大事なことはニーズに応えること。
青森では、8月下旬になると日中はまだまだ暑いですが、夜は過ごしやすくなります。
虫の鳴き声も、秋の声。
園地作業も、いよいよ着色管理や収穫といった、本格的な繁忙期に突入します。
【早生種の収穫が始まります】
りんごの収穫は収穫時期により、
8月:極早生種・早生種
9月:早生種・中生種
10月:中生種・晩生種
11月:晩生種
のおおよそ、4種に分けられます。
もうすでに極早生種の収穫が終わり、早生種の収穫が開始される時期となります。
りんごの早生種のなかでメジャーなのが【つがる】という品種。
この「つがる」は、青森では9月上旬頃から収穫開始される品種です。
【早もぎつがる】
近年では、8月に着色する着色先行型のつがるが出てきました。
着色先行型では、8月中旬には色づき、「赤いりんご」となります。
ですが、この8月のつがる、色は赤いのですが、食べてもイマイチです。
味も薄く、デンプン質も多く(食べると粉っぽい)、旬のりんごを知っている人にとっては「未熟」と思えるものです。
ですが、この8月収穫のつがる、市場では驚くほどの価格で競り落とされます。今年もかなりの高価格で競り落とされています。
そういう理由もあり、8月中旬からの「はやもぎつがる」を狙う生産者も多いです。
「ただ早く色つければいいだけだと思って」
「こういった、美味しくないりんごが青森の評判を落とす」
「どうせ食べ物だと思って作っていない。高く売れればいいと思っているだけ」
と、味にこだわる生産者からは批判の声も少なからずあります。
【「美味しい」もニーズの一つでしかない】
りんごは食べ物であるから、「美味しい」はニーズの一つです。
ですが、これが全てではない場合もあります。
スーパーで並べなきゃいけないので、棚持ちがいい(貯蔵性が高い)ことが必須条件だったり、見た目が良くないと売れないので、まずは見た目が良いものが条件だったり。
「美味しい」が全てではないこともあります。
「美味しい」にこだわることは素晴らしいことですが、
他のニーズを満たすために「美味しい」の優先度を下げることを批判するのは、少し違うのではないかと思います。
「はやもぎつがる」も引き合いがあるから高いわけで。
味以外の条件によって、高い値段で取引されているわけで。
ニーズを満たすため、条件にマッチした作物を必要とされる時期に出荷するのは悪いことではないと思います。
もちろん、世に「あまり美味しくないりんご」を流通させてしまうことではありますが。
ですが、需要に応えるのも、生産者としての技術だと思います。
「美味しいものをつくる」が最高の技術のように思われますが、
世の中にはいろいろなニーズがあります。
それに応えるのも、また技術の一つなのです。
当方でも、この「はやもぎつがる」で、8月中にはすべて市場出荷をしてしまいます。
逆に美味しくないのは分かっているので、直売では売りません。
自分のお客様に美味しくないりんごは届けたくないから。
お客様に届けるりんごは、ちゃんと美味しさを求めた作り方、品種のものを。
市場出荷には、市場の求めるりんごを。
自分の価値観が「善」で、自分と合わないものを「悪」とする。
割と農業生産者ではありがちです。
農業経営目線で考えれば、どんな作物をつくっても、
相手のニーズに応え、利益を生み出せれば良いのです。
本質は「美味しい作物をつくっているかどうか」ではなく、
「利益を出しているかどうか」なのです。
お金を稼げないのであれば、どんなに美味しくても、意味がないのです。
(それは農「業」ではなく、趣味になってしまいます)
本日はここまで。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
農業に少しでも興味を持っていただければ幸いです。
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