オタク経済圏創世記
アニメという日本ではオタク文化と捉えられがちな、業界のビジネスモデルの変遷の歴史や、海外との比較、今後どうすべきかなどが詳しく書かれていいます。ちょーっと書き方がアカデミックでわかりにくい部分もあるのですが、勉強になる本でした。
コンテンツビジネスの今
コンテンツをただ消費するだけでなく、コンテンツを使ってLIVEイベントしたり、ファン同士のコミュニティが作られたり、複数のメディアや場所に発展していくのが今の手法である。(でもそれって元々アイドルや歌手でやってたことではないかと思う。つまり、アイドルとかのエンタメ業界の手法をアニメに横展しているってことだと思う。)
なぜ日本はマンガ・アニメで成功しているのか
ブルーオーシャン戦略の本質は、ルール作り。AWSにしてもSpotifyにしても、最初から赤字でその市場に参入し、他社が参入できないシェア、ポジションを確立しする。その後値上げして利益を確保する。リーダーになって自社がルールだという体制を作る。
日本が漫画市場で強くなったのは、アメリカに比べて圧倒的に低単価で作品を量産する体制を作ったからである。クリエイターの労働環境が凄まじいという背景もある。
エヴァンゲリオンは、アニメ委員会方式という、広告代理店、映像メーカー、音楽メーカー、玩具メーカーが共同出資した団体が制作して、収益を割合配布する形でを取っていた。著作権を共同所有。そういう資金調達手法の新しい形や、DVDとか配信などテレビ以外のマネタイズ手法、が2010年以降のアニメの躍進を後押しした。
任天堂は他者メーカーが家庭ゲーム市場のダウントレンドで倒産していくなか、逆にチャンスと捉えて開発を家庭用ゲームに集中投下、価格でもクオリティでも他者を圧倒するファミコンを作った。
キャラクターをカードゲームなどの二次展開をする。そして、それは外部に委託する。結果、売り上げはほぼ委託先に入るが、リソースをかけずにコミッション5%〜10%を手に入れられる。さらに、売れるほどそれがプロモーションになる。
現在の市場の考察
ライブや映画、カラオケなど、特定の場所を活用したメディア、はデジタル化の中でも落ちてない。これはコミュニティ機能が再評価されているからではないか。だから、カラオケやゲームセンターは衰退し、コンサートなど共体験するやつは成長している。ライブの「場」が提供する1回性の価値は強い。
「ソーシャル」がキーワードとなるこの時代背景とスマホの普及により、スマホでのソシャゲが急激に伸びた。さらに空き時間、移動時間でスポット的にゲームできる仕組み。エンタメ消費時間という観点では、1日あたり数分✖️複数回という、これまでにない形になった。
現在のコンテンツビジネスにおいて重要なポイント
モノはモノだけでは価値を持たない。モノはヒトを繋げる媒介として価値を持つ。作品を二次展開3次展開していくことで、大きな市場になる。アニメ化はその信号みたいなもので、アニメ化するとあらゆる商品化が進んでいく。2次3次展開を見据えたキャラ作り、ストーリー作り、が大事。
SNSやあらゆるメディアがある今、流行を作るより、維持する方が難しい。なので、維持する仕掛けが大事。その意味でも2次3次展開、商品化、が大事になってくる。コンテンツは、そういった総合力での勝負になっている。
「場」や「空間」を作って人を集めると、人は流行をリアルに認識でき、体験価値、コミュニティ価値、を発揮できる。
つまり、これからのコンテンツ戦略は、作品のブランド力、2次3次展開、ライブコンテンツ作り、の総合勝負ってことだと思う。
ユーザー数400万人がサブカルとマスカルの分岐点としたら、ラブライブ、アイドルマスターはサブカル、嵐、SMAP、ワンピース、乃木坂46はマスカルになるが、市場規模はラブライブ439億円、アイドルマスター341億円、嵐367億円、SMAP354億円、乃木坂199億円、ワンピース150億円と逆転する。ラブライブは部屋から出ないオタクをライブのために外に引き出し、大成功した。オタクは一般層よりコンテンツ消費額が大きい。つまり、ニッチなコンテンツで少なめでもロイヤリティの強いファンを獲得し、そのコンテンツのライブコンテンツ化など2次展開することで、一人当たりの消費額を増やす戦略が今強い。
ネット普及後、海賊版が増えたことにより、アニメの人気も向上した。ドラゴンボールは30周年のタイミングで、新しいストーリーを始めたら、ゲーム、映画などメディアミックス展開により、版権を持つバンダイは15倍以上の売上をあげた。人気がしっかりあるコンテンツはメディアミックス的な展開で指数関数的に伸ばせるってことだと思う。でもこの時クオリティを犠牲にしたら終わる。熱が冷めないうちに叩くスピードとクオリティの両立があって初めて確変状態の成長が起こる。
イベントが行われれば、それをLIVEで ツイートしたり、インスタにアップしたり、解釈や感想をコミュニティ内で議論したり、消費の仕方が複数になる。
日本人にあう戦略
ディズニーは一社の中でストーリー作りから商品化、コンテンツ化を行うが、日本企業は複数企業によるコンソーシアムを組んで、行う。
このディズニーのようなスタイルは強いが、日本は複数企業の協調路線のままである。一つの見方として、ホリエモンや村上ファンドの買収劇に対して、社会的な批判が巻き起こり、協調路線を強制する文化が日本にある。歴史的にも日本は革新的変化は起こりづらく、伝統的勢力がゆっくりその革新を取り込み、徐々に変化する。温故知新が日本にはあっている。
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