前職のお客様とばったりお会いした話
ウィーン。
ATMのドアから一歩外に出る。
国民年金支払いのため、お金をおろしたところ。
目線を上げると、次に並んでいた方が。
「お待たせしました〜」
といいながら横を通り過ぎようとする。
すると、
「あ!もしかしてりんごあめさん!?」
と声をかけられた。
よーく顔を見てみると、前職のお客さんだったのだ。
「わ!Aさん!こんにちは!お久しぶりです」
「久しぶりね!最近お店で見ないけど、他の店舗に異動になったの?」
「いや〜、実は3月末で退職したんです。ご挨拶できなくてすみませんでした」
「あら、そうなの〜!活躍していたのに、残念だわ。最近いないなって思っていたのよ」
Aさんは、ものすごく頻繁にお会いしてた訳ではなく、来店があったときに声をかけさせてもらっていたぐらいなので、覚えていてくれたんだと私は目を丸くした。
「当時はお世話になりました。いろいろあって退職したんですが、今は転職活動中で…」
というと、Aさんはこんな話をしてくれた。
「うちの息子もね、仕事をしていて少し上手くいかない時期があったの。」
「でもチャレンジしたらいいと思うの。何事も」
「失敗なんてないから。」
「今の時代ひとつのことにとらわれなくてもいい。チャレンジ!チャレンジ!」
「息子も今は乗り越えて働けるようになっているから、見ていてすごいなって思うわ」
「いろんな世界を見ること、チャレンジすることは悪いことじゃない。だから、大丈夫よ」
何も詳しいことはAさんに話していない。
でも、私のもやもやを慰めるような返答だった。
「人生は長いのよ。」
にっこりと笑って声をかけてくれて、
私も少し心が軽くなった。
「ありがとうございます。不安を抱えることもあったので、Aさんとお話して元気が出ました」
素直な言葉だった。
別れ際に、
「頑張ってなんて言えないわ、もうりんごあめさんなら頑張ってると思う。またどこかで会えたら声かけてね!」
と言われ、
「はい!」
と返事をした。
前職のお客さん。
私のことを覚えていてくれていたのだってうれしかった。
私がATMに寄らなければ会えなかった。
深呼吸して、
「 私は大丈夫 」
「 チャレンジしてみる 」
「 失敗を恐れずに 」
と車の中でつぶやいた。
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