ときめきだけじゃ片付かない!第2話
キンスマ、笑っていいとも、はなまるマーケットやTV チャンピオンに出演し、チャンピオンズでは収納王に輝いた吉田トシコ先生の取材&お手伝いに出かけた。
突然ですが、80歳代になるとどのくらいの体力になるのか想像したことありますか? 統計によると、40歳代の1/2ぐらいに減少しちゃうそうです。
片付けには体力が必要だけど、20代の頃の体力は30代にはもうないし、40代になるとなおさら。たまに、伊達公子さんみたいに40代になっても20代に負けないぐらい体力がある人もいるけど、それは希な話。体力は確実に落ちていく。
やがて親のことも気になってくる。いつまでも元気でいてくれたらいいけれど、目が悪くなったり体力が衰えてくると一気に調子を崩してしまうこともある。
前回のフェイスブックに書いたお宅も、仕事で疲れている40代のお嫁さんと足腰が弱っていた80代のお姑さんが暮らす家だった。
脳溢血で倒れたお姑さんの部屋は、魔法瓶や半ドーム型の調味料ストッカー、ガラスケースに入った五月人形など昭和を語る古い物で溢れていた。
片付けは吉田先生が間取り図に振った番号順に始まった。あらかじめ用意してもらっていたダンボールと圧縮袋に散らかっている物を仕分けていく。
「あら、あのキューピーのお人形…」吉田先生が手を止めてタンスの上を指差した。
「ああ、あのお人形、義母さん大事にしてて。可愛いものが好きみたいなんです」お嫁さんが答える。
「お姑さんは、ひょっとして亡くしたお子さんとかいるんじゃない?」
お嫁さんはビックリした表情でこちらを向いた。
「実は主人はお義母さんの本当の子供じゃないんです。お義母さんは訳あって、乳飲み子を置いてこの家に嫁いできたんです」
「そうなの。で、実のお子さんは?」
「それが、消息知れずで」
「だからキューピーちゃんなのね…」
(え〜、キューピーのお人形からそんな話が出てくるなんて!)吉田先生の洞察力の鋭さに私は驚いた。
衣類の中には正札が取れてない男性用セーターや、男性物を女性用に作り変えたズボンなどがあった。ベッドの下からは、旅行バッグが幾つも出てきた。
「お義父さんが元気だった頃は、よく二人で旅行してたんです」
ダンボールにバッグを入れながら、お嫁さんが話してくれた。
圧縮袋に衣類を入れるとき、吉田先生から指示が入る。
「ぞんざいな扱いはしないでね。丁寧にたたんで重ね入れて、圧縮をかけて欲しいの。入れ方が雑だとね、自分もそう扱われてるんじゃないかって思われちゃうから。もし、逆の立場だったらそう思わない?」
なるほど。確かに整理してもらっても、くしゃくしゃに詰められた圧縮袋見たらガッカリするだろう。キレイに折りたたんであったら、
「ああ、ホントちゃんと片づけなきゃいけないな。迷惑欠けちゃったな」って思う、きっと。
「それからね、詰めた物はどこにあったかハッキリさせておいてね。ダンボールにも圧縮袋にも、マジックで場所を書いて置いて欲しいの。私たちだって、使おうとした物があるはずの所にないと困るでしょ?」
ダンボールと圧縮袋が床の間に徐々に積み上げられていく。
「お姑さんが大切にしているものは、私たちにはわからないのよね。勝手に判断して捨てちゃだめなの。捨てるか捨てないかはお姑さん自身に判断してもらわなきゃいけないの」
少しずつ片付いていく部屋を見ながら、
「誰だって、若いときはあるの。おばあちゃんだっておじいちゃんだって、子供時代や恋多き青春時代はあったのよ。過ごしてきた人生の中には、いっぱいいっぱい思い出があるの。結婚した時、子供が生まれた時、成長していく子供たちを見ながらいろんなことがあった。それらは物を通して記憶されてるの。だからね、親の部屋の片づけをするときは愛と感謝と尊敬の念を持って進めることが大切なの」
吉田先生は優しい笑顔で、こう言った。
いろいろな人のお片付けを手伝ってきた吉田先生ならではの、心に染みる言葉だった。
(今回取材させて頂いて感じたこと)
若いときにはなんでもシャキシャキできたし、できなくなる自分を想像しもしなかった。でも、誰だって同じように歳をとる。生まれたときから止まらないエレベーターに乗っているようなもの。お金持ちでも貧乏人でも、人間でも動物でもみんな一緒。
だから、歳を重ねることを楽しむためには先を考えながら今を生きることが大切。お片づけも同じで先延ばし先延ばしにしていると、やがてできなくなるときがやって来る。少しずつでもできる所からやっていくことが必要なのかもしれない。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
次回は、吉田先生に教えてもらった、「片付けには意外な効果がある」ことお話ししまーす。
お楽しみに!