ITエンジニアにとっての文書管理
要求仕様書、プロジェクト計画書、機能仕様書、テスト仕様書、環境構築手順書兼チェックリスト、プロジェクト報告書等の「文書」をITプロジェクトに参加すると作成すると思います。一方で、テスト結果等の「記録」も作成します。
「文書」という概念も様々な考え方がありますが、基本的には「人の意思を書き記したもの」と考えれば問題ないでしょう。「記録」は「事実を書き記したもの」と考えます。文書は、文書管理をする必要があって、ほとんどの会社には文書管理規定のような文書があって、文書毎に誰がドラフトを作成し、誰がその内容の妥当性を確認(レビュー)し、誰がその内容を承認するかが決められています。そして、承認されると文書はFixし、第1版となります。第2版を作成することを「改定」といいます。一方、記録には版がありません。事実を記しているので、事実と異なる場合には「訂正」をしますが、「改定」することはありません。もし、記録の管理規定のようなものを作るとすると、記録の訂正手順やいつまで保存するかということを記載します。
微妙なケースもあります。例えば、テスト仕様書には一般にテストの条件と期待結果を記載しますが、これは文書です。PassかFailかのテスト結果を記載する前のテスト仕様書は文書なので、これ自体は版管理する必要がありますが、結果を記載したらそれは記録です。従って、きちんと文書管理するプロジェクトでは、記録を記載する前の仕様書を文書として版管理し、テスト前に最新版の仕様書をコピーして、コピーに結果を記載し記録として保存します。
文書と記録は、品質保証するための証拠となります。信頼性保証部があれば、プロジェクトが作成した成果物を業務手順書に従って、作成し、保存されているか自己点検や内部監査でチェックします。
ISOやQMSについては基本上記でよいのですが、それとは別に「ERES指針」という規制要求があって、これは文書にも記録にも適用されます。もともと欧米の規制要求が日本にも導入されたのですが、欧米のRecordという概念は文書、記録、データベースのデータも含む広い概念です。但し、ERESというのはElectronic RecordとElectronic Signatureに関する規制なので、電子的に作成した文書や記録に適用されます。