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あの子は貴族

いや、参りましたね。
この女同士を対立させない手法というか、演出は
監督の強い意志を感じました。

石橋さんの台詞が主にそれだったと思うけど
彼女の自分たちの場所を正しく認識しているところ、大事な気がします。

わたしたちは多かれ少なかれ社会に存在するヒエラルキーやピラミッドを知っているか感じているかしているはず。そういった視点を持ち得てないと、この映画の趣は感じ取れないのかもしれない。

二人の女性の置かれている場所の違いが、都会と地方とか、金持ちとそうでないものという対比で捉えるのではなく、長い時間女たちが置かれている場所と見ると、豊かに見えてくる気がする。

さらに、希子さんから見れば「貴族」に見える彼らの中にも存在するヒエラルキーが語られることで、この世の中に存在する格差は単純構造ではなく、その隙間や合間やら様々なところに見え隠れする「社会構造」
そこに淡々と「知らないこと」がいかに人の道を左右するのかが横たわる。麦ちゃんのただ彼が好きだった、恋に落ちて結婚を決めた女の子と、この階級にいるのだからこちらもそちらもわかっていての婚姻であるとしか認識していない高良くんとの、温度差。わかっているだろうという前提で進む周囲と本人が徐々に「知らされていく」中で覚醒するところに、「わかっていて寄り添う」女友だちの存在。
一方わたしたちに近い存在である希子さん演じる彼女の、親の生き方をトレースするだけでない自分を普通に生きようとする二人もまた、いい。金づるで人脈の元でもあった男友だち。性的な関係だって普通にあったろうけど勘違いはしていない彼女は、婚約者の存在を知ってさっさと彼を切り離してしまう。今までの映画だとここ粘っちゃうよなぁと思うわけです。
同窓会での様々な場面も身に覚えのあることがいっぱい。こういうとこも監督脚本の勝利かなぁ。

そして、あまり愉快ではない出会いをした二人が、もう一度重なるその時の場面、一歩を踏み出させる、あのシーンが気持ちいい。
深く関わることで影響を与え合うこともあるだろうけど、希子さんが、「貴族」である彼女に自分をひらいてみせていく、そこがほんとに素敵だった。


主役の二人プラス一人より、その友人二人が際立った印象でした。