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【HSBG】「APM構成」って何?という人のための解説書

全国1億人のバトグラプレイヤーの皆さん、こんにちは。rinkと申します。
最近はバトグラ観戦おじさんとして右の盤面で暴れることを日課としています。バトグラを全然プレイしないくせに、たまに記事を書きます。

2024年6月現在のVer.29.4.3では、前環境まで幅を利かせていたキルボアやドラゴンが弱体化し、環境に大きな変化がもたらされました。そして現環境に関して、とある単語を耳にすることが多くなりました。

「現環境はAPM構成が強い」
「エレ海賊がいるならAPMを狙いたい」

そう、「APM」です。この突如降って湧いた謎のアルファベット3文字に困惑した初心者の方も多いのではないでしょうか。

まあ、コインカーブを俗称で呼んだり、タイタスをいつまでもバロンと呼んだり、ミニオンを鳴き声で呼んだりするバトグラプレイヤーのことなので、ヘンテコな言葉が自然発生することもあるわけですが、この「APM」という言葉にはそれなりの歴史と、今環境でよく使われるようになった歷とした理由があります。

というわけで今回は、バトグラにおける「APM構成」について、その歴史とともに解説していきます。なお、「現環境でのAPM構成の組み方」とか、そういう攻略方面の解説はあまりしないので、あくまで読み物としてお楽しみください。


「APM」とは?

「APM」とは「Actions Per Minute」の略で、「一分あたりの操作回数」を表す、アクションゲーム等でプレイヤーの技量を測る際に使われる用語です。

ハースストーンにおいては元々王道(構築)モードにおいて使われていた言葉で、1ターンに法外な枚数のカードを一気に使うデッキタイプを指します。1ターンの制限時間に間に合わないほどの操作量が必要で、カードゲームでありながらプレイヤーの操作速度を要求することから名付けられました。若干皮肉めいたニュアンスも感じますね。

バトグラにおいても概ね同様の意味で、1ターンに使い切れないほどの量のゴールドを得ることができ、かつミニオンの売買等の操作量が極めて多いタイプの構成を指して「APM構成」と呼びます。

要するにひたすら売り買いして「時間ない!!時間ない!!」と喚きながらやるタイプのアレ、と考えていただければ概ね合っています。


APM構成の歴史

APMの元祖、ホガァァァ船長

つい最近までのバトグラにおいて、APM構成といえば海賊の専売特許、もっと言えば【ホガァァァ船長】(以下ホガァ)の代名詞でした。

APMの象徴

今ではヒーローに昇格(?)した彼ですが、かつては海賊種族を代表するグレ5ミニオンとして君臨していました。

単体では海賊を安く買える程度の能力しかありませんが、複数集めると効果が重複し、ゴールデンになると海賊を買うと2ゴールド帰ってくる=全ての海賊を差し引き無料で購入することができるようになります。

さらに「金ホガァ+ホガァ」という形を作ると、海賊を買い売りすると逆にゴールドが増えるという現象が発生します。これにより時間が許す限り無限に海賊を買い売りすることができるようになり、【義足の義賊】や【南海の剛腕暴動者】で莫大なバフをするのが主な戦法でした。

ホガァとニコイチすぎて一緒に消えた人


APMという概念の誕生とその強み

ホガァの登場以前も操作が忙しい構成は存在しましたが、その中でホガァ構成が「APM」と称された理由は、本来縛られるはずのゴールド量の制限から完全に解放され、操作可能時間と操作速度がものを言うバトグラ史上初めての構成だったからです。

例えばゴールデンの【ブラン・ブロンズビアード】を使った構成は異常な操作量を要求されますが、ゴールドを増やすことができる雄叫びミニオンが酒場に並ばなければ、無限にサイクルを続けることはできません。一方でホガァは何でもいいから海賊さえ並べばいいため、ゴールドをサイクルするための酒場の要求値が極端に低く、再現性が高かったのです。

また、この「ゴールドが無限に使える」という特性はすなわち「理論上、欲しいミニオンを必ず手に入れることができる」ということでもあります。毎ターン相手の編成に応じてメタカードを探すことも容易で、剛腕のバフを倍加させるためだけに酒場フェイズごとに貴重なブランを使い捨てるなんて光景もザラでした。

しかもこのシステムはホガァ2体分のわずか2枠で組むことができるのも破格でした。ホガァでお金を用意した上で【オメガ・バスター】を使った通称「エクゾディア」編成を作ったり、横で【魔力のアスペクト・カレクゴス】や【茶人シオター】等を併用してバフを加速したり、何でもやりたい放題です。

もちろんグレ5のミニオンであるホガァを大量に集めることは容易ではありませんが、海賊には味方の海賊をゴールデンにできる能力を持ったミニオンが度々追加され、環境を経るごとにAPMのハードルは下がっていきました。飛び抜けて強力な編成がいない安定した環境においては、ホガァ編成は間違いなく最強の編成であり続けました。


ホガァ退場と新たなAPMの誕生

永らく海賊編成を支え続け、プレイヤーから愛されそして恐れられたホガァァァ船長でしたが、2023年5月のアップデートに伴うミニオン入れ替えで、ついに酒場から姿を消すことになりました。

代わりに新たに追加された海賊のAPM要員が、皆さんお馴染みの【艦隊提督テティス】です。ホガァと比べるとインパクトが薄い彼でしたが、蓋を開けてみればこれはこれで強くて結局ナーフされた、というのはまた別のお話。

最初は8ゴールド消費でした

さて、海賊は全体的なリワークにより、強力ではあるものの無限リソースとはいかなくなったのですが、その影でとある種族にAPMの波動を感じるミニオンが実装されました。それがエレメンタルの【突風トランペッター】です。

いつか帰ってきてくれないかなぁ

実装当初は「エレメンタル6体売却」という重すぎる条件からまともに使えない雑魚ミニオンという評価だったのですが、大量に集めることができればAPMが可能というホガァに近い特性があることは注目されていました。

そして、上記画像のように「5体売却ごとにエレメンタル獲得」にバフを受けたことで、ゴールデンを2体並べればほぼ無限にエレメンタルを売却し続けることができるようになり、一気に最強の構成に成り上がりました。新たなAPM構成、トランペッター構成の誕生です。

この編成がホガァと比べて優れている点は、手札のエレメンタルをひたすら売却するだけでリソースが手に入り、ゴールドを増やすためにミニオンの購入やリロールをする必要すらないため、時間効率が極めて高いということでした。ゴールドではなく時間がリソースになるAPM構成においては、操作の単純さと時間効率は何よりも重要です。

さらには、ホガァ構成が義足や剛腕といった操作量に対してバフ効率の悪いスケーリング手段を用いていたのに対して、トランペッター構成は同じ時期にバフを受けた【ロックンロック】と非常に相性が良く、時間あたりのバフ量は天と地ほどの差がありました。

あまりに強すぎたためか、トランペッターは次シーズンへの切り替わりの際ミニオンプールから退場してしまいます。インフレが進んだ今振り返っても、さすがにバトグラの基礎概念から外れすぎた存在だったなあと思えてしまいますね。


トランペッター亡き後のAPM構成

トランペッター以後、完全な無限リソースとなる構成は登場していませんが、先述したテティスを軸とした海賊は豊富なゴールドでAPMに近い動きをすることができます。また、シャダウォックとジャンディス・バロフの専売特許であった「雄叫びの再利用」が容易に可能になったこと、さらに強力な雄叫びミニオンの追加によって、ブランを用いた構成はリソースの供給力を大幅に上げました。

ずっと両隣だったのが信じられない

これらのミニオン性能のインフレに加えて、クエストや異常といった要素の追加により、無尽蔵とはいかなくとも、1回の酒場フェイズの時間内では使い切れないくらいのゴールドが供給されることは珍しくなくなりました。昔のAPM構成はゴールドを真の意味で無限に使える構成でしたが、現在のAPM構成は酒場フェイズを目一杯使っても尽きないくらいのゴールドを毎ターン用意できる構成といえます。無限リソースに頼らなくても、同等のことができてしまうくらいにインフレが進んでしまったのです。


さて、ここまで散々APMの歴史を語ったわけですが、ようやく本題です。

  • どうして急に「APM」という言葉が多用されるようになったの?

  • どうして今の環境はAPM構成が強いの?

これらの疑問に答えていきましょう。

急にAPMって言葉が出てきたのは何故?

上述のAPMの歴史について、当時を知っている方でもこのような疑問を持った方は多いのではないでしょうか。

「え?その頃APMなんて言葉聞いた覚え全くないんだけど……」

はい、その通りです。日本のバトグラコミュニティでは、「APM」という言葉は認知はされていても、あまり使われてはいませんでした。海外ではわりと一般的な呼称でしたけどね。

王道プレイヤーにはしっくりくる「APM」という単語ですが、構築をプレイしたことのない人も多いバトグラプレイヤーにとっては、全く馴染みがなく意味の通じない言葉でした。

それに、過去にAPMと呼ばれた構成は「ホガァ」「トランペッター」のように軸となるミニオンが存在しており、わざわざAPMなどという単語を使わなくても、「ホガァ構成」のようにミニオン名で呼んでしまった方が伝わりやすいというのも、APMという呼称が使われなかった要因だと思われます。

一方で現在のAPM構成は、リソースを供給するミニオン・バフシステムとなるミニオンともに複数の種類が存在し、その組み合わせも多岐にわたります。それにもかかわらず、その特性はどれも同じく「大量に売買を繰り返してバフをする」というものです。

そこで、これらの「使っているミニオンはそれぞれ違うけど、やってることは同じ構成」を一括りにして呼ぶ名称として、「APM構成」という言葉を使うのが最適かつ便利だったのです。

どうして今APMが強いの?

1.操作あたりのバフ効率が高い

かつてのホガァ構成が狂ったように海賊を買い売りしなければならなかったのは、ゴールドを増やすために売買が必要なことに加えて、使用するゴールドに対してバフへの変換効率があまりにも悪かったからという理由があります。だって3ゴールド使って3/3バフとかですからね。

それと比較すると、現在のAPM構成のバフ手段は、奇数・偶数カードであれば何でも全体バフになる【月を食らうものの勇者】【グレイメインの勇者】をはじめとしてバフのトリガーが非常に緩く、ゴールドを循環させるだけで意識せずとも自然にバフが進む上、一操作あたりのバフ量に優れています。特に【グレイメインの勇者】と【ロックンロック】は併用することでバフの恩恵を同時に受けることができるなど、これらのバフミニオンを容易に組み合わせることができるのも、今までのAPMにはなかった点です。

さらに、「呪文」というシステムの登場もAPMにとっては追い風です。「購入→場に出す→売却」という手順を繰り返す必要があるミニオンカードと比べて、呪文は使うために必要な操作量が少なく済みます。時間あたりの操作量を求められるAPM構成にとって、これは侮れない利点といえるでしょう。

2.自動バフ構成にバフ量で負けない

APM構成はゴールドが無限に近いとはいえ、時間というリソースに限りがあるため、毎ターンのバフ量に限界があります。そのため、キルボア編成に代表される「ターンを経るごとに自動的にバフ量が増加する編成」にいつか物理的に追いつけなくなるという弱みがありました。

ちまちまやってる場合ではなかった

現に、キルボア・ドラゴンがナーフされる前の環境ではAPM構成はこれらのバフ速度に追いつけず、立場が悪かったです。これらの構成が大きく弱体化したことで、バフ量で張り合えるようになったことが、今期のAPM構成が躍進した最大の理由です。

また、現在のAPM構成は「バフ速度が頭打ちになる」という最大の弱点をある程度克服しています。その鍵となるのが【シェレメンタル】【貪り喰らうものとの交信】【ノロイタケ】【成長する氷霜】です。

どうして永続なんですか?

【ノロイタケ】は酒場の呪文の使用、【成長する氷霜】はエレメンタルの使用という、APM構成では自然と大量に行うことになる行為によって酒場で成長続け、【シェレメンタル】【貪り喰らうものとの交信】のバリューをターンを追うごとに増加させていきます。これによって、APM構成も時間経過によって加速するバフ要素を手に入れることができたのです。

3.参入するルートが複数ある

かつてのAPM構成は、ホガァやトランペッター、ブランやテティス等、リソース供給力に優れたごく一部のミニオンを入手することで初めて参入することができるものでした。

しかし現在の環境では、前述の通りリソースとなるミニオンが非常に多いです。【ロック・ジョン・カッパー】【艦隊提督テティス】等の直接ゴールドを提供するミニオンに限らず、【貝笛師】や【酒場の逆巻き風】は雄叫び発動系のミニオンと組み合わせることでリソースを継続して入手できますし、【回転式ラス・オ・マティック】等呪文という形でリソースを得られるミニオンもいます。

豊富な人材

さらに、リソースをバフに変換するミニオンも選択肢が広いです。例えば早期に【呪縛の船乗り】を2枚手に入れることができたなら、すでに多くのリソースを入手する算段がつきます。ここから欲しいミニオンの理想としては【救世主ナラァ】ですが、【月を食らうものの勇者】でも妥協できますし、何なら【時賊船長フックテイル】がすでに引けていればそれだけでもそれなりの盤面が作れます。

見た目以上にやるやつ

これはすなわち、APM構成に移行できるミニオンを入手できる可能性が、以前までと比べて飛躍的に高まっているということです。酒場にどんなミニオンが並ぶか基本的に運任せなバトグラにおいて、単純に組める可能性が高い構成というのは、それだけで強みがあるのです。


余談etc.

APM構成を回すコツ

正直、私は操作速度が遅い&反射神経が絶望的なせいでAPMが大の苦手であり、あまりアドバイス的なことをできる立場にないのですが、初心者の方は以下のようなことに気を付けると安定すると思います。

  • 必要なカードを即座に判断できるように、ミニオンや呪文をひと通り覚えておく

  • このターンの最終盤面をどうするか考えながら回す

  • 操作の合間に対戦相手の情報を確認し、必要なメタカードを準備する

  • ミニオンの入れ替え枠にとりあえず入れられる即戦力ミニオン(リロイ等)を1体確保する

  • たとえ手札やゴールドが余っても、数秒の余裕を持って操作を終了し、盤面の配置を優先する


端末スペックについて

APM構成の最大出力は、プレイする端末のスペックに左右されます。処理速度の遅いパソコンやスマホを使っている場合、高性能端末を使うプレイヤーのAPMにはどう足掻いても勝てません。Pay to Win

一般的に、パソコンの方がスマホよりも処理速度が早いため、APMはパソコンの方が有利と言われていますが、高性能なハイエンドモデルのスマホであればパソコン並の処理速度を出せるものもあります。そのような端末を使えるのであれば、操作性の面で有利なスマホの方が回すスピードが早くなります。

APM構成を気持ちよく回したいなら、性能の良い端末を用意することも一考です。バトグラのためだけに高額な機器を購入するのもアレですが……。


タスクキルについて

APM構成は酒場フェイズの時間がそのままリソースになるため、酒場フェイズの制限時間が長い方が有利になります。そこで、アプリケーションのタスクキル(再起動等)を行うことで戦闘フェイズをスキップし、酒場フェイズを長くするという行為がしばしば行われます。

この行為は決してBAN対象になるような不正行為ではないのですが、公式の世界大会では禁止されており、運営側が想定したプレイングでもないため、グレーに近い技と言えます。しかし一方で、APM構成同士が対戦する場合、タスクキルをした方が圧倒的に有利になるため、レート戦でタスクキルを使用しないのは損にしかなりません。配信者やコミュニティの間でも、大会以外でのタスクキル行為は容認される傾向にあります。

果てはデッキトラッカーのプラグインにも、ボタンをクリックすると瞬間的にゲームの接続を切断する機能を持ったものまであります。(これについては個人的には黒に限りなく近いグレーだと思っているので、オススメはしません)

こういった行為を推し進める形になってしまったのは、APM構成の生み出した影の部分と言えるかもしれません。


おわりに

今回も大変な長文を書いてしまいました。ここまでお読みいただきありがとうございます。

バトグラというゲームには気持ちのいい瞬間がいくつもありますが、やはりAPM構成を回している時の全能感は格別です。バトグラの華ともいえるAPM構成を存分に味わえる今環境、是非あちょあちょしながら楽しんでください。

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