#9 韮崎さん(タレコミ編)

#9 韮崎さん(導入編)はもうお読み頂いただろうか。
ここからはスタッフからの韮崎さんに関するタレコミを紹介する。


No.1 大和くんからのタレコミ

#1小田さんのお気に入りボーイの一人、大和くんが韮崎さんと初対面の時。
その日シフトが一緒になる人達との待ち合わせ場所に着き、韮崎さんに初めましての挨拶をした。まだあと一人到着していないということなので、大和くんはトイレに向かった。
しばらくして大和くんがトイレから戻ると、韮崎さんはマジマジと大和くんを見つめこう言った。
「初めまして。韮崎と、申します。」
はっきりと、ゆっくりと、噛み締めるように。

(一回視界から消えたらリセットされるん?!)
(こわ!!)
(韮崎さんてダチョウなん?!)
by小田さん


No.2 私からのタレコミ

韮崎さんはレアキャラなので、そんなに頻繁に会える訳ではない。

私は当時、その派遣バイトの他にもバイトを掛け持ちしていた。私がその掛け持ちしていたバイト先で働いていた日、その商業施設がポイントアップデ期間中だった。ポイントアップの時期だけ新規入会者専用の特設カウンターができるのだが、そこにいつもの派遣バイトの皆が働いていた。
久々に会えるなぁ、今日はどんなメンバーかなぁとウキウキしながら向かうと、そこには韮崎さんと小田さんがいた。

……濃い………。

「お疲れ様です。」
私が声をかけると、
「おぉ!」
小田さんは突然現れた私にびっくりしていた。掛け持ちしていることを少し説明したところで、隣の韮崎さんにチラリと目をやる。たぶん韮崎さんは私のことを忘れている。
「あのー、私、横浜のポイントアプリのとこで何回か一緒になって…」
そう説明すると韮崎さんは、
「ァ"ア"ァ"ッッ!!!!!!!!!!!」
と発狂した。その声は商業施設のコンクリートの壁に反響して、辺り一帯に木霊した。

(トリケラトプスの鳴き声か!!!)by小田さん


No.3 #1小田さんのタレコミ

大手町でのポイントカードの仕事の時。
まだ韮崎さんがこの派遣会社での仕事歴が浅かった時だと思う。派遣会社の社員さんから事前に当日の服装や待ち合わせ場所などを知らせるメールがくる。そのメールで当日の服装について「男性は落ち着いた暗色のズボン(デニム不可)、ワイシャツ」と記載されていた。
小田さんが当日現場に着くと、黒いテロテロの光沢があるホストが着るようなワイシャツ?の下に、濃い紫のスキニーズボンを履いた楽しんごのような男性が立っていた。それが韮崎さんだった。初対面でそんなヴィジュアル系バンドのような格好の韮崎さんを見て、小田さんは「コイツ只者やない」と確信したそうだが、あまりにも…な服装だったため、韮崎さんはすぐ帰されてしまったそうだ。ちなみに韮崎さんはその格好について、社員さんに指摘されても「え?何がですか?」といういまいちピンときてないような反応だったらしい。


No.4 私からのタレコミ

韮崎さんのプライベートは謎に包まれている。
私はなんとなく、韮崎さんはパンクロックバンドをやっている気がしていた。明るめの茶色い髪。ほんのり焼けた小麦肌。その華奢な、栄養よりも夢を食べて生きてそうなスマートな背格好は、甲本ヒロトを彷彿とさせる。甲本ヒロトを楽しんごにした感じだ。そして極め付けは、耳たぶに見える3つの穴。

「韮崎さん、ピアス結構あけてるんですね。」
平日の閑散とした商業施設のフロアの隅で、ポイント特設カウンターの隣に座る韮崎さんに声をかけた。
「あ…まぁ…」
そう言って韮崎さんは自身の耳たぶを指先でサワサワ触りながら気まずそうに答えた。
ダメか。韮崎さんはやはりプライベートなことはあまり答えてくれないようだ。


No.5 また#1小田さんからのタレコミ

韮崎さんは雨の日は仕事を入れない。
バイトの前日、翌日に雨予報が出ていたら「明日は雨なのでバイトはお休みさせて頂きます。」というメールが派遣会社の人に届くそうだ。


No.6 #8中村くんからのタレコミ

ある日中村くんが大手町での仕事だった時。お昼はマックで食べることにした。
注文したものを受け取り、2階へ上がりカウンターで食べていた。しばらくすると視界の端に、見覚えのある面影が。振り返ってみるとそこには、ハンバーガーやポテトがのったトレイを持って空席を探す韮崎さんがいた。こちらに気づかず通り過ぎようとする韮崎さんに声をかけると、韮崎さんは「ゥワオッッ‼︎‼︎」と少し奇声を上げ、中村くんに気づいた。たまたま中村くんの隣が空いていたので、韮崎さんはそこに座った。
あ、意外に一緒に食べるんだ…と中村くんは思ったらしいが、満席っぽいのでまぁ仕方ないかなと思った。韮崎さんはなぜかその日よく喋る上に、あの大きな声なので「あの男の子、変な男性に絡まれてる…」という周囲の視線が恥ずかしくて、早くこの時間が終われと中村くんは願い、昼休憩なのに逆にめちゃめちゃ疲れたと言っていた。


No.7 #6大島さんからのタレコミ

ある日大島さんが休憩室に行くと、韮崎さんがいたのでそのテーブルに座った。気さくな大島さんは韮崎さんと色々会話をしたらしいが、とにかく韮崎さんの声がでかくて、静かな休憩室に韮崎さんの声だけが木霊してしまうので、声でかい!静かに!と韮崎さんに注意をすると、初めは小さくなるのだが、徐々にクレッシェンドしていって、すぐに元の声量に戻ってしまう。それを何度も繰り返し、途中から大島さんは諦めたそうだ。


No.8 たぶん#1小田さんのタレコミ

どこかのポイントカードカウンターで、韮崎さんが対応したお客さんが怒り出してしまった。理由は忘れたが、韮崎さんはどんな時でも頑なにマニュアル対応しかしない上に、カブくこともやめないので、クレーマーをヒートアップさせてしまう。(お客さんめっちゃ怒ってんのにずっとカブいててん!心臓つよ!毛ぇボーボーやん!!ここ歌舞伎座なん!?by小田さん)
周りのスタッフも入ってなんとかフォローし、まだ不服そうだがお客さんも帰るしかなくなり渋々立ち去った。
皆が「やっと帰ってくれる…」と胸を撫で下ろしかけた瞬間。
「お足元にお気をつけて、お帰り下さいませぇ!」
帰るお客さんの背中に向かって韮崎さんが口上を述べた。
(おいやめろやめろ!!お前もう喋んな!!!by小田さん)
お客さんの神経を逆撫でするのではと周囲のスタッフは焦ったが、お客さんが振り返ることはなかった。


改めて考えると、なぜ韮崎さんは所属していない派遣会社からわざわざ個人的に仕事がもらえるのか、よく分からない。
一つだけ確かなことは、私たちは韮崎さんを面白がっているので、会えなくなるのは困るということだ。

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