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コミケ前夜と地震なのか(2024/8/10)

*コミックマーケット(通称コミケ)とは、1975年にわずか5人の集団「迷宮'75」によって始まり、2020年には70万人を超える集客を誇る世界最大の同人誌即売会に成長した祭典である。コミケでは、選ばれし漫画家たちが本業の合間を縫って薄い本を刷り、力技で2次元に入り込んだコスプレイヤーたちが会場内を練り歩き、その煌めきを後世に残そうと21世紀なのに一眼レフを光らせる突然のカメラマンたちがスリリングな二日間を満喫する祭典である。
      *一度も行ったことない人のイメージです

コミケのチケット(=リストバンド)を求める列

2024年の夏、8月二週目の週末に開催されるという「コミケ104(通称104)」の事前購入チケットの列に並ぶこと早20分。かぎりなく声優かもしれない店員さんが「レジにてチケット売り切れ次第、終了となりますうぅ 💦」と叫んでいる。今は平日の夜19:45。20時の閉店時刻が迫るなか、1000人のオタクとその関係者(仕事帰りのご家族)が内心「私の直前で売り切れたらどうしてくれよう…」、「閉店時間過ぎたらチケット買えないんじゃないか?」などと不安な面持ちで歩みを進める。途中、何に使うのか見当がつかないアニメグッズが延々と並んでいるが、一見さんがジロジロ見るのも失礼だと思い、先の見えない列の先頭だけまっすぐ見ようと努める。店内には外国の方も多く、彼らはこれらのグッツの用途を把握している様子で、イソイソとカゴに入れていく。ワールドピース🌏

角に次ぐ角🫠 トースト咥えたろかぁ🫠

列に並んでから遂に4回目の角を曲がると、店員全員がフル稼働しているレジが見えた。もうレジは目の前だ。その時、店員さんが申し訳なさそうに「1日目午前チケット売り切れですうぅ 💦」と叫んだ。店内に無言のどよめきが走った。一部の人は明らかに膝をついている。外国の方々が翻訳を聞いて動揺している。しかし私は問題ない。私の狙いは日曜日なので、ほっと胸を撫で下ろした。同時に、真後ろに並んだ50代くらいの女性がスマホで通話を始め、その会話が否応なく聞こえてきた。「1日目午前チケット、もうないよ、2日目じゃ意味ないからもう並ぶのやめるね。…は?なに言ってんの?…平日は仕事でしょ?は??」と怒った様子。

私はこの通話を盗み聞きして混乱した。まさか、と思いながら自分のスマホ検索画面を見直した。喉の奥がヒュッとなった。コミケは土日の開催だと思い込んでいたが、日月の開催だった…!!え、まって!月曜は私は仕事あるよ!?皆だって月曜じゃコミケ行けなくない?え?あ!世間は山の日かぁ!!なんだよ山の日ってぇぇ!?何の祝いだよぉ😭!!⛰️

あ、開催日…  週末じゃ…ない!?

パニックしている間についに私の番になってしまった。この時、19:55。閉店直前のギリでレジに着けたのに、全部無駄だったのか…。状況を受け入れられないまま店員さんに話しかけた。「あの、コミックマーケットのチケットが欲しいんですが、1日目って日曜日なんですよね?」「はいぃぃ☆」「でももう完売なんですよね?」「あ!午後でしたらまだ若干数ありますぅぅ☆☆」ありがとうぅぅぅ☆☆☆☆ 泣きそうになりながらチケットを購入😭

緑の縞々の短冊みたいな紙がコミケへのチケット(リストバンド)☆*(≧▽≦)*☆

レジで普通なら店員さんが「購入したチケットを袋は入れましょうか?」とか聞いてくるところを、さすがはアニメイトなのか、店員さんは「購入したチケットはこちらの冊子(アニメイトオリジナルの無料冊子)に挟みましょうかぁ?☆☆」と聞いてくれた。小さな紙のチケットに、袋も冊子も必要ないので、私は「大丈夫です、いりません☆☆」とご機嫌に答え、チケットを手にしたままニッコリきびすを返した。振り返った瞬間、長蛇の列が一斉に私の手元のチケットを凝視したのを感じた。犯罪率劇低の東京とは思えない殺気である。慌ててチケットをバッグの奥の奥へとに押し込んだ。しまったぁぁ、そのための冊子だったかぁ!!

アニメイトの無料の情報誌「きゃらびぃ」…すなおに貰えばよかった

次の瞬間、けたたましい速報アラーム音が全員のスマホから鳴り響いた。地震警報のようだが揺れは感じない。これから揺れるのだろうか。店に強い緊張が走った。でもさすが(?)日本、ほぼ誰も言葉を発しない。ごく一部の外国人の方々がアジア大陸系の言語で何か口走っているのが聞こえる。

これを見て何をどうしろと…

スマホ画面からハタと視線を前に向けると、しかし長蛇の列の最後尾の客たちが、こっち(レジと購入済みの客)に向かって今にも走ってきそうな形相をしているのが目に飛び込んできた。

待て待て待て待て、今それどころじゃないよね??おととい震度6弱を観測して南海トラフ地震に警戒しようって時だよね?何その今時の若者にはないはずの目のギラつきは?これが災害時など社会の混乱に乗じて起こりがちという犯罪の現場なのか…!?想像上の犯罪者のイメージとはだいぶ違う…。

私はアラームの鳴る中、「チケットは渡さないし、ここで死ぬのも嫌だああああ!!!」と心で叫びながら、アニメイト本館を小走りで駆け抜けた。

外に出ると警戒アラームで緊張した面持ちの人たちがスマホや空を不安そうに仰ぎ見ている。振り返ると、アニメイトでは誰もあの長蛇の列から外れて避難しようとしていなかったと思う(まぁ避難って言ってもどこにだが…)。でもなんか、アニメイトは耐震とかの問題じゃなく、倒れそうにない気がした。結局何事もなく無事だったし、チケットももちろん盗まれなかったけれど、行く前から既にスリリングなコミケ体験だった。地震の備えをしっかりして、日々の行いも良くして、日曜のコミケを楽しむぞ!


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