ロゴができるまで【株式会社T's PROJECT 様】
静岡県で新しいスタイルの訪問看護を中心とした事業を行う 株式会社 T’s PROJECT のロゴをデザインさせていただきました(2021/05 納品)。
その詳しい制作過程を整理しておきたいと思います。
はじめに
株式会社T's PROJECTは、「世界をつなげよう」を理念として、地域とのつながりを大切に、培ってきた経験と正確な看護技術・知識・ネットワークを用いた新しい訪問看護サービスを提供しています。
代表の渡辺さんの経歴がすごくて、国税調査官→社交ダンスプロ競技選手→怪我で引退→看護師です。
そしてこの度法人を立ち上げるとのことで、ご依頼をいただきました。
代表の渡辺さんは、個人的な印象でいうと「かっこいい人」です。
距離や情勢等の事情もあって直接お会いできていませんが、個人的に渡辺さんの想いや考え方に共感しました。また、制作を進める上で色々とお話させていただきましたが、情熱と知性が心地良いバランスで滲み出ている印象を受けました。
"the 魅力的な人"の1人だと思います。あと、イケメンです。
つまり「かっこいい人」ということになります。
今回は、そんな渡辺さんが立ち上げた 株式会社T's PROJECT のロゴデザイン制作過程をまとめていきます。
ロゴデザインの制作過程
ロゴデザインの制作過程は、基本的に上記の流れで進めています。
情報収集
今回は、共通の知人を通してお仕事の依頼をいただきました。
新しく訪問看護事業を主体とした法人を立ち上げるということで、お仕事の打診があった際に概要を聞いていました。
訪問看護のことは全く知らない状態だったので、まずは徹底的にリサーチしました。ネットで検索しまくり、知り合いの看護師や医師に色々聞いて、事前にわかる範囲で疑問点を解消しました。
事業内容の他にも、サービスが展開される地域の情報(歴史、文化など特有のもの)や、訪問看護事業を行う他社のロゴやWebサイトを見つつ、業界の雰囲気を把握しておきました。
※調べてまず分かったことですが、「訪問看護」と「訪問介護」って別物なんですよね。
・訪問看護:利用者の自宅に訪問して、医師の指示に基づく医療処置、医療機器の管理、床ずれ予防・処置などを行う
・訪問介護:利用者の自宅に訪問して買い物や掃除、食事や排せつの介助などを行う
ヒアリング
紹介の後、少ししてから知人にSNSで繋げてもらい、ご挨拶と簡単な自己紹介をしました。
この時点での私は、友達の依頼だったり、クラウドソーシングで若干実務経験があったものの、紹介で初めましての方とデザインのお仕事をさせていただくのはこれが初めてでした。
これまでの経験と、書籍などで学んだ知識全てを総動員して全力でコミットしようと決めていました。
法人の設立にデザインで携わることができるなんて最高の機会です。実際にやりとりが始まって緊張&興奮していました。
渡辺さんからいただいた事業の概要はこうでした。
社名:株式会社T's PROJECT
事業内容:地域医療サービス(訪問看護ステーション、その他コンサルテーション、医療者教育など)
企業理念:函南から世界につながる ※現在は「世界とつながろう」に変更されています。
ロゴについて:今後の活動のモチベーションとなる、スタッフが誇れるようなロゴデザインを希望
制作に掛けられる期間:約1ヶ月
いただいた情報を踏まえて、ヒアリングシートを作成し、こちらからお聞きしたい内容をヒアリングさせていただきました。
社名とその由来
設立の背景と目的
企業理念の由来
競合他社と差別化できる特徴
会社のイメージカラー
ロゴの用途
ロゴを見てどんな印象を持って欲しいか など...
ヒアリング内容をもとに、さらに深掘りしたい内容や疑問点が出てきたので、何度か質問を投げかけさせていただきました。そうするとこんな嬉しい言葉をいただけました。この言葉でやる気はMAXになりました。
ヒアリングの内容で印象的だったのは、ロゴのイメージを医療・福祉に寄せたくないというものでした。
業界らしさを探すために、情報収集の過程で業界のロゴなどをたくさん集めていましたが、これらは「そうじゃないもの」の見本として、後々とても役に立ちました。
T's PROJECTって何だろう?
やりとりをさせていただく中で、渡辺さんが目指すT's PROJECTの姿が徐々に掴めてきていました。
例えば、立ち上げは渡辺さんと、もうお一方の重田さんという方のお二人で設立されており、
社名の「T's PROJECT」には、「知弘の計画」という意味の他に、"s"に「重田」の意味が込められていました。
また、企業理念の「函南から世界につながる」(現:世界とつながろう)には、訪問看護の利用者の方をはじめ、そのご家族や、お住まいの地域だけでなく、働くスタッフや他施設を含み、"誰かを中心としたそれ以外=世界"と関わりを持つため、インターネットなどを活用した多様な事業展開の構想が背景となっていました。
こんな風にT's PROJECTとその周辺の情報が集まり、理解が深まる一方で、ひとつ疑問が生まれました。
それは、「T's PROJECTって、何だろう」という疑問でした。
そして非常に抽象的なこの疑問は、誰を主語にするかで答えが変わる可能性があることもわかりました。
働く人にとっては「所属するチーム」だし、利用者の方々にとっては「安全・安心」の代名詞かもしれない。
今回はこの「T's PROJECTって、何だろう」という疑問に答えを出す形で複数の案を考えてみようと思いました。
提案書の作成・プレゼン
前述の問いに応えるため、「T's PROJECT」の特徴をキーワードで整理して、並べてみました。
そしてこのキーワードの組み合わせで、前述の問いに対して、以下の3つの解釈を得ることができました。
A:函南(静岡)*誇り*安心感
B:繋がる*信頼*テクノロジー
C:繋がる*接続*「と」
この解釈に基づいて、ロゴの案を3つ作成しました。
この時点の提案では、着色なしのモノクロでロゴ案を作成しました。
情報を最小限にして、純粋に各解釈と形の違いによる判断をしていただきたかったからです。
A案 函南(静岡)*誇り*安心感
・TとSで富士山のシルエット
・細い線で主張しすぎない
・誇りと信頼
B案 繋がる*信頼*テクノロジー
・Trust(信頼)とTechnology(技術)
・地図上の道は、途切れず解放されていて、繋がりが広がるイメージ
C案 繋がる*接続*「と」
・接続詞の「と」を繋がりとして解釈
・色々な繋がり=「と」であり「ト」であり「&」である
修正
提案の結果、スタッフの方々と確認していただき、以下の感想とご指摘をいただきました。
感覚の言語化スキルが羨ましい。勉強になりました。
渡辺さんからは、「A案を調整してもらえるならAで、難しければC案を採用したい」というご提案でした。
こうなった場合、決定権は私にあるように思えますし、実際修正を断ってC案にすることはできるわけです。
もしかしたらデザイナーとして当たり前かもしれませんが、自分でC案を選ぶことはできませんでした。
この仕事に全力コミットを誓っていたということもありますが、要望である「力強さを加える」というデザインが自分にできるかどうか試してみたいという気持ちがありました。
何よりも"A案で期待に応えられた場合"が最高の結果であることは明らかなので、A案の修正をさせていただくことにしました。
A案修正の方針
「力強さを加える」という点で考えた結果、筆で描いた漢字がヒントになると考えました。
大筆で大量の墨を使って書かれる漢字は、その字からも書く人からも力強さを感じられました。
込められた力強さが集中する「とめ」や、解放される「はらい」「はね」をうまく使うことができれば...
修正後の再提案・展開案の作成
修正の結果、以下のデザインを再提案させていただきました。
また、展開案は頼まれてませんが、勝手に作って一緒に送らせていただきました。笑
看板や名刺などの展開案を通して、実際に使用するイメージを持っていただけたようで、結果的にこの案で決定していただけました。作ってよかった。
完成・納品
完成ロゴがこちらです。
おわりに
制作したロゴは、既にWebサイトなどに使っていただいています。
自分がデザインしたロゴが掲げられているのをみて、本当に感動しました。
ロゴを見るために何度もWebサイトにアクセスしているので、アクセス数だけ以上に伸びているかもしれません。
これまで色々な方法で学習してきた考え方などをフル活用しましたが、やはり実務を通して学ぶことはかけがえのない経験だと思いました。
全力で取り組み、納得いただけるものができて本当によかった。安心しました。笑
渡辺さん、T's PROJECTの皆様、ご依頼いただきまして、本当にありがとうございました。
こんな機会をいただけて、本当に嬉しかったです。紹介してくれた知人へも、ありがとうございました。
長々と書きましたが、最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
※T's PROJECT様が提供するサービスについて、詳しくはWebサイトをご覧ください。
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