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死にたいって、思っちゃうんだよね①


家が窮屈だった。

一人っ子の私は
家族3人暮らし。
父は在宅、私も大学は全てオンライン。
母は週に何回かお休みがあって。
自然と3人の時間が増えた。

やはり仕事中の父がいると気を使うし
仕事帰りに酒を飲んで饒舌になる母は
ちょっと鬱陶しかった。

一年も続けば、私はもう限界だった。

何もできない私 
両親にいい顔しかできない私

なんでもできる両親

私の事を純粋無垢で明るくてタバコなんて吸わなくて酒も弱いし男なんて知らないと思ってる両親

真面目で頭も良くて誰よりもピアノがうまくて可愛くてしっかりしていると思ってる両親

「死にたいなあ」

そう思ってしまった。


友達に心配かけるのが本当に苦手なわたしは
一生分の勇気を振り絞って
母親に相談した。
真面目な顔なんてできなくて
ちょっと笑いながら。

「ときどき、死にたいなって、本気で思っちゃう」

やっと言えた言葉だった。

母に抱きしめてもらいたい。
そう思ってた。

昔から勉強もピアノも人一倍スパルタで
できずに叩かれて耳が聴こえなくなったことがあるくらい厳しかった。
ピアノの練習の時に具合が悪くなり鼻血を出しても練習をやめさせてもらえなかった。
中学受験のときは家に閉じ込められた。
遊びを断り続けてたから友達も全くいなかった。
小学校には行かなくなった。
そのかわり家でずっと勉強してピアノの練習をしてコンクールもでた。
コンクールの後は決まって、他の出場者の親の前で怒られて、色んな子の演奏と比べられた。
今思えば比べられる人生だったなあ。

母に抱きしめてもらいたい。
今思えばこれは甘えだったのだろうか?

「死にたいなって、まあ、思っちゃうんだ」


母は黙った。
わたしはメイクをしながら、
何も気にしてない風を装いながら
家の空気になりたいなぁなんて思った。

外の風が強く吹いていた。
日が沈む音が聞こえるような気もした。
遠くで踏切の音がなって、電車が勢いよく走っていった。
私は普段引かないアイラインをひいた。

母がやっと、鉛のように重たそうな口を開いた。

「あんた、一生私に相談してこないでね」

ドレッサーに映る自分の顔が少し震えてるのがわかった。

「なんでそんなこと言うの?そんなに幸せなのに?どうして?もうさ、しにたいとか、そういう悩みとか全部、一生お母さんには相談しないで。友達とかもっと相談する相手いるでしょ?」

畳みかけるように、母の言葉が次々と溢れる。
母も泣いているのだろうか。

自分の顔が崩れていく様子が超スローモーションで鏡に映る。

私の顔は既に土砂降りだった。

「親なら、もっと相談に乗ってくれるかと思った」

出来るだけ冷静に、喉を押さえて震えそうになる言葉を均して、少しの反抗をした。

そしてもっともっと死にたくなった。

鞄に荷物を詰めた。
もう死にたい、死にたい、消えたい。

靴を履いて
携帯を持って
財布を持って
すぐに家を飛び出した。

線路の音がいつもより大きく聞こえるような気がした。

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