「フットボールで繋げる」 小池純輝選手(東京ヴェルディ)とF-connectの社会貢献活動の歩み
今シーズンプロ生活16年目を迎えた小池純輝選手は、ここまでJ2リーグ3位の11ゴールを叩き出し、所属する東京ヴェルディを牽引しています。そんな小池選手は一般社団法人 日本プロサッカー選手会の理事(副会長)や、一般社団法人 F-connectの代表を務めているなどピッチ外でも活躍をしていることはご存知でしょうか?
2015年に小池選手が設立したF-connectは、”フットボールで繋げる、フットボールが繋げる”というコンセプトの下、積極的に社会貢献活動を行なっています。また設立初期より毎年ヨコハマ・フットボール映画祭(以下:YFFF)にてグッズ販売やブース出展をしてくださっており、今年の10月に開催予定のYFFF2021にも参加予定です。
そして代表である小池選手自身も会場に足を運んで来場者との交流を行ったり、昨年はYFFFアワードの審査員を務めてくださるなど、F-connectとYFFFは切っても切れない関係になっているのです。
ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジンでは、小池選手へのインタビューを2回に分けて掲載!前編となる今回は、F-connectのこれまでの歩みや、YFFFとの関係を振り返っていただきました。
(2021年6月24日 オンラインにて取材)
プロサッカー選手が主体的に行動 F-connectの社会貢献活動とそれが選手たちに与える影響
ーーF-connectはこれまでの主な活動と、活動の中で意識したり大切にしていることを教えてください。
小池 メンバーであるプロサッカー選手たちが児童養護施設※を訪問し、そこで生活をする子どもたちと交流をしたり、その子たちをスタジアムに招待する活動がベースです。現在は新型コロナの影響でなかなかリアルでの交流ができていない分、オンラインでの訪問活動を行っています。また活動に関しては、名前に"connect"とあるように、繋がりをすごく大切にしているので、実際に施設に足を運んだり、子どもたちに会うことを意識しています。
※保護者のいない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設(児童福祉法第41条より)
施設で生活をする子どもたちは親と一緒に生活できず、さらには基本的に18歳で施設を退所しなければならないため、一般的と言われている子どもたちが当たり前に受けているような親からの支援を受けることができません。そのため大学進学を諦めたり、就職後に壁にぶち当たって辞めてしまう子が多いなど、自立がとても大変だという課題があることも聞きました。なのでこうした子どもたちと交流していき、サッカー選手になるという夢を叶えることができたF-connectメンバーの姿から「私も頑張ってみよう」といったように気持ちの変化を与えることなどで貢献ができればと思っています。
ーー組織としては何名ほどの選手がいて、どのような繋がりからメンバーが集まっていますか?
小池 OB含め11人の選手と、事務局でサポートしてくださっている方が1名います。僕や梶川諒太選手(東京ヴェルディ所属)のチームメイトから広がってき、活動に興味を持った選手が声をかけてくれるという形に少しずつなってきていますね。例えば日テレ・東京ヴェルディベレーザの村松智子選手は、クラブハウスで食事をしている時に活動に興味があるということでお声がけいただき、今年からメンバーになってもらいました。
F-connectはクラブの垣根を越え、プロサッカー選手が集い社会貢献活動を行なっている(2019年の活動報告会にて撮影)
ーーF-connectの活動の中で難しい部分や、大変と感じたことはありますか?
小池 苦に感じたことはあまりないですが、強いて挙げるとすれば資金集めの部分ですかね。活動の継続や、幅を広げるためにはやはりお金が必要ですが、そこはまだまだ足りてない部分ではあるので応援してくれる人を増やすなど自分たちで事業を大きくしていくという課題があります。
ーー施設訪問や試合招待の調整は選手自身が行なっているとのことですが、詳細を教えてください。
小池 僕が開拓したという言い方はおかしいですけれども、一番最初に僕と梶川選手が訪問した施設の施設長の方に声をかけていただき児童養護施設の職員の皆さんが集まる場にお伺いし、一気に6〜7施設ほど交流できる施設を増やすことができました。僕が交流をスタートさせたという施設が多いですが、僕自身も移籍をしているので、一緒のクラブで活動しているF-connectのメンバーに引き継ぎをすることもあります。
メンバーである選手たちは、訪問にあたり施設の方と連絡をしてアポイントを取って名刺交換をしたり、当日も子どもたちの前でお話をするというちょっとしたビジネスのワンシーンのようなことを経験しています。これらの経験はサッカー選手としてはなかなかできないことですので、活動の魅力かなと思います。
ーー小池選手が社会貢献活動に興味を持ったきっかけと、F-connectを設立した経緯はどのようなものだったのでしょうか?
小池 2014年の8月に当時所属していた横浜FCのクラブスタッフの方から、交流のある児童養護施設に訪問してもらえないかとプライベートでお願いされて、当時湘南ベルマーレにいた梶川選手を誘って一緒に訪問したことからですね。その時は「一緒にサッカーをするくらいでいいかな?」という軽い気持ちで行ったのですが、子どもたちから大歓迎を受けてシンプルに嬉しい気持ちになりました。またその後、施設の子どもたちがスタジアムに来てくれた際、勝敗関係なく90分を通して「小池選手頑張れ!」と応援してくれたことが嬉しくて、今度は僕と梶川選手から施設に声をかけてシーズンオフに訪問をさせていただくことになりました。
初めての訪問で交流したのは幼い子どもたちだったので、久々の再会となる2回目の訪問の際に忘れらていないかという不安な気持ちがあったのですが、初めて会った時のように近づいてきてくれました。こうした経験もあり僕と梶川選手で「サッカーを通じて何かできないか」ということを話して、初訪問から半年後くらいにはF-connectと名前をつけて活動を始めたという感じですね。
ーーちなみにこれまで大体どれくらいの施設に訪問し、何名くらいの子どもたちをスタジアムに招待していますか?
小池 移籍したことで交流ができなくなってしまった施設を含めればもっと多いですが、常時繋がっているのは20施設くらいです。またスタジアム招待に関しては昨年は全くできなかったのですが、一昨年は250枚くらいのチケットを用意して招待させていただいたという感じですね。
ーー訪問の際、子どもたちからはどのような反応があり、また選手たちにとってそれがパフォーマンスにどのような影響がありますか?
小池 選手をしていてこの活動はプラスしかないかなと個人的には思っています。子どもたちは素直なので訪問した際に「試合に出てるの?」とか「ゴール決めてるの?」とか僕たちに平気で聞いてくるんですよ。だから「頑張らないと」という気持ちになりますし、「招待する試合には出たい」というモチベーションになるので良い作用になっていますね。
2019年の訪問活動の際の様子。サッカー以外にも食事などを通して交流を行っている
F-connectとYFFFのコラボの始まりとは?
ーーここでYFFFと繋がりが生まれたきっかけを振り返っていただければと思います。
小池 僕が横浜FCに所属している時に繋がりをいただきまして、そこから毎年出展させていただいているのでかれこれ6、7年の付き合いになります。
福島成人(YFFF実行委員長) しっかりと活動が定着してもらいたいという気持ちと、自分の応援しているチームの選手が良いことをやっているのでそれをもっと知ってもらいたいという二つのことからどんな活動をしているのか聞きたくて連絡しました。そしたら小池選手が気さくに話してくださりました。まずトートバッグやTシャツの販売からですね。
小池 1人で300枚のTシャツの発送作業をしたりしていた所から活動をスタートしていたので、僕たちのことを知らない層の方にリーチできるということと、F-connectのことも応援してくれて僕たちのことも応援してくれるということが理想的だと思っていたので、そのきっかけ作りをしてくださったのでありがたかったですね。
福島 映画祭としてもそれまでは割とサッカーカルチャーが好きな方が集まってくれる場だったのですが、F-connectのグッズをお預かりして販売することで選手のファンの方たちが来てくれるようになったのでお客さんが広がったということもあります。
ーーそれまでにYFFFのようなサッカー関連のイベントに出展する機会はありましたか?
小池 それまで横浜市立みなと総合高校サッカー部の皆さんとの合同チャリティーサッカーをやらせていただいたことはありましたが、サッカーイベントへの出展はないですね。最初にYFFFさんに出させていただいき、それからサッカーの繋がりで愛媛の図書館で展示をさせていただいたり、渋谷のマルイさんでポップアップショップをやらせていただいたりするようになりました。
ーーYFFFにはクラブの垣根を越えて様々なクラブのサポーターや、サッカーの楽しみ方をされているお客さんがいらしています。実際に小池選手が会場でこうした方々とコミュニケーションを取る中で感じたことがあれば是非お伺いしたいです。
小池 色々な方が商品を手に取ってくれたり気にかけてくれてそこでコミュニケーションが生まれたり、サッカーというツールを通して全然知らない人同士が繋がったり、「こんなにもサッカーは愛されているんだ」という気づきが生まれました。今はこういうご時世なのでなかなか難しいですが、オフラインで顔を合わせてコミュニケーションを取れることは素敵だなと思いました。
ヨコハマ・フットボール映画祭2020の会場にて
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後編ではF-connectが新たにスタートさせたプロジェクトや、小池選手の考える未来について語っていだいています!次回もお楽しみに!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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