小さい頃のお話

寒い中飲むカフェラテやホットミルクは、なんであんなに美味しいんだろう。

冷えた手をカップで温める。
少しずつ少しずつ口にして、徐々に体がほぐれていくのを感じる。
温かい飲み物は時の流れを遅くしてくれるような気がする。

小学生の時のお話。
珍しく、どうしても寝付けないことがあった。
同じベッドで寝ていた母が、寝付けない私に気付き、「眠れないの?じゃあホットミルクでも飲もうか」と声をかけてくれた、

もう皆が寝静まった深夜、真っ暗で寒いリビングに2人で降りて行った。
私を少し幅のあるピアノの椅子に乗せ、あったかいブランケットをかけてくれた。「少し待っててね」母はそう言って、キッチンへ向かった。

間もなくすると2つのホットミルクを手に戻ってきて、1つを私に渡し、母も隣りに座る。
2人でブランケットにくるまりながら、少しずつホットミルクを飲んだ。

学校のこととかを話したと思う。
ゆっくり時間が進み、全てが静かで、とても不思議で心地がよかった。
ホットミルクを飲んだ私は、寝付けなかったのが嘘のように、あっという間に眠りに落ちた。

それ以降も、寝付けなかったことは何度かあったが、ブランケットにくるまりながらホットミルクを2人で飲むことは後にも先にもこれっきりだった。
もしかしたら私の夢なのかもしれない。
母ともこれについて話したことはないので、真偽は分からない。

でも、夢でも現実でも、なんにせよすごく幸せで、安心できた。
とても好きな時間だったのだ。それが分かっていれば、あとはなんでもいいよね。

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