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2020.9.27 FC町田ゼルビア vs 栃木SC

いやあ、苦しい。この時期にこの相手にこの内容で負けたということは、とても苦しい気持ちでした。これで5試合勝ちがなく、大宮戦こそ無失点でしたが、9月は失点が多いのが気になりますね。

栃木はゼルビアに重なる部分が多く、お互い守備にチームとしての強みを見出しています。攻撃は栃木がショートカウンター、ゼルビアがロングカウンターと違いはありますが、どちらもカウンター志向で縦に速い攻撃をしてくることから、試合前から攻守の切り替えの速さが試合の鍵となることは明らかでした。

また、ゼルビアは先に先制された試合は勝ちがないため、先制点も鍵となることも分かり切ったことでした。

それでも攻守の切り替えのところで後手に回ってしまったこと、先制されてしまったことは非常に重いですね......


それでは試合の内容に入っていきたいと思います。

スタメン

スタメン

町田
4-4-2
前節より1人変更
平均身長(GK除く):176.3
栃木
4-4-2
前節より6人変更
平均身長(GK除く):178.5

相手陣地でプレーをさせてもらえなかった前半

まずはDAZNの中継映像で紹介された前半の平均ポジションの図を見た方(見てない方は映像の01:08:16辺りを見てください)はわかる通り、前半は全員がほぼ自陣でしかプレーできていました。この図はプレーした場所の平均の座標なので、ボールを触っていない移動は関係ありません。

ということで全員がほぼ自陣でプレーしていたことがわかると思います。いや、敵陣ではプレーさせてもらえなかったという表現の方が正しいかもしれません。

前半のゼルビアの攻撃の狙いとしては、栃木の前からのプレッシングに捕まらないためにロングボールを使って、ラインを押し上げて二次・三次攻撃に繋げるという狙いがあったと思います。そのため、ターゲット役としてドリアン・バブンスキーをスタメン起用したのだと思います。また、サイドチェンジや1人飛ばしの中距離パスで栃木のプレスを回避しながら敵陣に行こうという狙いもあったと思います。

ですが、全体的にこれらのゲームプランは失敗に終わってしまいます。

その理由はいくつか考えられます。第一に、栃木の最終ラインが低めだったこと。栃木の田坂監督はこれについて試合後のDAZNのインタビューで否定していましたが、私は明らかにいつもより低いように感じました。

最終ラインが低かったためスペースが無く、安藤はロングボール一発で裏に抜けることができず、相手にロングボールの処理を難しくさせる後ろに走らせる動きをさせることもできませんでした。そのため、空中戦に強い田代と柳のCBが前に走りながらヘディングでロングボールを跳ね返すシーンが多くなりました。

さすがにドリアンでもリーグ屈指の空中戦勝率を誇る柳には勝てず、ロングボールで溜めを作ってラインを押し上げる時間を作り、敵陣に侵入するという狙いは失敗に終わりました。また、ドリアンや安藤がボールを収めたとしても、前を向かせる前にファールで動きを止められてしまいました。ここでもし、試合の序盤で田代か柳のどちらかにイエローカードが出ていれば、ゼルビアにとっては良い流れになっていたかもしれませんが......

次に考えられる要因は、栃木がそこまで前からプレッシングに来なかったことです。栃木はボールを持つことで怖さが出るチーム(例えば徳島)に対しては、前から積極的に来るのですが、ゼルビア相手にはそこまで強くは来ていませんでした。

中央の海舟や両SBへのパスコースを消すような立ち位置で、ボールホルダーにはノープレッシャーでした。守備時に栃木は4-2-3-1や4-3-3のような形をとり、前線の選手でパスコースを制限しながら中盤での数的優位を作ることで、あえてゼルビアの選手にロングボールを蹴らせてセカンドボールを回収しようという算段だったのでしょう。

一方のゼルビアはビルドアップの段階で髙江が最終ラインに落ち、中盤は海舟のみなので、中盤は数的不利なためセカンドボールを拾えません。ですが、不利な状況でもセカンドボールを拾いに行ってしまうため、中盤と最終ラインの間に広いスペースが生まれてしまい、カウンターを食らう展開が多かったですね。

明本や矢野がボールを収めたり、独力で突破できる選手だったこともあって、中央やサイドを簡単に突破されるシーンが多く、奥山まで抜かれた時はとても怖かったです。

そしてもう一つ考えられる要因としては、ロングボールの精度です。そもそもターゲットのドリアンや安藤のいない場所にロングボールを蹴ったり、出し手と受け手で意思の疎通が図れていない場面が散見されました。

安藤は中央で受けたいのに出し手はサイドへパスを出すシーンがありました。これは前後半に共通することなのですが、昨年からいる選手はサイドへ、今年から加入した選手は中央へ走ってロングボールを受けたがる傾向がありました。出し手は深津や平戸など既存の選手が多いので、サイドへロングボールを蹴るのですが、安藤やステファンなどの今年から加入した選手は中央へ走ってボールを受けようと動くことが多かったです。

ということで前半をまとめると、ドリアンを起用して、栃木のプレッシングを回避するためにロングボールを多用しようとした。だが、栃木は前から来なかった・最終ラインが低かったので、ロングボールを蹴らされる格好となり、中盤でセカンドボールを拾われカウンターを何度も食らってしまった。また、出し手と受け手の意思の疎通が図れなかったという展開でした。


序盤は上手くいっているように見えた後半

ハーフタイムにドリアンと吉尾海夏に代えて岡田とジョン・チュングンを投入し、逆転勝利に向け点を取りに来たゼルビア。

最初の15分は栃木がゼルビアの変化と圧力に対応できず、栃木陣内でのプレーが続きました。この15分はあくまでも「びっくりタイム」で相手が慣れると勢いは収まってしまいました。「びっくりタイム」は相馬政権期の試合開始15分くらいの押せ押せの時間のイメージで。ここで点を取れたら最高だけど、取れなかったら後々最悪という意味もあります。

ではどのような変化があったのかというと、変化の1つ目は攻撃時に5トップ形成。両SBが前線まで上がり大外の位置で相手SHを押し込むという狙いがあったのでしょう。序盤の「びっくりタイム」では小田が起点になって、中央を経由してあわや1点というシーンを作りだしました。

しかし「びっくりタイム」が終わってしまうと、栃木にとってはビルドアップの出口が2つ減ることになり、プレッシングに行く人数が減って体力の消耗が抑えられラッキーという感じでしょう。これが左右非対称ならズレが生まれ最終ラインでパスを回し続ける展開は無かったと思いますが、5トップを維持し続け、ピッチの中の選手の柔軟性の無さが浮き彫りになるだけでした。

そして2つ目は狙いの変化です。前半はロングボール主体の攻撃でしたが、後半は右サイドを中心とした地上戦で突破を図り、ゾーン3に侵入したら最終ラインに吸収されたCHの前で起点を作って、最後斜めのランニングで裏を取るという狙いがあったと思います。

これに関しては再現性があり、「びっくりタイム」に3回ほどありました。岡田の単騎突破や岡田と小田のコンビネーション、この2人に髙江が絡んだりと何パターンか見られました。

ですが、栃木の左SBの溝渕が59分に人に強い瀬川と交代すると、思うような突破ができなくなり、横パスがカットされてカウンターを食らうなど、瀬川の投入と同時に「びっくりタイム」が終わった気がしました。

これについては的確なタイミングで交代を行った栃木の田坂監督を褒めるしかありません。

そしてこの「びっくりタイム」で得点できずにどっちつかずの時間が続き、飲水タイム明けには、自分たちが狙っていたような形を栃木に作られてしまい失点してしまいました。この失点については秋元を責めることはできません。GK経験者ならわかると思いますが、味方でボールや相手の足が隠れてしまいシュートを打ったかどうか見えないことも多いので、ああいう形でキャッチし損ねることもたまにはありますよ。シュートを打たれた時点で負けみたいなものです。シュートを打たせないようにあと一歩でも間合いを詰めることができていれば......というシーンでした。

後半は最初の15分の流れがこっちに来ている時間に得点できれば、勝ち点を取れた試合だったと思いますが、相手が何枚も上手でした。90分間足が止まらない選手たち、追加点を取り切ったこと、穴を見つけた瞬間に交代で穴を塞いだベンチワークなどなど。栃木がこの順位にいることに納得する試合巧者ぶりでした。


試合結果

町田 0-2 栃木
得点者:43' 柳 育崇
    72' 森 俊貴

さいごに

今のゼルビアの力不足を感じるとともに、栃木が今の順位にいることを実感する試合でした。相手に引かれた時の引き出しがまだまだ少ないですし、リーグ最少のゴール期待値の中、少ない決定機を決めきる力の無さを感じました。まだシーズンは半分を過ぎたばかりですし、残りの20試合で更なる進化を期待したいと思います。

海舟のCBはちょっと面白そうな気がしますねー。楽しみ。


今節もお読みいただきありがとうございました。

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