップも
可愛いやつじゃなくて銀紙のやつで
おにぎりは大きすぎた。
私は、みんなが食べてるような
アンパンマンの形をしたポテトを詰めてほしかった。
小学の授業参観はいつも父が来て、
カレー作りをした時も、
みんな母が来ていたのに私は父だった。
作ったカレーを食べるとき、
大きなテーブルが2つあって
1つのテーブルに私と父が座ったら
誰も一緒に座ってくれなくて、もう片方のテーブルに
ママ友の集まりが、ぎゅうぎゅうになって座って。
気を利かせた先生が私たちと座ってくれて
3人でカレーを食べた。
小学高学年になり、胸が膨らんできた。
「凛花ちゃん、走るとき胸揺れてるよ」
仲の良い友達に聞いて、
自転車を漕いでスーパーセンターに
ブラジャーを1人で買いに行った。
母親って居ないとしんどいんだなと思った。
父のことを嫌いではなかったし
むしろ好きだった。
姉と3人で釣りに行ったり、
トンボを捕まえにいったり、
いつもお金のかからないことばかりだったけど
それがすごく楽しくて好きだった。
*
私が小学5年生になったあたりから父が家に帰ってこなくなった。
いつも祖母と姉とご飯を食べた。
父の中での優先順位は
私ではなく、新しいお母さんとなる人が先だった。
新しいお母さんが来てから、
2人は私の目の前でイチャイチャした。
私の好きだった父は、
新しいお母さんの恋人だった。
気持ち悪いと思った。
*
実の母から連絡があった。
再婚したという知らせだった。
新しい旦那さんに会って欲しいとのことだった。
会ってみたら、すごくいい人で母は幸せそうだった。良かった、と言ったが
なぜか寂しくて、悲しかった。
「ちょっと、飲み物買いに行ってくる」
そう言って、その場を抜け出して
思いっきり泣いた。
その後は、何事も無かったようにうまく笑えた。
*
母の日が来ると私は憂鬱だった。
実の母にプレゼントが渡せないのに
新しいお母さんにプレゼントを渡すことが
どうしても嫌だった。
祖母は、何か渡しなさいと言ったが
私は準備ができなかった。
心の整理がうまくつかなかった。
それを見かねた祖母が
「これ、買ったから渡しなさい」
と、鉢に入った花を私に渡してきた。
「嫌だ」
本音が思いっきり出た。
「せっかく家に来て、
貴方のお母さんになってくれた人でしょ」
「・・・・・」
頼んでなんかないのに。
私は仕方なく、渡すことにしたが
鉢に刺さっていた、
「おかあさん ありがとう」
と書いてあったプレートは
泣きながら引っこ抜いて捨てた。
最後の悪あがきだった。
*
どうしたら、もっと素直な子になれるんだろうか。
大人になれるんだろうか。
祖母が一生懸命作ってくれたお弁当を喜ぶ、
再婚した両親の幸せを喜ぶ、
新しく来てくれたお母さんに感謝する、
もっと私が素直で大人ならできていたのに。
私も誰かの、「1番に愛する人」になりたかった。
父が新しいお母さんを愛しているように、
母が新しい旦那さんに愛されているように、
私も誰かの1番になりたかった。
優先順位の1番に。
恋愛が苦手でうまくいかない私は
まだまだ1番にはなれなそうだから
せめてこの自由なnoteの世界では
誰かの1番になれたらいいな、
と思って今日もひっそり書いています。
つづく