見出し画像

コロナ禍での新たな挑戦 そして代表・小池純輝選手が見据えるF-connectの未来とは?

小池純輝選手(東京ヴェルディ所属)が代表を務める一般社団法人 F-connectにはクラブの垣根を越えてOBを含め11名のプロサッカー選手が所属し、児童養護施設への訪問やそこで生活する子どもたちのスタジアムへの招待を中心に2015年の誕生からこれまで社会貢献活動を積極的に実施していました。しかし世界中を襲った新型コロナウイルスはF-connectの活動にも多大な影響を与えており、従来のようなリアルでの訪問活動ができないなどF-connectは厳しい状況下に置かれています。ただそんな中でも彼らは新たなプロジェクトをスタートさせるなど、歩みを止めませんでした。

ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン、第22回は小池選手のインタビュー 後編をお届けします。後編ではコロナ禍でのF-connectの新たな挑戦についてはもちろん、小池選手が見据える未来について語っていただきました!
(前編はこちら
(2021年6月24日オンラインにて取材)

コロナ禍での活動と新プロジェクト

ーーコロナ禍ではリアルでの訪問活動やイベントというものは全く行えていないのでしょうか?またオンラインとオフラインでのコミュニケーションの違いは何か感じましたか?

小池 昨年末に横浜市立横浜南高校サッカー部の皆さんとクリアソンさんと一緒にやらせていただいたチャリティーサッカーには児童養護施設の子どもたちを招待することはできましたが、訪問は全てオンラインです。ただこの状況下でも子どもたちと繋がれるということで繋がりの強さというものを感じましたし、逆に今オンラインでコミュニケーションが取れることによってオフラインで会った時の価値がより高まるのではないかということは感じています。コロナの中でもできることは少しずつ増えてきていると思うので、イベントや訪問活動ももう少ししたら再開させていきたいなと思いますね。

画像4

昨年も実施したチャリティーサッカーは、F-connect創設時からの恒例イベントだ

ーーこうした状況でもF-connectは昨年の10月に「ユメイク」、今年の4月に「エフコネファーム」と新しいプロジェクトをスタートさせています。この活動について詳しく教えてください。

小池 まずユメイクは、僕たちがサッカー選手になるという夢を叶えた中でいつ・どのように夢を抱いたかということや、その夢の途中で上手くいかない時期や失敗をどのように乗り越えたのかという経験を子どもたちに伝えるプロジェクトです。名前は「”夢”を”育”む」ということと、「You make the future」の「You make」をかけてこの名前にしました。
エフコネファームは長野県の上水内郡飯綱町に作った畑に子どもたちを招待して野菜の収穫体験をしてもらい、バーベキューやサッカーを一緒に行う場を提供するものです。

ーーまず、エフコネファームを始めようと思ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

小池 愛媛FC在籍時に知り合いの畑をお借りして野菜作りをした経験もあるなど、僕自身元々農業に興味がありました。その時に育てて収穫した大根やほうれん草は決して綺麗なものではありませんでしたが、不格好な野菜でも作る過程に携わり育っていく段階を知ることで自然の力や生きる力を学べて、そこに価値があると僕は感じ取っていました。
また、畑作業の後は必ずバーベキューをしていたのですが、そこに地域の人たちが集まって自然と地域交流が生まれていました。畑で美味しい野菜を作ること以上に、実際に自分で作った野菜を食べて飯綱町の人たちと交流することに価値があるのではないかと思っていますね。

ーー収穫のイベントはいつ行う予定ですか?

小池 7月に児童養護施設の子どもたちを招待して1泊2日のイベントを行う予定です。1日目の夜にユメイクの活動を行って、2日目の朝にとうもろこしを収穫してバーベキューやサッカーを一緒にやろうを考えています。そのためにクラウドファンディングをやらせていただき、目標金額を達成することができました。
(※7月22日〜23日にイベントを実施予定でしたが、緊急事態宣言発令に伴い中止に)

ーーこのクラウドファンディングの準備や、パートナー、畑の土地探しなどは選手たちご自身で行われたのですか?

小池 畑についてはこの企画のパートナー企業である現地の株式会社I.D.D.WORKSさんに基本的に全てお世話になっています。クラウドファンディングについては事務局主導で準備を行い、僕たちは知り合いの方に声をかけたりSNSでの情報拡散をベースに活動していました。

画像3

畑の準備を進める小池選手と梶川諒太選手(東京ヴェルディ所属)

ーーまたヴェルディのホームゲームの際、エフコネファームの活動を紹介しているボードが置かれている写真をTwitterで拝見しました。

小池 あれは僕の全然知らない所でサポーター団体さんがやってくれたものです。僕は日頃から「応援してくれている人との接点を増やしたい」という想いでずっとSNSでの情報発信など色々な活動をしていて、例えば試合に負けた時こそサポーターは「選手がどういうことを思っているのか」ということをを知りたいと思っているので、その時も必ず自分の言葉を発信してきました。こうした積み重ねも紐づいているのかなとは思います。

ーー次にユメイクを始めることになったきっかけを教えてください。

小池 ユメイクを始めたいと思ったきっかけは二つあります。一つは試合招待とは違った角度から子どもたちにアプローチができればと思ったことです。スタジアムに招待した子どもがすごくサッカーを好きな子であれば何かを感じ取ってくれるかもしれないのですが、その他の子どもたちには刺さるのかな?という気持ちがありました。そんな中、サッカー選手になるという夢を叶えた経験を伝えるということも僕たちにはできるのではないかと思ったことから始めました。

そしてもう一つは、メンバーである選手たちのトレーニングにしていきたいということです。まだ僕だけしかユメイクの活動は行えていませんが、今後他のメンバーにも各々のユメイクを作ってもらいたいと考えています。それを通して自分の経験や想いを言語化して、それを子どもたちに伝えていくというトレーニングですね。

ーーユメイクの活動自体これまでどのくらいの施設で行ってきましたか?

小池 昨年1つの施設でやらせていただき、小学6年生から中学2年生までの2〜30人ほどの子どもたちに参加してもらいました。まず30分ほど僕がお話をさせていただき、その後ユメイクシートというものに自分の好きなことをどんどん書き出したり、実際に夢を設定してみてその途中の目標を今できることを書き出して夢について考えるという時間にしました。

ユメイク

オンラインで実施したユメイクの授業の模様

小池選手の見据える未来

ーー結果が出ないと「プロだったら競技だけに集中しろ」という声が選手に対して発せられるという風潮がこれまでずっとあったと思いますが、長い間SNSでの情報発信や、社会貢献活動を行いながら選手としても花開いた小池選手は理想的なモデルケースを実現されているのだなと今日お話をさせていただいて感じました。今後小池選手のように社会貢献活動を行う選手たちに対して心ない言葉をかける人がいても、「いやいや、小池選手という例をご存知ないですか?」と言えることは本当に素晴らしいなと思いました。

小池 「F-connectの活動をしているから試合に出られないんだよ」と言われたくないということもモチベーションの一つですし、逆に僕自身、今は「この活動を行っているから結果を出せているんだ」と言えると思っています。とはいえそんな言葉をかける人たちが一定数いたとしても、彼らが僕の未来を助けてくれるわけではないので、最終的に自分自身が決めることだと思います。だから自分がやりたいと思ったことであるならやるべきだと思いますし、それがぶれてしまうと良くないので最終的には自分がどうしたいかだと思いますね。

ーー最後に小池選手が今後F-connectをどういう団体にしていきたいということと、1人のサッカー選手としてどのようなキャリアを歩んでいきたいかというピッチ内外の抱負を教えてください。

小池 まずF-connectに関しては2人で始めた所から仲間も11人に増え、クラウドファンディングなどで色々な人に知ってもらうことができていますが、もっとその輪を広げて強固にしていきたいという想いがあります。子どもたちに対してどのような影響を与えたかということは可視化することは難しいと思いますが、関わってきた子どもたちが大きくなった時に「あの時小池選手たちが会いに来てくれたな」と振り返ってくれれば良いなと思います。あとは例えばエフコネファームに参加してくれた子どもが興味を持ち、将来農業の仕事をしたいということでエフコネファームに働いてくれたするなど、18歳の課題(※前編参照)に自分たちが何かアプローチできればということが今後の展望です。

選手としてはできる限り長く現役でプレーしたいと思っていますし、僕がF-connectの活動を経て感じたアスリートの価値やフットボール・スポーツの価値をピッチ内外で伝えていける存在になりたいと思っています。もちろんサッカー選手であればピッチ上で活躍することが最優先事項ですが、アスリート・現役選手だからこそ与えられる影響はあると思うので、それを大事にしながらサッカー選手という枠を超えて様々な人に伝えていきたいですね。

画像2

==================================
今回の小池選手へのインタビューは、私に気づきや学びを与えてくれたものになりました。例えば児童養護施設で生活して高校卒業を迎えた子どもたちは高校卒業者の大学や専修学校などへ33%しか進学できていないという厚生労働省が発表した数字は、今回のインタビューをきっかけに学んだことです。近年では推薦入試や奨学金などでが少しずつ環境が変わり、児童養護施設の子どもたちの進学率が微増しつつありますが、日本全体の高卒生の進学率が74%であることと比較すると大きな差があることが分かるかと思います。そんな現実を目の当たりにし、小池選手が話していた「18歳の課題」という言葉の意味の深みが増し、そして「自分はこんなにも恵まれた生活ができていたんだ」という気づきにも繋がりました。

F-connectの選手たちのようにアスリートが社会貢献活動を主体的に行い、その情報を自身で発信する姿は、今回の私のように気づきや学びの機会を与えたり、「社会課題を解決したい」「活動を応援しよう!」という気持ちを芽生えさせるきっかけになるはずです。F-connectの活動の輪がもっと広がり1人でも多くの人に影響を与えることはもちろん、小池選手たちのようにフットボールやスポーツの力を発揮し、社会にポジティブな影響を与えてくれるアスリートが多く生まれることを心から願っています。

今回の記事を通してF-connectの活動が気になった方や、「応援したい!」と感じた方はホームページや、公式Twitterを是非ご覧ください!

最後までお読みいただきありがとうございました!
この記事が気に入った方は、ぜひスキ💗をポチッとしてください!
また、ヨコハマ・フットボール映画祭 公式noteマガジンでは、サッカーや映画に関するコンテンツを発信していきます。
いち早く更新情報が知りたい方は、コチラからフォローをよろしくお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?