【大切な人】
私には保育園に通っていた記憶が一切ない。
理由は単純。辞めたらしいのだ。大人になった今でも笑えてしまう。
保育園中退など今まで会った人からも聞いたことがないくらいだ。
辞めた原因は先生に怒られたかららしい。兄と同じ保育園に通っていた私は、兄のところへ行く度に怒られていたのだそうだ。
もうひとつ辞めたきっかけがあった。おじぃが定年を迎えたので、面倒を見てくれると言ったらしい。
その頃の私は…というより今もなのだが、おじぃのことが大好きだ。
その時の私はさぞ喜んでいたのだろう。毎日おじぃと畑に行っては野菜を育てていた。
うっすらではあるがすごく楽しかったのを今でも覚えている。畑で育てた野菜を全部覚えてたほどだ。相当楽しかったのだろう。
こんな楽しい思い出を残してくれているおじぃには本当に感謝しかない。私の最も尊敬する「大切な人」だ。
そんな楽しかった思い出をかき消してしまいそうな程の出来事が、私を苦しめることになるなんてその時の私はまだ知りもしなかった。