ラスト・フル・メジャー
ベトナム戦争もの。
アメリカの正義が崩れ去った戦争だから
興味はある。
あるけど、それと映画というメディアの相性についてはいろいろ考えざるを得ない。
それは日本でも同じで、戦争モノは、下手をすると戦争嫌だけど仕方ない、大事なものを守るには必要みたいな論調に繋がりやすい。アメリカのものはアメリカの民衆がどう受け止めるのかで評価も変わるのかもしれない。
ということを前提に。
人には他愛行動というのがあるのだそうだ。
震災関連報道の中でつい最近知った言葉だ。他者を愛する。自分に危険が迫っていても、本能を超えて他者を救おう守ろうとする行動様式なんだそうだ。地域消防などがそれに当たるらしい。警察官や自衛官のような一定の訓練を受けている人たちとはまた別の、ベクトルのようだけど、
この際まとめて考えても良いように思う。
戦場で
あるいは津波の驚異の前で
また、火の手の回る屋内を前に
その場にいる人間たちのうち何人かは
仕事であるとか使命であるとか言う前に
人を助けることを第一義とする思考が発動するらしい。
大抵は自分は命を落とす。
だとしたら、生き残った人たちは
救われた者たちは
その後の人生を歩む者たちは
彼らに敬意と感謝を感じて当然だし、名誉や肩書が必要なら与えねばなるまい。
この映画の良さは
三十年以上に渡り訴え続けた人
それをなんとかしようと決めて動いた人
その背を押す上司や妻、
摘発を受け入れる覚悟を決める人、
PTSDに苦しみながら誰かのために動ける人、
そういう人たち、誰一人欠けても実現までには至らなかったろうということがわかるツクリになっていることだ。
最後に起立を促す声の優しさが、とても素敵。
年寄りたちの戯言は多くはほんとに戯言だけど
耳を傾けなければならないことを見抜いて聴くこと、その重要性も訴えているやもしれない。
過去のことになった、歴史の一部になった、忘れてしまいたい、そんな出来事の中に真理は隠れ潜んでいることを、この映画は前に出した。
多くを隠すことで今を迎えている国ではなかぬかに難しいことではあるけれど、そろそろ日本も本当の意味で戦争や戦後と向き合ってもいいんじゃないかと思うんだが、、無理だろうなぁ。
二人の名優がこの映画を最後にこの世を去ることになったとあとから知る。映画を年間100本前後観るようになったのはここ数年のシロートなので名前は知っていても作品までは知らなかったり、観ているべきとかはずとか言われるモノも観ていないし、ましてハリウッド大作は今もあまり選んでないので疎いこと極まりないのだが、それでも人を見送ることには襟を正したいものだ。
合掌。