私たちのなかの”Less is more.”
今回は、デザインの学びのなかで気になった言葉について少し深掘りしたいと思います。
今回深掘りしたい言葉は、
『Less is more.(少ない方が豊かである。)』です。
有名な言葉だと思います。
Less と more という一見相反する概念をイコールで結びつけるのがキャッチーで印象に残りますよね。
でも実際「少ない方が豊かである」と言われても具体的にイメージできなかったので、色々調べてみた結果をまとめておきます。
※この記事を読むことで、「Less is more.」の意味を知ることができます。
個人的な理解と理由付けもありますので、あくまで解釈のひとつという認識で読んでいただけると幸いです。
“Less is more.”は誰の言葉?
“Less is more.”という言葉は、20世紀に活躍したドイツ出身の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉です。
という、建築家としての信念を表した言葉であるとされています。
しかしその言葉のキャッチーさや、本質を言語化した表現が相まって、現代でもエシカルやミニマルライフの信条として、大切なモノだけを必要とするような考え方の源流とも言われているようです。
彼はこのほかにも「God is in the details.(神は細部に宿る)」というモットーを掲げたことでも知られています。
日本文化との共通点
“Less is more.”という言葉は、シンプル・単純化・無駄を省くということで、美しさや豊かさが成立するという意味であることはわかりました。
そしてこの考え方は、日本文化における禅やわび・さびといった思想との共通点があるのではないかと思ったのです。
禅とは・・・
禅の思想は、かの有名なスティーブ・ジョブズにも大いに影響を与えたと言われています。
iPhoneやMacなどの革新的で洗練されたデザインには、無駄を削ぎ落とす禅の思想が背景にあるのでしょう。
わび・さびとは・・・
つまり、見た目の美しさがさびで、それを見出す心がわび。
さびれ・汚れ・欠けなどの「さび」を、そのもの特有の美しさとして受け入れる「わび」の心。
これが、説明しづらい日本特有の伝統的な美意識の背景であると言われています。
私たちのなかの”Less is more.”
話は戻り、ミース・ファン・デル・ローエは、わびさびの代名詞ともいえる日本庭園をみたときに、”Less is more.”を感じ取ったという説もあり、やはり日本に根付いた文化や思想とミニマリズムは近しいモノがあるといえそうです。
今回の登場人物であるミース・ファン・デル・ローエは建築、ジョブズはプロダクトですが、デザイン全般に同じ事が言えるのではないでしょうか。
つまり“Less is more.”という言葉には、「シンプルでなくてはいけない」とか「少ないことが良いことだ」というようなシンプル至上主義的な思想ではなく、細部までこだわり抜くことで最小限の情報で最大限の効果を発揮することこそが豊かさを実現するという美学であり、「少なくするため」ではなく「結果的に少なくなる」のであって、それは手段ではなく結果としてのデザインであるいう意味が込められていると考えられます。
表現したり伝えなければいけない情報をデザインするとき、要素を抽出して最適な表現に落とし込む際に、本質的な情報を追求することによって、結果として達成されるのが”Less is more.”であり、「わびさび」なのかもしれません。
私たちのなかにある「美しい」という感覚の背景には、日本人ならではの”Less is more.”があるかもなぁ
と思った話でした。
まとめ
“Less is more.”という言葉は、ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉。
禅やわび・さびといった思想との共通点がありそう
シンプル至上主義的な思想ではなく、結果として達成されるのが”Less is more.”
日本人ならではの”Less is more.”があるかも